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twst

 
 ある日の放課後。
 一人で廊下を歩いていると突然後ろから雑に首根っこを掴まれた。
「ぐえっ!」
 変な鳴き声と共に踵が浮き、混乱している耳元で低い笑いと「見つけた」という声がする。
「ちょッ!ダメっスよレオナさん!」
 次いで聞こえた慌てる声と視界に現れた先輩の姿で余計に頭がこんがらがる。
 抗議や質問をしようにも首が絞まっているせいで声が出ず。
 とりあえずジタバタもがいていると制服の襟は掴まれたまま一先ず両足は地面へと下ろされた。
 荒い呼吸を何度か繰り返し落ち着いたところで無理やり頭を後ろへ向ける、が。
「なんっ、うぇっ?!」
 相手の顔が視界に入るよりも早く。再び体が、今度は完全に宙へ浮き抵抗する間もなく後ろ向きに肩へと担がれてしまった。
「行くぞ」
 そう言うなりどこかへ向かって歩き出したレオナ……らしき背中。
 再び抵抗しようとした手足は何故か動かず、おそらくは何らかの魔法を使われているのだろう。
 こうなったら大声で助けを求めるしかないと大きく息を吸い込んだ瞬間。
「ストップ!ストーップ!」
 先程同様、慌てた様子で視界に現れたラギーが頭の上で必死に両手を振っている。
 どうせならそれはこの人の前でやってくれないかと思いながらも一先ずは聞き入れて抗議代わりにじとりと相手を睨めつけた。
 ごめんねーと両手を合わせるラギーが笑っているあたり二人は共犯なのだろう。
 もはや抵抗するだけ無駄なことを悟り深く息を吐きながら「せめて理由を教えてください」と力なく口にする。
「そうそう、忘れるとこだった。はいこれ」
 そう言ったラギーの手には『副寮長代理』と書かれたサバナクローカラーの安っぽいタスキ。
 意味が分からず尋ねると。
 曰く、これから副寮長も含めた寮長会議があるのだが、サバナクローは副寮長が不在でいつもは代理を務めているラギーも用事があって参加出来ないため急遽代理の代理として自分に白羽の矢が立ったのだと。
「意味が分からないんですが!」
 素直に叫ぶが聞き入れてくれるはずもなく。まあまあ、と無抵抗の体にタスキがかけられる。
「うるせぇな。耳元で喚くんじゃねぇよ」
 言ってスパーンと叩かれた臀部に先程以上の叫びを上げる。
「ちょっと!女性には優しくしろって教わりませんでしたか?!」
「ああ?何かあれば責任取ってやるからいいだろ」
「詫びロマンスなんて要らないんですよ!」

 結局この後リドル寮長から「却下!」と叱られ、二人揃って会議室を追い出される事になるのだが。
「チッ……。ほら、行くぞ」
 不満そうに舌を打ってからこちらに向かって伸ばされた手。
 どこへ?と傾げた首の後ろが今度は軽く引き寄せられて。
「取ってやるよ、責任」
 言いながら向けられた意地の悪い笑みに不覚にも胸が高鳴った。
 それで許されると思うなよ……。
 喉まで出ていた悪態を飲み込んで引き摺られるようにして付いていく。
 麓の村で一番だというスイーツにころりと手のひらを返すまでそう時間は掛からなかった。


(2022/04/15)
参加ログ #女監督生受け版ワンドロワンライ
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