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白にうもれる

真っ白な壁に真っ白な天井、真っ白なカーテン。
広い部屋の真ん中に、ぽつりと置かれた天蓋付きのベッド、それもまた白い。
酷く異質な空間の中、そこに存在する生あるものは怪盗と探偵のみ。
ベッドの他には家具らしい家具もなく、なんでこんな事になっているのだろうか、だなんてこの状況になってから何度も考えた疑問が再度浮かんでくる。
乾いた笑いは己一人の物だけでなく、自分よりも高い位置からため息とともに降ってくる諦観も含んだ笑い声に、何度目かになる「これからどうしよう」という思いが浮かび上がってきた。
「なんつーかさ、とりあえず、この場を楽しんじゃえばいいんじゃね」
シルクハットと帽子を取り払った怪盗は、その言葉通りにベットの上に大の字で倒れ込む。
まるでこうなる原因が判っているかのような雰囲気に更に謎が増える。
「それに、俺とお前とでこんなオヒメサマみたいな夢ある場所、柄じゃねーだろ?」
ロマンチックなんて言葉とは程遠い自分たちの関係を示唆する言葉に、確かに、と頷く。
ぽいぽいと靴を脱ぎ、勢いつけて怪盗の隣へと飛び込めば、目測を誤りうっかりと怪盗の腹の上へと飛び込んでしまった。
ぐえ、と蛙が潰れたような声がしたことでその腹に膝が思い切り入ってしまったことを悟る。
「わりぃ」
幾ら小学生の体重だったとしても、構えていないときに食らう物がどれだけ辛いかはなんとなく想像がつく。
「くっ…!仕返しだっ!」
「あ、てめぇ、大人げねーぞ!」
仕返しだ、とそこに引かれていたシーツを頭から被せられ身動きが取れなくなってしまった。
あ、これはまずい、と思った瞬間にわきから抱きかかえられ思い切り擽られる。
「このっ、やろー!」
じたばたともがけばもがくほどシーツが体に絡まり身動きが取れなくなってしまう。
「けけけ、名探偵も形無しだな!」
何が楽しいのかそのまま抱きしめられ更に体の自由は奪われてしまった。
ちくしょう、なんて呟いてみたところで全く気にも留めずそのまま布団へと放り投げられてしまった。
かろうじてベットが柔らかかった為頭を打つ、なんて事にはならなかったがそれなりの衝撃が体に走る。
「おい、キッド!!」
もごもごと漸く顔を出せばそこにはにやり、と笑う男の姿。
「なぁ、名探偵。このまま俺とイイコト、する?」
徐々に近くなっていく顔に、その熱のこもった瞳に、直視できなくなり目を閉じた。
暗闇へと転じた世界で、何が起きたのか。
それは二人だけが知る。
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