ディビットはこの星で、ただ一人の存在だった。
だからこそ、独りぼっちが嫌だった。

でもそんな彼を救ってくれたのは、人ではなく神であるテスカトリポカだった。

そう彼……いやかの神がこんな……どうしようもなく、どうしようもないディビットに手を差し出してくれた。

──そんな人にとっては、何でもない些細な事象に。

人から 端末（ 天使）に書き換えられたディビットは、使える筈の外なる神から、全能なる神の神官であり共に歩む相棒として存在出来る事を心の底から嬉しく思っていた。

──だからこそ、かの神が突然言いはじめる。

「よぉ、ディビット。たまには休息も必要だろう？　このオレからお前にピッタリな物やるよ」とそう、慈しむかのような優しい声音で悪びれず宣言する言葉に。

「そうか、それは助かるな……丁度休もうと考えていたから……」と彼の 時間（ タイムライン）に合わせるように、手にしていた本を静かに閉じながら淡々と、無感情な声音で刻むように言葉を紡ぐ。

──何故なら、言葉に自分の感情を乗せたら。

思いっきり甘えた声で、 外なる神に知られてはいけない（ 口に出して言ってはいけない）。

『オレをぎゅっと抱きしめて、オレの頭を撫でて……、オレの頬に優しくキスをして、オレを貴方のモノ家族にして欲しい』などと、無駄にしかならない願い最も夢見る希望を吐きそうになるから。

デイビットは今日も一人その想いを心の中で抱えながら、独りぼっちの残酷な世界を生きる。

でも、この 残念な世界（ 独りぼっち）は嫌いじゃない。

──むしろ、何処までも……甘くて、砂糖菓子のように心地よくて大好きだからこそ。

テスカトリポカの隣で今日も居れる事に、嬉しく思いながら。

彼からは絶対に見えない位置で。

「ありがとう……で、今日は何をくれるんだ？」と希望を抱く幼子のように微笑むのだった。