Craig Shannon の物語
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漸く戦が終わった。
同盟国である赤の国と、黒の国との戦は実に多くの国を巻き込み赤の国の勝利となり終戦を迎えた。
その頃わが騎士団は怪我人を含む半数を先に帰国させ、半数は戦場となった黒の国に残り、治安維持に努めた。
未だ荒れ放題の家屋、店などない町。かつての賑わいの片鱗も窺い知る事が出来ないほど荒れた町で、剣を鍬に持ち替え田畑を作り直ぐに食べる事が出来る“二十日大根”や腹持ちのいい“芋”を中心に生き残った者達が飢えることは無いようにと食料確保にも力を注ぐ。
そうするうちに敵として警戒されていた我等に黒の国の民は心を開いてくれたのだった。
国が違えど人と人。
真摯に接すれば気持ちは伝わるものだ。
ある晩、夜の見回りを部下と共にしていた時だった。
ドアのない壊れた粗末な家から男達の楽しそうな騒ぐ声がした。
酒が入っているのだろうか?口笛を鳴らすもの、手を叩くもの…まるで宴会でもしているかのように楽しげだった。
『シャノン卿、酒などの嗜好品は赤の国が全て奪った筈ですが…』
部下が不審がりながら問う。
確かに奪えるものは酒、金品、女…根こそぎ赤の国が奪っていった。
『様子を見てみよう…酒を隠していたにせよ、こんな騒ぎ方をすれば赤の国の目にとまる。そうなれば下手したら全員殺されてしまうからな』
敗戦国の悲しき運命か、ほとぼり冷めるまではこちらとしても大人しくしておいて欲しいのだ。壊れて開いた入り口から部下が声を掛けた。しかしその声も彼らの耳には届かないほど盛り上がりを見せた酒宴だが、首を伸ばし室内を見た瞬間、部下の顔色は白くなり、俺は…怒りで赤くなった。
肩に担がせた剣の鞘に両手首を縛られて、口には布で猿轡をされた全裸の少女が5人もの男達に弄ばれていたのだった。
『その制服は赤の国の騎士かッ!終戦協定を忘れたか!この大馬鹿者がッ!』
部下の制止を振り切って赤の国の騎士を殴った所までは覚えている。
その後、俺は本国に帰還命令が下り久し振りに我が国の土を踏んだ。
陛下は事情を既に知っておられ“クレイグらしくない感情的な行動だったな”と言いつつも褒めて下さった。
それから数ヶ月。
黒の国に残されていた全ての騎士に本国への帰還が許された。
懐かしい部下や同僚の姿に漸く日常が戻った気がしたが、その中に見たことのある顔があった。
幼い顔をした短い黒髪の娘。
あの日…多くの男達を前に涙すら見せず悲しい顔をし囚われていた娘だった。
『シャノン様、その節はありがとうございました。私はアーリアと申します。…どうしてもお礼が言いたくて我儘を言い連れてきていただきました。』
鈴の音が鳴るような声でそう言って彼女は俺の前に膝をつき頭を下げた。
『頭を上げてくれ。アーリア、長旅疲れただろう。わざわざ会いに来てくれただけでも嬉しいよ。…そうだ、今夜は我が家で共に食事をしよう。俺に会いに来てくれた客人としてもてなしたい』
そんな勝手な提案に彼女は恐縮しつつも了解をしてくれた。
城下町にある屋敷に戻れば、伴っていたあまりにも見窄らしい姿の娘を見るや否や侍女のクレアはメイドのエマとミアに風呂の支度と着替えの支度を命じた。
『クレア、彼女は黒の国から俺を訪ねて来てくれた客人だ。最上級のおもてなしをしてくれ』
“黒の国”と聞きクレアはすかさずアーリアに歩み寄り肩を抱いた。
『お辛い思いをされましたね…長旅お疲れ様でございます。お風呂に入り疲れを癒してくださいませ。その間に温かい食事もできましょう…』
主人を置いてけぼりにし、小さな体で客人の背中を撫でながら老婆の侍女は浴室に彼女を案内した。そんな姿を見てクスクスと笑うのは執事のレオナルド。彼もまた白髪の燕尾を着こなす紳士だが、実に有能な執事でこの屋敷の多くを彼に任せていた。
『旦那様のお客様を横取りとは…困った侍女ですが、まぁ…なんともクレアらしいですね。お疲れでしょう、お茶を淹れますので旦那様もゆっくりされてください』
こうして予定にはなかったひとりティータイムを過ごす事となった。
クレアの親切なお節介で、アーリアは見違えるほどに美しくなっていた。
顔や身体の汚れがなくなった真っ白な肌をホルターネックの黒いロングドレスが包み、短い艶々した黒髪にはパールの飾りがついていた。
そして、薄化粧を施され幼い顔が大人びたそれに変わる。
食事をしている最中も思わず見惚れる程に彼女は美しく…例えるなら夜の海のような静かな癒しを与えてくれた。
『なぁ、俺と踊らないか?』
食事の後紅茶を飲みながら彼女を誘う。
『そんな…私、踊りなんて』
ぶんぶんと頭が取れそうなくらい横に振るから、彼女の手を取り席を立った。
アーリアが釣られて立ち上がると見越して…。
案の定立ち上がるアーリアの髪を撫でて、首を振ったせいで乱れた髪を直しつつ、その艶やかな髪にキスを落とした。
まるで抱きしめるように腰に手を添えて、繋いだ手、指を絡めて緩やかでスローなジャズに合せて波に揺れるように踊る。
『…上手じゃないか。とても美しい女性と踊れるなんて俺は幸せ者だよ、アーリア顔を見せて?』
揺れながら真っ赤な顔を上げたアーリア。
長身の俺よりはるかに小さな彼女の上目遣いの眼差しに心臓を跳ねさせて苦笑を浮かべる。
『アーリア、キス…していいか?』
問う低い声に小さく頷き彼女は瞳を閉じた。
その夜、俺はアーリアに恋をした。
胸が苦しいまでに彼女の事しか考えられず、このまま黒の国に帰したくなくて、自分でも呆れたが…想いを彼女に告げこの家に住んだらどうかと、いや…此処に残ってもらえないだろうか…と懇願した。
『こんな汚れた身体で宜しければ、いくらでも差し上げます。しかし、私とシャノン様では住む世界が違うのです。お言葉は嬉しいのですが…』
言いかけてアーリアは一筋の涙を流した。男達に陵辱されても涙ひとつ流さなかった彼女が見せたあまりにも切なく美しい涙にたまらず身体を抱きしめて、捲したてるように心のままに告げた“アーリアの過去も未来も全て愛すると誓う。あの晩あの不幸な出来事など忘れられる程に俺はアーリアを愛で包む。絶対に後悔はさせない。アーリアを絶対に幸せにするからどうかこの手を取ってくれ”と。
アーリアの涙は止まる事なくぽろぽろと目から溢れるが、それを指で拭うと、小さな手が俺の手に添えられた。
『…不束者ですが、宜しくお願いいたします』
その日の夜、月を証人にし…
俺はアーリアの身体に誓いを刻んだ。
その夜に感じたひとつになる歓び、愛する事への胸の高鳴りは一生忘れない。
同盟国である赤の国と、黒の国との戦は実に多くの国を巻き込み赤の国の勝利となり終戦を迎えた。
その頃わが騎士団は怪我人を含む半数を先に帰国させ、半数は戦場となった黒の国に残り、治安維持に努めた。
未だ荒れ放題の家屋、店などない町。かつての賑わいの片鱗も窺い知る事が出来ないほど荒れた町で、剣を鍬に持ち替え田畑を作り直ぐに食べる事が出来る“二十日大根”や腹持ちのいい“芋”を中心に生き残った者達が飢えることは無いようにと食料確保にも力を注ぐ。
そうするうちに敵として警戒されていた我等に黒の国の民は心を開いてくれたのだった。
国が違えど人と人。
真摯に接すれば気持ちは伝わるものだ。
ある晩、夜の見回りを部下と共にしていた時だった。
ドアのない壊れた粗末な家から男達の楽しそうな騒ぐ声がした。
酒が入っているのだろうか?口笛を鳴らすもの、手を叩くもの…まるで宴会でもしているかのように楽しげだった。
『シャノン卿、酒などの嗜好品は赤の国が全て奪った筈ですが…』
部下が不審がりながら問う。
確かに奪えるものは酒、金品、女…根こそぎ赤の国が奪っていった。
『様子を見てみよう…酒を隠していたにせよ、こんな騒ぎ方をすれば赤の国の目にとまる。そうなれば下手したら全員殺されてしまうからな』
敗戦国の悲しき運命か、ほとぼり冷めるまではこちらとしても大人しくしておいて欲しいのだ。壊れて開いた入り口から部下が声を掛けた。しかしその声も彼らの耳には届かないほど盛り上がりを見せた酒宴だが、首を伸ばし室内を見た瞬間、部下の顔色は白くなり、俺は…怒りで赤くなった。
肩に担がせた剣の鞘に両手首を縛られて、口には布で猿轡をされた全裸の少女が5人もの男達に弄ばれていたのだった。
『その制服は赤の国の騎士かッ!終戦協定を忘れたか!この大馬鹿者がッ!』
部下の制止を振り切って赤の国の騎士を殴った所までは覚えている。
その後、俺は本国に帰還命令が下り久し振りに我が国の土を踏んだ。
陛下は事情を既に知っておられ“クレイグらしくない感情的な行動だったな”と言いつつも褒めて下さった。
それから数ヶ月。
黒の国に残されていた全ての騎士に本国への帰還が許された。
懐かしい部下や同僚の姿に漸く日常が戻った気がしたが、その中に見たことのある顔があった。
幼い顔をした短い黒髪の娘。
あの日…多くの男達を前に涙すら見せず悲しい顔をし囚われていた娘だった。
『シャノン様、その節はありがとうございました。私はアーリアと申します。…どうしてもお礼が言いたくて我儘を言い連れてきていただきました。』
鈴の音が鳴るような声でそう言って彼女は俺の前に膝をつき頭を下げた。
『頭を上げてくれ。アーリア、長旅疲れただろう。わざわざ会いに来てくれただけでも嬉しいよ。…そうだ、今夜は我が家で共に食事をしよう。俺に会いに来てくれた客人としてもてなしたい』
そんな勝手な提案に彼女は恐縮しつつも了解をしてくれた。
城下町にある屋敷に戻れば、伴っていたあまりにも見窄らしい姿の娘を見るや否や侍女のクレアはメイドのエマとミアに風呂の支度と着替えの支度を命じた。
『クレア、彼女は黒の国から俺を訪ねて来てくれた客人だ。最上級のおもてなしをしてくれ』
“黒の国”と聞きクレアはすかさずアーリアに歩み寄り肩を抱いた。
『お辛い思いをされましたね…長旅お疲れ様でございます。お風呂に入り疲れを癒してくださいませ。その間に温かい食事もできましょう…』
主人を置いてけぼりにし、小さな体で客人の背中を撫でながら老婆の侍女は浴室に彼女を案内した。そんな姿を見てクスクスと笑うのは執事のレオナルド。彼もまた白髪の燕尾を着こなす紳士だが、実に有能な執事でこの屋敷の多くを彼に任せていた。
『旦那様のお客様を横取りとは…困った侍女ですが、まぁ…なんともクレアらしいですね。お疲れでしょう、お茶を淹れますので旦那様もゆっくりされてください』
こうして予定にはなかったひとりティータイムを過ごす事となった。
クレアの親切なお節介で、アーリアは見違えるほどに美しくなっていた。
顔や身体の汚れがなくなった真っ白な肌をホルターネックの黒いロングドレスが包み、短い艶々した黒髪にはパールの飾りがついていた。
そして、薄化粧を施され幼い顔が大人びたそれに変わる。
食事をしている最中も思わず見惚れる程に彼女は美しく…例えるなら夜の海のような静かな癒しを与えてくれた。
『なぁ、俺と踊らないか?』
食事の後紅茶を飲みながら彼女を誘う。
『そんな…私、踊りなんて』
ぶんぶんと頭が取れそうなくらい横に振るから、彼女の手を取り席を立った。
アーリアが釣られて立ち上がると見越して…。
案の定立ち上がるアーリアの髪を撫でて、首を振ったせいで乱れた髪を直しつつ、その艶やかな髪にキスを落とした。
まるで抱きしめるように腰に手を添えて、繋いだ手、指を絡めて緩やかでスローなジャズに合せて波に揺れるように踊る。
『…上手じゃないか。とても美しい女性と踊れるなんて俺は幸せ者だよ、アーリア顔を見せて?』
揺れながら真っ赤な顔を上げたアーリア。
長身の俺よりはるかに小さな彼女の上目遣いの眼差しに心臓を跳ねさせて苦笑を浮かべる。
『アーリア、キス…していいか?』
問う低い声に小さく頷き彼女は瞳を閉じた。
その夜、俺はアーリアに恋をした。
胸が苦しいまでに彼女の事しか考えられず、このまま黒の国に帰したくなくて、自分でも呆れたが…想いを彼女に告げこの家に住んだらどうかと、いや…此処に残ってもらえないだろうか…と懇願した。
『こんな汚れた身体で宜しければ、いくらでも差し上げます。しかし、私とシャノン様では住む世界が違うのです。お言葉は嬉しいのですが…』
言いかけてアーリアは一筋の涙を流した。男達に陵辱されても涙ひとつ流さなかった彼女が見せたあまりにも切なく美しい涙にたまらず身体を抱きしめて、捲したてるように心のままに告げた“アーリアの過去も未来も全て愛すると誓う。あの晩あの不幸な出来事など忘れられる程に俺はアーリアを愛で包む。絶対に後悔はさせない。アーリアを絶対に幸せにするからどうかこの手を取ってくれ”と。
アーリアの涙は止まる事なくぽろぽろと目から溢れるが、それを指で拭うと、小さな手が俺の手に添えられた。
『…不束者ですが、宜しくお願いいたします』
その日の夜、月を証人にし…
俺はアーリアの身体に誓いを刻んだ。
その夜に感じたひとつになる歓び、愛する事への胸の高鳴りは一生忘れない。
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