見上げた空は満天の星空。
群青や藍を混ぜたような夜空に浮かぶのは無数の星。
小さなベルがいくつもいくつも鳴っているような気さえする美しい光の瞬きは、幾千年も昔から変わらない景色なのだろう。

この国では命を全うした人は星になると言われている。そんな星になった人々が年に一度地上に還ってくると言う星まつりの日に…それも、あと数分で終わろうとしている23:50。
漸く会うことが叶った愛しいひと。

星たちの光は愛する人の瞳と少し似ている。
彼女…アーリア、の瞳からも綺麗な星の瞬きによく似た“音”を感じる。
瞼を伏せる度に星が降ってきそう。
あんなにもキラキラとしていて…。

頰に触れ、指で優しく瞼をなぞる。
長い睫毛の先にも光を載せて…“なんて美しいのだ”と、思わずため息を漏らす。

すると不意に視線が絡んだ。
それが合図だったかのように互いが互いに距離を縮め吸い寄せられるように唇が重なる。

『いつか俺たちも星になるのなら…２人並んで輝く星になりたいな』
唇を離し、その柔らかな唇にもう一度小さくキスしてそう呟いた。
星まつりの行事に忙しい恋人同士がやっと会えたこの数分を静かに見守る星々のように…若い恋人達を見守る愛の星座になりたいと…言ったら君は笑うだろうか？
でも、英雄の星よりも、正義の星よりも、２人で１つの愛の星座で居られる方がずっと俺らしいと思わないか？

…なぁ、アーリア。

短い逢瀬。
彼女の家までの短い悪足搔き。
２人で手を繋ぎ、共に見上げた空は満天の星空。