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君こそ僕のアイドル








『母さん!!!!!!』



家に着くなりけたたましく扉を開け放って母親を探す。
ミミロップは外を出歩いたとき必ず足を洗う習慣があるため玄関横の洗面所へと向かった。
リビングに座っていた母親は驚いた表情でこちらを振り返る。いつもは暗い表情でリビングに来ては影薄く座っていた息子が入れ替わったように目を輝かせて帰ってきたのだからそれはそれは驚いただろう。



『母さん!!ミミロップをアイドル事務所に通わせられるかもしれない!!!!』


「なんですって!」



興奮さめぬままテーブルへ腰掛けながら先程貰った名刺と地図を母親の前へ突き出す。
驚きつつ母親はそれを手を取りまじまじと見つめる。
そのタイミングでドライヤーを両手で抱えてミミロップが帰ってくる。ドライヤーが使いこなせずいつも僕がしてあげているからだ。
きょとんと僕と母親を見つめるミミロップは母親が手に持つ先程男から貰った名刺を見て僕の方を見て笑った。


『ミミロップ良かったなぁ…僕のミミロップをみんなに見てもらえるぞ』


「あんたこれ騙されてはないでしょうね?」


『大丈夫だよ!!!……きっと』




自分自身この現実に実感が湧いておらず自信がない。
だがこのチャンスを逃すわけには行かずミミロップの手を引いて握りしめる。
母親は呆れたように笑って「頑張ってあがいてみなさい」と励ましの言葉をくれた。
今思えばミミロルを捕まえた時からふたりの仲の良さを見てきた母親がどんな無理を言ってもこうやってミミロップのアイドルへの道を咎めたことはない。できる限りの協力はしてくれたし無理なときは他の助言をくれたりいろいろな情報を調べてくれたりと決して突き離しはしなかった。
そんな母親へ感謝の言葉をかけてからドライヤーでミミロップの足元を乾かす。濡れていた毛を乾かすとふんわりと触り心地が良くなる。指で濡れた箇所がないか確かめながら毛が痛まないようにドライヤーを離して小刻みに横に振る。ミミロップが熱くないようにという計らいでもある。
息子のその様子を見て母親は無邪気にミミロルと遊んでいた頃とは変わったんだな、と実感する。ただ一心にミミロップを愛してアイドルとして輝かせたい、それだけを考えているのだろう。




「お腹空いたでしょう?ご飯にしましょう」



『そうする、ミミロップのスキンケアするから出来たら教えて』


「わかったわ」



そう言葉を交して立ち上がる。ミミロップに手を差し伸べるとミミロップは手を重ねる。そのまま立ち上がらせ自室へと向かった。




「そのエスコートの上手さを人間の女の子にしてあげればいいのに…」



と聞こえないように呟いて母親はまた呆れたように笑った。






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