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姫氏原雪白は地球を滅ぼす

テスカトルは意地悪く言い放ちながら、王の寝室のような場所に雪白を連れて行き。壁に大きく飾られた黒曜石の鏡をじっと見つめてから、ピタリとその場所に立ち止まれば…。

「やっぱりそっちですかっ!! 雪白はあなたの贄じゃないです」

「あははは、そう喚くな冗談だっ…っていう遊びはここまでにして、お前はもう寝るのだ。良いな、そうでなければ」

「テスカトルさん寝ろって、私、まだ…眠く…な…」

雪白はテスカトルの言葉に、そう最後まで言い返す事が出来ないまま、糸の切れた操り人形のように。寝台にぱたりと倒れ込んでしまうので。そんな光景を唯々じっと、何処か切なげな瞳で見つめていたテスカトルは。

「おやすみ雪白、そして…さよなら、一晩限りの愛しき人よ」と甘く優しく囁くように、言い放ちながら。
 
黒曜石の鏡の中に映り込むもう一人の自分でもある、金のようで銀の髪を後ろで一つに縛った長髪の半身にこう続けて、

「…イツカトル、俺達の領域を害した罪人どもはみんな太陽の為の血肉となったか?」と話しければ。

「テスカトルこそ…。この星の為に贄となる者を見つけたか?」

「…それに関しては、すまないがまだだ」

「そうか? それは残念だな…。今日あたりに、肉欲に狂った愚かもの達が贄を連れて、ここに来ると思ったのだが…。俺の予知も外れる日があるみたいだ」

そうイツカトルと呼ばれる青年は鏡の中で、ケラケラと意地悪く笑いながら。獰猛な獣のように鋭い赤い瞳で、別側面のテスカトルを射抜くように睨みつければ。

テスカトルはそれに対抗するように、ケラケラと同じように笑って。

「マジかよ、ヤベェな。俺とお前の感も鈍るなんて…今回の贄はそれだけ星の為には良いって事だな。お前もそう思うよな?」

「…嗚呼そうだな。俺もお前と同じ思いだ、だからこそ。姫氏原雪白を見つけたら、二人で殺そう」

「そうだな…。この星の為に、必ずこの手で…」

テスカトルは悪役のように言いながらも、心の中では。

(必ず、お前を殺させはしない…。可愛くてか弱い小さき人よ。お前は俺の事をよく知らぬが、俺はお前をよく知っているのだから)と呟き。

イツカトルからは絶対に見えない位置で、静かに眠る雪白の頬を、優しく慈しむかのように、静かに撫でるのだった…。
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