Craig Shannon の物語
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四季があり、肥沃な大地と豊富な資源により人々が平和に暮らすアスロード。
国祖が制定した憲法のもと、王が先頭に立ち人々を導く立憲君主国。
よって王位継承権を持つ未来の王は幼い頃より親から離され正しく人々を導くことのできる立派な国王になる為に徹底した帝王学を叩き込まれる。
アスロード王の孫、イアン王子もその例外ではない。
イアンは皇太子の嫡男であったため3歳までを皇太子である父と正妻オリビア妃と共に首都アストリア近郊の国王領にある離宮で華やかに過ごしたが、それ以降は東にある別の国王領の離宮で家臣や学者らと静かに暮らすこととなる。
それは父王が崩御し自らが戴冠するまでの期間ずっと国王領で小さな領主となり多くを学ぶのだ。
そしてそんな未来の王には3歳から婚約者がいた。
ルトガレラ国の当時生まれたばかりの王女、バーバラ姫だ。
アスロードは南の海に面する国。
対してルトガレラは北の海に面する国で、アスロードにとって脅威であるゼルトザーム帝国を牽制する為にも北側に強固な同盟国を持ちたかったのだ。
アスロード王が孫の婚約者にバーバラ姫を迎える事によりなんとかルトガレラを口説き落とし悲願の同盟を結んだ形となる。
ルトガレラとて、実子を未来のアスロード王妃にする事は悪い話ではないのだ。
イアンが18歳になった頃。
国王の崩御が知らされた。
アスロード全体が悲しみに包まれる中、皇太子であった父が王へと即位し、自らは皇太子となった。
祖父の訃報を聞き首都アストリアへ赴いた折、久々に登城すれば中性的な顔立ちは母親譲りだろうか、短髪なのに目を惹くレモン色のような金髪が美しく、体の線が細い事も相俟ってイアンとすれ違う女性皆が振り返る始末。
たちまち皆を魅了した。
この時イアンは運命的な出会いをする。
大神殿で見た自分と同じようなキラキラした金髪のまだ3歳ほどの小さな男の子だ。
それが前国王の棺の前で騎士の真似事をするかのように跪き祈りを捧げていた。
「陛下、あの子供は?」
父王に尋ねればその子の母と思しき女が子供に歩み寄り
「ほら、クレイグ。皇太子殿下にご挨拶なさい」
と子供に促した。
女には見覚えがあった。祝賀パーティーなどで数回顔を合わせているからだ。
しかし初めて見る子供はイアンと目が合うと慌てて母親の後ろに隠れドレスの脇から此方をチラッと覗き丸い頬と頰に挟まれた小さな口で
「クレイグ シャノンです」
と小さな声で名前を名乗った。
名門シャノン家の嫡子にしてはなんとも頼りない子供…そう思わずにはいられなかったのか、父親は将軍として名を馳せる人。反して息子はアレだ。自分の代になれば共に国を導く仲にもなろう家の子が…と、イアンはただ一瞥し親子の前を無言で通り過ぎ祖父の棺の前に膝を折った。
そして喪もあけないその年。
「殿下、おめでとうございます」
毎日顔を突き合わせている家臣達が朝から恭しく同じ言葉をわざわざ言いに来る。
次々と現れる家臣達に眉間に皺を寄せて露骨なまでに嫌な顔をし椅子に脚を組んでどかりと座ったまま返事ひとつせずにいた。
それはたった一通の手紙が始まり。
毎日朝に届く首都からの定期便に国王の紋がついた封筒が入っていた。
家臣に急かされ開封すれば『秋の豊穣祭の日にイアンとバーバラの結婚式を執り行うので首都に来るように』と、用件のみ書かれていた。それも見慣れた父の…いや王の直筆ではなくタイプライターの機械的な文字で。
イアンは賢い。
自分のなすべき事、自分の役割をよく理解している。
全てはよき王となる為に……。
…ならば国民にとってよき王であれさえすれば良いわけで、父王が在位中は自分の役割は無いに等しい。
"勉強の為"とまるで旅人のように旅行をしては行く先々でお気に入り美女を見つけ関係を持ち、自分の屋敷へメイドとして働きに来るように言いつけた。
"社会性を身につける為"と各地から自分を慕う権力者を集め夜毎パーティーを開いた。
昔は怖かった家臣や学者も今では自分に跪く。
この小さな国王領に於いて自分は既に国王だった。
「まさか成人を待たずして結婚とはな。それも先代の喪も明けぬうち…さては、とうとう首都までこのイアンの話が届きおったか…面白い、父王が余に嵌める足枷をどうやって壊してやろうか」
風呂好きのイアンは日に3回はお気に入りのメイド達と風呂に入る。
不機嫌だったイアンも大好きな風呂では流石に上機嫌に話しているも、メイド達は『私達の殿下が奥様にとられちゃう』とか『ご結婚されてもお風呂、ご一緒させてくださいね』だの好き勝手相槌を打っていた。
豊穣祭の日は真っ青な高い空に雲ひとつない晴天で、結婚式は城の奥の大神殿で厳かに執り行われた。
イアンはこの時初めて自分の妻となるバーバラを見た。
純白のウエディングドレスに長いヴェールを纏った花嫁バーバラは背の低い赤毛のまだまだ子供ではないか、と思う程に幼い女だった。
よく『ウエディングドレスを着た女性は綺麗だ』なんて聞くが綺麗だとは思わなかったし、アスロードの秘宝である精霊石のネックレスをしていても少年のように平な胸元に目がいってしまい"豚に真珠""猫に小判"だと口には出さずとも如実に顔に出てしまっていた。
そしてなにより幼い頃から運命付けられ娶る女がこれか…と、がっかりもした。
1区から23区までを馬車でパレードした時も、緊張するばかりで愛想笑いひとつ浮かべず手を振っていたし、披露宴でダンスを踊った時も花嫁に足を踏まれる羽目にあった。
「あれが本当に余の妻か?…あんな鈍臭い女初めて見たわ…」
例によってメイド達に身体を洗われながら口をつくのは愚痴ばかり。
けれども未来の王として育てられた自分のすべき事は嫌でもわかる。
「適当に初夜を済ませたらお前たちで口直し…だな。よいか、イアンより先に寝るでないぞ?」
そして風呂から上がり新妻が待つ寝室へと足を運んだ。
薄暗がりの中大きなベッドを前に純白のシルクのドレスを纏った花嫁はちょこんと立っていた。
もじもじとお腹の前で指を組み動かしながら俯いていて表情さえも伺えない。
「で…殿下。不束者ですが何卒宜しくお願い致します…」
消え入りそうな声に静かな寝室でさえ何を言っているのかわからないほどで、そんなバーバラにイアンは苛々しながら腕を組み高圧的な態度で見下ろし
「余と其方は夫婦とはなったがそれは国と国との決め事の為。それ以上でもそれ以下でもない。故に世は皇太子として其方に子種を授けるし、其方も嫡子となるべき男子を早く身籠るのだ。よいか、己の為すべき事のみを見つめ生きよ」
そう言い放つとバーバラの手を掴みベッドに荒々しく押し倒した。
小さなその手には温もりはなく、身体は小刻みに震えていた。
赤毛の髪は式の時は綺麗にまとめてあったが、下ろした姿を見れば癖っ毛で髪質も硬い。
「まるで赤毛の猿みたいじゃな。花嫁よ…どうだ?…余が怖いか?」
赤毛に触れながら問えば、目に涙を溜めているにもかかわらず
「怖くはありません」
と、力強く彼女は応えた。
もとより優しく抱く気などなかった。
ただ父が夜毎遊んでいる不肖な息子につけた枷である嫁に対し八つ当たりしなければ気は治らない。
「痛い…殿下、どうかもう少し…ッ」
もう少し…何だと言いたかったのだろう。恐らくは勇気を振り絞り、或いは耐え切れず漏らす言葉だったのだろうがイアンはその言葉に重ねるように
「ほぅ、夫である余にくちごたえとな?生意気な」
と、膨らみのない胸に爪を立て身を硬くする小さな身体を躊躇いなく貫いた。
どう言う訳かその晩はお気に入りのメイド達が待つ部屋へは足を運ばず、満身創痍で疲れ果て無防備な寝顔を浮かべ眠るバーバラの強付いた癖毛を撫でながら夜を明かした。
まだ女として成熟していない身体には自分がつけた歯形や傷痕が生々しく浮かんでいた。
翌朝、目を覚ましたバーバラに『おはよう、バーバラ』と声を掛けた。
ただ一言挨拶をしただけなのにその時バーバラはイアンに向けて初めて笑顔を見せた。
やがて授かる2人の間に生まれた姫もいつしか嫁に出る歳となり、また夫婦2人だけの生活が始まるが、連日連夜大なり小なり行われるイアン主催のパーティーにも、娘より若いメイドを連れ込み入る風呂にも、バーバラ妃は文句ひとつ言わない。
一見好き放題遊んでいるイアンに今や二代公爵家の片翼を担うシャノン家の若き当主となったクレイグさえも頭を抱え何度かイアンを嗜める為に訪ねたが、バーバラはその度に穏やかに笑い『心配はありませんよ、殿下は素晴らしいお方です』と言うばかり。
賢く、自分のやるべき事を知り、筋を通すイアンは一夫多妻が許されるにもかかわらずバーバラ以外の妻を持とうとしない。
『今まで娘しか授からなかったがバーバラに男子が授かるまでは子種はバーバラにやると言っている。だからバーバラも男子を身籠るよう日々努力を怠るでない。若くおれ、客人の訪問が無くても寝る間際まで毎日コルセットを締めて体型を崩すな。』と妻に対しきつい物言いをするが、彼女曰く『裏を返せば子を孕むには高齢となった私に"この先もお前一筋だから綺麗でいてね"と言っているようなもの』だそうで、一見噛み合わない夫婦は他人にはわからない硬い絆で結ばれている事を物語る。
幼少より国王になるべく厳しく育てられ、どんな政治手腕を見せるかはまだ未知数。
学者たちにより叩き込まれた帝王学から作られた未来の王に、最後の最後に優しさを擦り込んだのは他でもないバーバラなのかも知れない。
望んで出会った訳ではない。
大恋愛の末結ばれた訳でもない。
しかし此処にも"出会うべくして出会った2人"がいる。
国祖が制定した憲法のもと、王が先頭に立ち人々を導く立憲君主国。
よって王位継承権を持つ未来の王は幼い頃より親から離され正しく人々を導くことのできる立派な国王になる為に徹底した帝王学を叩き込まれる。
アスロード王の孫、イアン王子もその例外ではない。
イアンは皇太子の嫡男であったため3歳までを皇太子である父と正妻オリビア妃と共に首都アストリア近郊の国王領にある離宮で華やかに過ごしたが、それ以降は東にある別の国王領の離宮で家臣や学者らと静かに暮らすこととなる。
それは父王が崩御し自らが戴冠するまでの期間ずっと国王領で小さな領主となり多くを学ぶのだ。
そしてそんな未来の王には3歳から婚約者がいた。
ルトガレラ国の当時生まれたばかりの王女、バーバラ姫だ。
アスロードは南の海に面する国。
対してルトガレラは北の海に面する国で、アスロードにとって脅威であるゼルトザーム帝国を牽制する為にも北側に強固な同盟国を持ちたかったのだ。
アスロード王が孫の婚約者にバーバラ姫を迎える事によりなんとかルトガレラを口説き落とし悲願の同盟を結んだ形となる。
ルトガレラとて、実子を未来のアスロード王妃にする事は悪い話ではないのだ。
イアンが18歳になった頃。
国王の崩御が知らされた。
アスロード全体が悲しみに包まれる中、皇太子であった父が王へと即位し、自らは皇太子となった。
祖父の訃報を聞き首都アストリアへ赴いた折、久々に登城すれば中性的な顔立ちは母親譲りだろうか、短髪なのに目を惹くレモン色のような金髪が美しく、体の線が細い事も相俟ってイアンとすれ違う女性皆が振り返る始末。
たちまち皆を魅了した。
この時イアンは運命的な出会いをする。
大神殿で見た自分と同じようなキラキラした金髪のまだ3歳ほどの小さな男の子だ。
それが前国王の棺の前で騎士の真似事をするかのように跪き祈りを捧げていた。
「陛下、あの子供は?」
父王に尋ねればその子の母と思しき女が子供に歩み寄り
「ほら、クレイグ。皇太子殿下にご挨拶なさい」
と子供に促した。
女には見覚えがあった。祝賀パーティーなどで数回顔を合わせているからだ。
しかし初めて見る子供はイアンと目が合うと慌てて母親の後ろに隠れドレスの脇から此方をチラッと覗き丸い頬と頰に挟まれた小さな口で
「クレイグ シャノンです」
と小さな声で名前を名乗った。
名門シャノン家の嫡子にしてはなんとも頼りない子供…そう思わずにはいられなかったのか、父親は将軍として名を馳せる人。反して息子はアレだ。自分の代になれば共に国を導く仲にもなろう家の子が…と、イアンはただ一瞥し親子の前を無言で通り過ぎ祖父の棺の前に膝を折った。
そして喪もあけないその年。
「殿下、おめでとうございます」
毎日顔を突き合わせている家臣達が朝から恭しく同じ言葉をわざわざ言いに来る。
次々と現れる家臣達に眉間に皺を寄せて露骨なまでに嫌な顔をし椅子に脚を組んでどかりと座ったまま返事ひとつせずにいた。
それはたった一通の手紙が始まり。
毎日朝に届く首都からの定期便に国王の紋がついた封筒が入っていた。
家臣に急かされ開封すれば『秋の豊穣祭の日にイアンとバーバラの結婚式を執り行うので首都に来るように』と、用件のみ書かれていた。それも見慣れた父の…いや王の直筆ではなくタイプライターの機械的な文字で。
イアンは賢い。
自分のなすべき事、自分の役割をよく理解している。
全てはよき王となる為に……。
…ならば国民にとってよき王であれさえすれば良いわけで、父王が在位中は自分の役割は無いに等しい。
"勉強の為"とまるで旅人のように旅行をしては行く先々でお気に入り美女を見つけ関係を持ち、自分の屋敷へメイドとして働きに来るように言いつけた。
"社会性を身につける為"と各地から自分を慕う権力者を集め夜毎パーティーを開いた。
昔は怖かった家臣や学者も今では自分に跪く。
この小さな国王領に於いて自分は既に国王だった。
「まさか成人を待たずして結婚とはな。それも先代の喪も明けぬうち…さては、とうとう首都までこのイアンの話が届きおったか…面白い、父王が余に嵌める足枷をどうやって壊してやろうか」
風呂好きのイアンは日に3回はお気に入りのメイド達と風呂に入る。
不機嫌だったイアンも大好きな風呂では流石に上機嫌に話しているも、メイド達は『私達の殿下が奥様にとられちゃう』とか『ご結婚されてもお風呂、ご一緒させてくださいね』だの好き勝手相槌を打っていた。
豊穣祭の日は真っ青な高い空に雲ひとつない晴天で、結婚式は城の奥の大神殿で厳かに執り行われた。
イアンはこの時初めて自分の妻となるバーバラを見た。
純白のウエディングドレスに長いヴェールを纏った花嫁バーバラは背の低い赤毛のまだまだ子供ではないか、と思う程に幼い女だった。
よく『ウエディングドレスを着た女性は綺麗だ』なんて聞くが綺麗だとは思わなかったし、アスロードの秘宝である精霊石のネックレスをしていても少年のように平な胸元に目がいってしまい"豚に真珠""猫に小判"だと口には出さずとも如実に顔に出てしまっていた。
そしてなにより幼い頃から運命付けられ娶る女がこれか…と、がっかりもした。
1区から23区までを馬車でパレードした時も、緊張するばかりで愛想笑いひとつ浮かべず手を振っていたし、披露宴でダンスを踊った時も花嫁に足を踏まれる羽目にあった。
「あれが本当に余の妻か?…あんな鈍臭い女初めて見たわ…」
例によってメイド達に身体を洗われながら口をつくのは愚痴ばかり。
けれども未来の王として育てられた自分のすべき事は嫌でもわかる。
「適当に初夜を済ませたらお前たちで口直し…だな。よいか、イアンより先に寝るでないぞ?」
そして風呂から上がり新妻が待つ寝室へと足を運んだ。
薄暗がりの中大きなベッドを前に純白のシルクのドレスを纏った花嫁はちょこんと立っていた。
もじもじとお腹の前で指を組み動かしながら俯いていて表情さえも伺えない。
「で…殿下。不束者ですが何卒宜しくお願い致します…」
消え入りそうな声に静かな寝室でさえ何を言っているのかわからないほどで、そんなバーバラにイアンは苛々しながら腕を組み高圧的な態度で見下ろし
「余と其方は夫婦とはなったがそれは国と国との決め事の為。それ以上でもそれ以下でもない。故に世は皇太子として其方に子種を授けるし、其方も嫡子となるべき男子を早く身籠るのだ。よいか、己の為すべき事のみを見つめ生きよ」
そう言い放つとバーバラの手を掴みベッドに荒々しく押し倒した。
小さなその手には温もりはなく、身体は小刻みに震えていた。
赤毛の髪は式の時は綺麗にまとめてあったが、下ろした姿を見れば癖っ毛で髪質も硬い。
「まるで赤毛の猿みたいじゃな。花嫁よ…どうだ?…余が怖いか?」
赤毛に触れながら問えば、目に涙を溜めているにもかかわらず
「怖くはありません」
と、力強く彼女は応えた。
もとより優しく抱く気などなかった。
ただ父が夜毎遊んでいる不肖な息子につけた枷である嫁に対し八つ当たりしなければ気は治らない。
「痛い…殿下、どうかもう少し…ッ」
もう少し…何だと言いたかったのだろう。恐らくは勇気を振り絞り、或いは耐え切れず漏らす言葉だったのだろうがイアンはその言葉に重ねるように
「ほぅ、夫である余にくちごたえとな?生意気な」
と、膨らみのない胸に爪を立て身を硬くする小さな身体を躊躇いなく貫いた。
どう言う訳かその晩はお気に入りのメイド達が待つ部屋へは足を運ばず、満身創痍で疲れ果て無防備な寝顔を浮かべ眠るバーバラの強付いた癖毛を撫でながら夜を明かした。
まだ女として成熟していない身体には自分がつけた歯形や傷痕が生々しく浮かんでいた。
翌朝、目を覚ましたバーバラに『おはよう、バーバラ』と声を掛けた。
ただ一言挨拶をしただけなのにその時バーバラはイアンに向けて初めて笑顔を見せた。
やがて授かる2人の間に生まれた姫もいつしか嫁に出る歳となり、また夫婦2人だけの生活が始まるが、連日連夜大なり小なり行われるイアン主催のパーティーにも、娘より若いメイドを連れ込み入る風呂にも、バーバラ妃は文句ひとつ言わない。
一見好き放題遊んでいるイアンに今や二代公爵家の片翼を担うシャノン家の若き当主となったクレイグさえも頭を抱え何度かイアンを嗜める為に訪ねたが、バーバラはその度に穏やかに笑い『心配はありませんよ、殿下は素晴らしいお方です』と言うばかり。
賢く、自分のやるべき事を知り、筋を通すイアンは一夫多妻が許されるにもかかわらずバーバラ以外の妻を持とうとしない。
『今まで娘しか授からなかったがバーバラに男子が授かるまでは子種はバーバラにやると言っている。だからバーバラも男子を身籠るよう日々努力を怠るでない。若くおれ、客人の訪問が無くても寝る間際まで毎日コルセットを締めて体型を崩すな。』と妻に対しきつい物言いをするが、彼女曰く『裏を返せば子を孕むには高齢となった私に"この先もお前一筋だから綺麗でいてね"と言っているようなもの』だそうで、一見噛み合わない夫婦は他人にはわからない硬い絆で結ばれている事を物語る。
幼少より国王になるべく厳しく育てられ、どんな政治手腕を見せるかはまだ未知数。
学者たちにより叩き込まれた帝王学から作られた未来の王に、最後の最後に優しさを擦り込んだのは他でもないバーバラなのかも知れない。
望んで出会った訳ではない。
大恋愛の末結ばれた訳でもない。
しかし此処にも"出会うべくして出会った2人"がいる。
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