金糸雀が見た夢
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「気色の悪い目だね」
それは、幼少期の頃に言われた中で覚えている、一番古い台詞だった。
生まれつき俺の目は左右違う色をしていた。
何故そうして生まれたのかは分からない。
親や親族で左右の目の色が違っている者はいないので、遺伝子ではない。
遺伝子変異とでも言うのか、とにかく、俺はこの目が大嫌いだった。
「あんたは呪われた子だよ。腹の中にいる時から神様に嫌われてたんだ」
生みの親には毎日のように罵られた。
顔を見ては「気持ち悪い」と唾を吐かれ、「こっちを見るな、近づくな」と非難された。
どうしようもない、変えられない先天性のものを、いつまでも気にしていられない。
その内、親の罵倒なんて右から左へ聞き流していたが、目を見られるという抵抗は消えなかった。
なるべく見られないようにと髪を伸ばしたりもした。
だが、それもまた無意味な悪あがきのようなものだった。
結局この目の色は変えようがない。その事実は、この目は一生残るもの。
俺は、この目が大嫌いだ。
「いぐ……さ…」
あまりに嫌悪が過ぎて、いっそ目をほじくり出そうと刀を突き立てようとしたこともある。
柄を握るところまではよかったが、いかんせん意気地無しの俺には勇気が足りなくて、震えが止まらなくて、実行には至らなかった。
「い…ろさ…」
唯一俺の傍にいてくれた蛇の鏑丸に、野生の本能を取り戻して目に噛みついてくれやしないかと若干期待したこともある。
取り出した目を大口開けて卵のように丸飲みにして、なかったことにでもしてくれたらいいと願った。
残念ながら鏑丸は俺によく懐き、噛みつくことはしなかった。
嬉しいようで悲しい。
そんな幼少期だった。
「…さん!いぐ……ん…!」
昔の話はそろそろ終わりにしよう。
あまり思い出したくないことだ。
それに、いい加減やかましい。
「い…さん。……いーぐーろーさあああん!」
「煩い」
けたたましい声で叫ぶやかましい女に一喝する。
目を開けると、継子である白菊が逆さになって映し出された。
いつからそうしていたのか、白菊は頭元でしゃがんでこちらを上から見下ろしていた。
「起きてるじゃないですか。それならすぐ返事してくださいよ」
「もう少し静かに起こせないのか」
目覚ましの替わりをさせておいて愚痴を零す。
こんな傍若無人な俺の継子によくなったものだ、白菊は。
「初めは静かに起こそうとしたんです。でも起きなかったんですよ」
白菊はぷくーっと頬を膨らませた。
最初は肩を軽く叩くだけだったが起きなくて、どこまで声を張れば起きるか試していたらしい。
実を言うと割と初めの方から起きてはいたが、朝はどうも苦手ですぐに返事する気にもならなかった。
なんだか嫌な夢のようなものを見ていた気もするが、もう覚えていない。
俺は怠い体を持ち上げて布団から這い出た。
「今日、なんの日かお忘れですね?」
白菊がじとっとした目で見つめてきた。
ギラギラしたその目は蛇を彷彿とさせる。
「知っている。今日は非番だ」
「それだけですか?」
白菊は不満そうに口を尖らせた。
「予定なんてないだろう」
そう言うと、今度は眉尻を下げて残念そうな顔をした。
ちょっとからかうだけで表情がころころ変わって、内心面白いと思った。
「嘘だ、わかっている。買い物に付き合うって約束のことだろ」
「良かった!覚えててくれたんですね」
白菊はぱあっと顔を明るくした。
これが見たくて、つい意地悪をしてしまう。
予定がなければ白菊が起こしになんて来ないのは分かっている。
今日は、白菊が鬼殺隊員となってから鬼を三十体倒したお祝いで買い物に同行する約束を立てていた日だ。
鬼を三十体倒したことで大きな変化が訪れるわけではないが、辛い修行に耐え、鬼と戦う恐怖を乗り越え、次期柱として鬼を滅殺するべく精進している努力を讃えたいという思いがあった。
いつしか十二鬼月も倒せるだけの力を得て鬼殺隊としての誇りを胸にこれからも戦ってもらう為の、これは褒美だ。
「ほら、伊黒さん、早く早くっ」
「引っ張るな。準備くらいゆっくりさせろ」
「私はずーっと待ってるんです!」
我慢を覚えていない子供のように白菊はすでにはしゃいでいた。
いや、我慢させているのは俺の所為ではあるが。
屋敷を飛び出しそうな勢いの白菊をなだめつつ、私服に着替える。
門の前で待っていた白菊は、準備を終えて出て来た俺を見てにこっと笑った。
それは、幼少期の頃に言われた中で覚えている、一番古い台詞だった。
生まれつき俺の目は左右違う色をしていた。
何故そうして生まれたのかは分からない。
親や親族で左右の目の色が違っている者はいないので、遺伝子ではない。
遺伝子変異とでも言うのか、とにかく、俺はこの目が大嫌いだった。
「あんたは呪われた子だよ。腹の中にいる時から神様に嫌われてたんだ」
生みの親には毎日のように罵られた。
顔を見ては「気持ち悪い」と唾を吐かれ、「こっちを見るな、近づくな」と非難された。
どうしようもない、変えられない先天性のものを、いつまでも気にしていられない。
その内、親の罵倒なんて右から左へ聞き流していたが、目を見られるという抵抗は消えなかった。
なるべく見られないようにと髪を伸ばしたりもした。
だが、それもまた無意味な悪あがきのようなものだった。
結局この目の色は変えようがない。その事実は、この目は一生残るもの。
俺は、この目が大嫌いだ。
「いぐ……さ…」
あまりに嫌悪が過ぎて、いっそ目をほじくり出そうと刀を突き立てようとしたこともある。
柄を握るところまではよかったが、いかんせん意気地無しの俺には勇気が足りなくて、震えが止まらなくて、実行には至らなかった。
「い…ろさ…」
唯一俺の傍にいてくれた蛇の鏑丸に、野生の本能を取り戻して目に噛みついてくれやしないかと若干期待したこともある。
取り出した目を大口開けて卵のように丸飲みにして、なかったことにでもしてくれたらいいと願った。
残念ながら鏑丸は俺によく懐き、噛みつくことはしなかった。
嬉しいようで悲しい。
そんな幼少期だった。
「…さん!いぐ……ん…!」
昔の話はそろそろ終わりにしよう。
あまり思い出したくないことだ。
それに、いい加減やかましい。
「い…さん。……いーぐーろーさあああん!」
「煩い」
けたたましい声で叫ぶやかましい女に一喝する。
目を開けると、継子である白菊が逆さになって映し出された。
いつからそうしていたのか、白菊は頭元でしゃがんでこちらを上から見下ろしていた。
「起きてるじゃないですか。それならすぐ返事してくださいよ」
「もう少し静かに起こせないのか」
目覚ましの替わりをさせておいて愚痴を零す。
こんな傍若無人な俺の継子によくなったものだ、白菊は。
「初めは静かに起こそうとしたんです。でも起きなかったんですよ」
白菊はぷくーっと頬を膨らませた。
最初は肩を軽く叩くだけだったが起きなくて、どこまで声を張れば起きるか試していたらしい。
実を言うと割と初めの方から起きてはいたが、朝はどうも苦手ですぐに返事する気にもならなかった。
なんだか嫌な夢のようなものを見ていた気もするが、もう覚えていない。
俺は怠い体を持ち上げて布団から這い出た。
「今日、なんの日かお忘れですね?」
白菊がじとっとした目で見つめてきた。
ギラギラしたその目は蛇を彷彿とさせる。
「知っている。今日は非番だ」
「それだけですか?」
白菊は不満そうに口を尖らせた。
「予定なんてないだろう」
そう言うと、今度は眉尻を下げて残念そうな顔をした。
ちょっとからかうだけで表情がころころ変わって、内心面白いと思った。
「嘘だ、わかっている。買い物に付き合うって約束のことだろ」
「良かった!覚えててくれたんですね」
白菊はぱあっと顔を明るくした。
これが見たくて、つい意地悪をしてしまう。
予定がなければ白菊が起こしになんて来ないのは分かっている。
今日は、白菊が鬼殺隊員となってから鬼を三十体倒したお祝いで買い物に同行する約束を立てていた日だ。
鬼を三十体倒したことで大きな変化が訪れるわけではないが、辛い修行に耐え、鬼と戦う恐怖を乗り越え、次期柱として鬼を滅殺するべく精進している努力を讃えたいという思いがあった。
いつしか十二鬼月も倒せるだけの力を得て鬼殺隊としての誇りを胸にこれからも戦ってもらう為の、これは褒美だ。
「ほら、伊黒さん、早く早くっ」
「引っ張るな。準備くらいゆっくりさせろ」
「私はずーっと待ってるんです!」
我慢を覚えていない子供のように白菊はすでにはしゃいでいた。
いや、我慢させているのは俺の所為ではあるが。
屋敷を飛び出しそうな勢いの白菊をなだめつつ、私服に着替える。
門の前で待っていた白菊は、準備を終えて出て来た俺を見てにこっと笑った。
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