嘘から始まる
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「ちょっと、聞こえなかったの?」
苛ついた口調の女子生徒の声が、私の耳を右から左へと通り抜ける。
学校放送を行う為の放送室にたむろする女子生徒四人。
昼の休憩時間には放送委員が校内にBGMを流すことになっているのだが、それさえ終われば他にやることはない。
委員会の中でも特に楽な分類であり、その上放送室は教師の出入りも非常に少ない。
それ故に放送室は放送委員の溜まり場的なものになり、休憩時間を自由に過ごしていた。
一つの机の四方を椅子で取り囲み、私達放送委員の同級生は座っていた。
机上はトランプが山になって積まれ、唯一残った一枚のジョーカーが私の手の中で笑っている。
不気味な笑みを浮かべたジョーカーのイラストから目線を外し顔を上げると、正面左右に座る女子生徒達が私に冷たい視線を送っていた。
「え…?あ…ご、ごめん…よく、聞こえなかった」
話の内容についていけず私は茫然としていた。
私が慌てて謝ると、正面に座る女子生徒がわざとらしく大振りに両手を広げ、溜め息をついた。
「我妻くんに告白してきなさい。最低でも一回はデートすること」
女子生徒は改めて指示を下した。
告白することも誰かと交際することも、人に言われたから行うことではない。
それなのに望まないことでも命令口調で言われてしまうのは、私がジョーカーのカードを持っている所為に他ならない。
こうなる前は、皆で机を囲んでトランプを取り出すまでは、普通に楽しんでいただけなのに。
「そ、れは…」
「何?言うこと聞けないの?負けたあんたが悪いでしょう?」
女子生徒は私の声を掻き消し、上から被せて強く発した。
ゲームに負けたことによる罰なんてもっと可愛いことを命令されると思っていた。
頭髪を天辺で結んでちょんまげにして放課後まで過ごすとか、制服のスカートを下着が見えそうになる限界まで折り曲げて先生に注意されるまでするとか、そんな女子高生らしい罰なら笑って受けていたというのに。
そんな理想を打ち消して想像を超える難題を強いられ、簡単に頷けはしなかった。
「で、でも、私、我妻くんとそんなに仲良くないし。告白なんて…」
「大丈夫よ。あいつ女ったらしだから、告白されたら誰でも付き合うわよ」
そういう心配をしているのではないのに、女子生徒は罰を回避できた側であることで余裕な表情をしている。
と言うより、面白いものが見られるのでは、という期待の目だった。
女子生徒はずいっと体を乗り出し、突き出した人差し指を私に向けた。
「いい?ある程度付き合うところまでいくのが罰ゲームなんだからね。まずは告白よ。今日か明日にでも告っちゃいなさいよ」
恨むならトランプに負けた自分へ向けるしかない。
ババ抜きは心理戦と評する人もいるが、運だって重要だ。
私にはどちらも備わっていなかった、ということだ。
そして、こんな人を侮辱するような非道な罰ゲームであろうと、私に拒否権限はない。
嫌だとはっはり断りを入れられるような、それが出来るような強い人間ではないからだ。
下唇を噛み、顔を俯かせて見えた手札に目を落とす。
ジョーカーは笑う。私を嘲笑うように。
「…うん」
私は覚悟を決めて、尚且つ弱々しく頷くのだった。
苛ついた口調の女子生徒の声が、私の耳を右から左へと通り抜ける。
学校放送を行う為の放送室にたむろする女子生徒四人。
昼の休憩時間には放送委員が校内にBGMを流すことになっているのだが、それさえ終われば他にやることはない。
委員会の中でも特に楽な分類であり、その上放送室は教師の出入りも非常に少ない。
それ故に放送室は放送委員の溜まり場的なものになり、休憩時間を自由に過ごしていた。
一つの机の四方を椅子で取り囲み、私達放送委員の同級生は座っていた。
机上はトランプが山になって積まれ、唯一残った一枚のジョーカーが私の手の中で笑っている。
不気味な笑みを浮かべたジョーカーのイラストから目線を外し顔を上げると、正面左右に座る女子生徒達が私に冷たい視線を送っていた。
「え…?あ…ご、ごめん…よく、聞こえなかった」
話の内容についていけず私は茫然としていた。
私が慌てて謝ると、正面に座る女子生徒がわざとらしく大振りに両手を広げ、溜め息をついた。
「我妻くんに告白してきなさい。最低でも一回はデートすること」
女子生徒は改めて指示を下した。
告白することも誰かと交際することも、人に言われたから行うことではない。
それなのに望まないことでも命令口調で言われてしまうのは、私がジョーカーのカードを持っている所為に他ならない。
こうなる前は、皆で机を囲んでトランプを取り出すまでは、普通に楽しんでいただけなのに。
「そ、れは…」
「何?言うこと聞けないの?負けたあんたが悪いでしょう?」
女子生徒は私の声を掻き消し、上から被せて強く発した。
ゲームに負けたことによる罰なんてもっと可愛いことを命令されると思っていた。
頭髪を天辺で結んでちょんまげにして放課後まで過ごすとか、制服のスカートを下着が見えそうになる限界まで折り曲げて先生に注意されるまでするとか、そんな女子高生らしい罰なら笑って受けていたというのに。
そんな理想を打ち消して想像を超える難題を強いられ、簡単に頷けはしなかった。
「で、でも、私、我妻くんとそんなに仲良くないし。告白なんて…」
「大丈夫よ。あいつ女ったらしだから、告白されたら誰でも付き合うわよ」
そういう心配をしているのではないのに、女子生徒は罰を回避できた側であることで余裕な表情をしている。
と言うより、面白いものが見られるのでは、という期待の目だった。
女子生徒はずいっと体を乗り出し、突き出した人差し指を私に向けた。
「いい?ある程度付き合うところまでいくのが罰ゲームなんだからね。まずは告白よ。今日か明日にでも告っちゃいなさいよ」
恨むならトランプに負けた自分へ向けるしかない。
ババ抜きは心理戦と評する人もいるが、運だって重要だ。
私にはどちらも備わっていなかった、ということだ。
そして、こんな人を侮辱するような非道な罰ゲームであろうと、私に拒否権限はない。
嫌だとはっはり断りを入れられるような、それが出来るような強い人間ではないからだ。
下唇を噛み、顔を俯かせて見えた手札に目を落とす。
ジョーカーは笑う。私を嘲笑うように。
「…うん」
私は覚悟を決めて、尚且つ弱々しく頷くのだった。
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