ハッピーバースデートゥーユー
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初夏。
優雅で鮮やかな紫に色付いた藤の花が陽の光を浴びて美しく咲き誇る。
丁度開花の頃を迎え、垂れ下がるように咲く姿はたおやかで、淡い色も相まって柔らかい印象を見る人に与えていた。
同じ紫色の風呂敷に包んだ物を大事そうに運ぶ一人の女性。
由乃は、早く届けたいとばかりに小走りで、それでいて慎重に風呂敷を抱えていた。
やがて辿り着いた先は、煉獄の表札のある屋敷。
門の前で箒で塵掃きしていた、屋敷の末男の千寿郎が由乃に気付く。
その後ろにいた長男、杏寿郎も由乃の姿を見てぱっと顔を明るくした。
「いらっしゃいです、由乃さん」
「よく来たな!由乃」
「こんにちは」
由乃は千寿郎の前まで来て、丁寧にお辞儀した。
由乃が屋敷に訪れたのは数ヵ月振りのこと。
成長期である千寿郎も見ない間に随分と背が伸びて、由乃との目線の高さはほぼ一緒だった。
千寿郎は由乃の手に抱える風呂敷を見て首を傾けた。
「今日はどうしたんですか?」
「今日は特別な日だから…これを」
そう言って由乃は腕の中で風呂敷を広げた。
中から現れたのは、正方形の白い箱だった。
杏寿郎が、なんだろうと腕を組む。
「なんだ、その箱は?」
「実はね、ケーキを持ってきたの」
「ケーキって、洋菓子のですか?僕、食べたことないです」
「俺もないな」
千寿郎はケーキと聞き目を見開いていた。
海外より伝わった洋菓子はまだまだ物珍しく、カステラと並ぶ高級品だ。
杏寿郎も名前は知っていても口にしたことがなかった。
食べたことがないという言葉に、由乃はにこやかに笑った。
「本当?私も初めてなんだあ。一緒に食べよ?」
「頂こう!」
「わあ。じゃあお茶を淹れますね。どうぞお上がりください」
千寿郎は前髪をぴょんと跳ねらせ、ぱたぱたと足音を立てて箒を片付けに走った。
その背中は目に見えるように嬉しそうだった。
由乃は煉獄家の玄関を上がり、座敷にケーキを運び机にそっと置いた。
お茶を淹れて戻って来た千寿郎は由乃と向かい合うように座布団に座った。
杏寿郎も二人の間に座り、箱に注目する。
千寿郎は握り拳を作って膝の上に手を置き、若干落ち着きなく体を揺らしていた。
わくわくして胸を躍らせる様子は、まだ子供だ。
由乃は千寿郎を見て小さく笑った。
「じゃあ開けるね」
「カステラなら食べたことがあるんですが、ケーキは初めてです」
「それと似たような感じだよ」
由乃は、御開帳、と言いながら箱を開けた。
ケーキは円形の土台に、白いホイップクリームと紅色の苺で彩られた物だった。
「スポンジがね、カステラみたいな甘い土台になってるの。中にぎっしり苺も入ってるんだよ」
「すごい!綺麗ですね!」
言ってしまえば質素ではあるものの、初めて目にしたケーキを前に千寿郎は嬉々として声を上げた。
「これは美味しそうだ」
杏寿郎は目で楽しみ、舌なめずりした。
「でも、どうして今日ケーキを?」
千寿郎がここで疑問を発する。
ケーキと言えば、今の時代そう易々と購入して食べられる物ではない。
なのに目の前のケーキは一体何人分あるのかと驚く大きさだ。
由乃は恥ずかしげに両手を前できゅっと結んだ。
「杏寿郎さんの、誕生日だから」
「なんと!」
そう言われ、杏寿郎はピンと背筋を立てた。
優雅で鮮やかな紫に色付いた藤の花が陽の光を浴びて美しく咲き誇る。
丁度開花の頃を迎え、垂れ下がるように咲く姿はたおやかで、淡い色も相まって柔らかい印象を見る人に与えていた。
同じ紫色の風呂敷に包んだ物を大事そうに運ぶ一人の女性。
由乃は、早く届けたいとばかりに小走りで、それでいて慎重に風呂敷を抱えていた。
やがて辿り着いた先は、煉獄の表札のある屋敷。
門の前で箒で塵掃きしていた、屋敷の末男の千寿郎が由乃に気付く。
その後ろにいた長男、杏寿郎も由乃の姿を見てぱっと顔を明るくした。
「いらっしゃいです、由乃さん」
「よく来たな!由乃」
「こんにちは」
由乃は千寿郎の前まで来て、丁寧にお辞儀した。
由乃が屋敷に訪れたのは数ヵ月振りのこと。
成長期である千寿郎も見ない間に随分と背が伸びて、由乃との目線の高さはほぼ一緒だった。
千寿郎は由乃の手に抱える風呂敷を見て首を傾けた。
「今日はどうしたんですか?」
「今日は特別な日だから…これを」
そう言って由乃は腕の中で風呂敷を広げた。
中から現れたのは、正方形の白い箱だった。
杏寿郎が、なんだろうと腕を組む。
「なんだ、その箱は?」
「実はね、ケーキを持ってきたの」
「ケーキって、洋菓子のですか?僕、食べたことないです」
「俺もないな」
千寿郎はケーキと聞き目を見開いていた。
海外より伝わった洋菓子はまだまだ物珍しく、カステラと並ぶ高級品だ。
杏寿郎も名前は知っていても口にしたことがなかった。
食べたことがないという言葉に、由乃はにこやかに笑った。
「本当?私も初めてなんだあ。一緒に食べよ?」
「頂こう!」
「わあ。じゃあお茶を淹れますね。どうぞお上がりください」
千寿郎は前髪をぴょんと跳ねらせ、ぱたぱたと足音を立てて箒を片付けに走った。
その背中は目に見えるように嬉しそうだった。
由乃は煉獄家の玄関を上がり、座敷にケーキを運び机にそっと置いた。
お茶を淹れて戻って来た千寿郎は由乃と向かい合うように座布団に座った。
杏寿郎も二人の間に座り、箱に注目する。
千寿郎は握り拳を作って膝の上に手を置き、若干落ち着きなく体を揺らしていた。
わくわくして胸を躍らせる様子は、まだ子供だ。
由乃は千寿郎を見て小さく笑った。
「じゃあ開けるね」
「カステラなら食べたことがあるんですが、ケーキは初めてです」
「それと似たような感じだよ」
由乃は、御開帳、と言いながら箱を開けた。
ケーキは円形の土台に、白いホイップクリームと紅色の苺で彩られた物だった。
「スポンジがね、カステラみたいな甘い土台になってるの。中にぎっしり苺も入ってるんだよ」
「すごい!綺麗ですね!」
言ってしまえば質素ではあるものの、初めて目にしたケーキを前に千寿郎は嬉々として声を上げた。
「これは美味しそうだ」
杏寿郎は目で楽しみ、舌なめずりした。
「でも、どうして今日ケーキを?」
千寿郎がここで疑問を発する。
ケーキと言えば、今の時代そう易々と購入して食べられる物ではない。
なのに目の前のケーキは一体何人分あるのかと驚く大きさだ。
由乃は恥ずかしげに両手を前できゅっと結んだ。
「杏寿郎さんの、誕生日だから」
「なんと!」
そう言われ、杏寿郎はピンと背筋を立てた。
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