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 どうしてそうなった。と口を揃えて皆が言う。
 互いに好き合っているのは明白で、当人達にもそれを隠す気配が全くない。
 それがどうして、そんな面倒なことになってしまったのか……。

 朝、寮で目覚めた監督生の傍らには白いバラが一本。丁寧に梱包され寄り添うように置かれていた。
 それを慣れた手つきで回収すると窓際に置かれた花瓶へ挿して何事も無かったかのように相棒と共に階下へ向かう。
 身支度を終えて談話室に入ると部屋に置かれたテーブルの上にまた一本。先程と同じ白いバラが朝食のプレートと共に置かれていた。
「またなんだゾ」
 気付いた相棒が呆れたように息を吐いて傍らの子分へ視線を向ける。
「まただねぇ」
 言いながらもどこか嬉しそうな監督生はそのバラも部屋の花瓶に生けてから朝食を済ませいつも通りに学園へと向かった。

「おはよう、監督生!」「はよ」
 道中出会ったクラスメイトと他愛のない話をしながら登校し、自分のロッカーを開けたところで突然ぴたりと動きを止める。
 どうしたのかと両脇から中を覗き込んだ友人達は同時に「うわ……」と声を漏らして何とも言えない表情を浮かべた。
 その視線の先にはまたもや白いバラが一本。
「あの人もよくやるよなぁ」
「ここまでくるともはや感心する」
 率直に引いているらしい友人達が好き勝手言うのを両耳で聞きながらははっと苦笑する監督生はそれでも、手にしたバラへ愛おしそうな視線を向けていた。
 それからも一日中。ことある事に監督生の前に現れる白いバラ。
 どうやらそれはここ最近の日常茶飯事らしく、同じ学年の友人どころか一部の先輩、先生達でさえ遭遇する度に「ああ……」と呆れを含んだ視線を監督生へ送っていた。
 ただ一人、バラの送り主を除いては。

「おや。こんにちは、監督生さん」
「こんにちは。アズール先輩」
 移動教室へ向かう途中の廊下で顔見知りの先輩と鉢合わせ会釈する監督生。
 一緒に居た双子の先輩も交え二言三言言葉を交わし、それではと別れたアズールの背中へ不意に。
「先輩。私、赤色が好きなんですよ」
「はい?」
 振り返り眉を顰めたアズールへ満面の笑みを返し「それだけです」と言って立ち去った監督生の後ろでは、一人だけ意味が分からないで立ち尽くすアズールが「だって」「だそうですよ」と両脇から同時にからかわれ頭にハテナを浮かべていた。

×××

 夜、オンボロ寮の一室にて。
 窓際の花瓶に本日12本目のバラを挿して満足気に笑う監督生。
 その姿を欠伸をしながら見ていた相棒が。
「しっかし。何でそんなに分かりやすいのにちゃんと答えてやらないんだ?」
 何度もされたその問いにしばし唸ってから。
「白いバラにはね『私はあなたにふさわしい』って意味があるんだけど」
 言いながら送り主の先輩を思い浮かべ。
「なんか悔しいから。直接言われるまでは気付いてないフリしてやろうと思って」
 立てた人差し指を口元に当てふふっと笑って見せた監督生に、どっちもどっちだなと珍しく悟った相棒は無言でベッドへ潜り込んだ。
 自分で聞いたくせにと軽く息を吐いてから花瓶のバラへ向き直りその内の3本をまとめるようにして赤いリボンを結び付けた。
「早く気付いてくださいね。先輩」
 窓際に並んだ、同じようにリボンの巻かれた花瓶を眺めて一人呟く。
 毎日届くきっかり12本の白いバラ。
 それが赤くなるのが先か、108本になるのが先か。
 面倒臭い2人の攻防戦は、もう少しだけ続くようだ。

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※ 12本のバラ→私と付き合ってください
※ 108本のバラ→結婚してください
※ 赤いバラ→あなたが大好きです
(諸説あり)


(2022/04/17)
参加ログ #女監督生受け版ワンドロワンライ
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