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君こそ僕のアイドル





「さあ!!各選手のアピールタイムが終わりました!!!!どの選手も会場をとても盛り上げる素晴らしいパフォーマンスでしたがここからは投票タイムです!!!今回のコンテスト、光り輝くトップアイドルはどの選手になるのでしょうか……!!!おっとおおお!早くも投票の集計が終わったようです!!!それでは発表させて頂きます!!今回のコンテストの優勝者は………!!!!」





















とある雲一つない快晴の日。
僕は公園でぼーっとベンチに座り込んでいた。公園では子供やその親がポケモンたちと一緒に走り回ったりじゃれたりそれぞれ遊んでいた。そんな平和な光景を、僕は表情1つ変えずに真顔で見ていた。
それには理由がある。おっとその前に僕の自己紹介をしておこう。
僕の名前はセラ。高校3年生になった。趣味はポケモン達の世話。甘いものが好き。これ以上何も言うことがないような男だ。
そんな僕は高校3年生になってとある悩みを抱えていた。
僕の通っている高校はポケモン用のアイドル学校と世間からは呼ばれている。簡単に言えばポケモンのアイドルを育てる学校。
この高校を卒業した生徒は次々にポケモンのアイドルを作り上げ今のテレビを盛り上げているような人たちが多い。
僕はそんな人達に憧れてこの高校に進学をした。が、世の中はそんなに甘くはなく高校3年生になった今も僕は成果一つ出せてはいなかった。そんな僕を他の生徒は嘲笑い最近では学校に居づらくなりつつあった。
それが僕の今の悩みであり公園にぼーっと座り込んでいる理由でもある。


ぱひゅん



と特徴的な音がして僕の腰につけていたモンスターボールが開く。僕の目の前に光が溢れる。
光に包まれて出てきたポケモンは僕を心配そうに見つめていた。
もふもふした長い耳、引き締まった腰のラインと、もっちりしたお尻、目はくりっと潤んで、眉を下げている。




『ミミロップ……。』




僕の相方のミミロップ。小さいときにたまたま親が片付け忘れたモンスターボールを外へ持ち出して野生のミミロルに投げつけてたまたまゲットしたポケモン。
だが、思いのほか仲良くなり今までもミミロルと一緒に成長をしてきた。
最初は一緒に遊んだり一緒に寝たりと僕の成長と生活を共にしていたが、中学生になりポケモン勝負の世界に入った僕らは勝っては喜び負けては悔しがった。
その甲斐もあり、高校入学前には立派にミミロップへと進化を遂げた。進化をした僕らは喜び合ってミミロップにアイドルになろうと夢を託した。ミミロップも僕の期待に答えようと僕の考案をした理想の体型、仕草、身だしなみ、歩き方など努力を尽してくれた。
そうして高校に入学して様々なコンテストやアイドル事務所への面接を受けたが、結果は惨敗。
僕以上にミミロップは落ち込んでたくさん泣いていた。僕の期待に応えようとしていた分落選する度に謝るようにたくさん泣いた。
そんな姿は見たくなくて必死に僕もミミロップの為に親に頼み込んでバイトを始めた、その資金でミミロップのスキンケアやスポーツジムなどできる限りのことはしてきた。
こんなにも美しくミミロップは成長したのに、と目の前にいるミミロップを見つめる。
コンテスト以外のときは衣装を纏っておらずそのままのミミロップのスタイルが見える。先程も言ったがスタイルは抜群だ。もし人間ならば今すぐ取って喰いたいくらいには欲情ができる。
僕の膝に手をついて顔を覗き込むミミロップ。無意識ながらのその行動は人間の男にはなかなかグッとくる。妄想でミミロップの谷間が見えそうだ。そんな邪念を頭の中で払いながらミミロップの頭を撫でて笑いかける。





『ミミロップ、大丈夫だよ。次のコンテストに向けて頑張ろう』



「ルルルゥ………」




小さく頷いて僕から離れるミミロップ。
僕も立ち上がろうと腰を上げてミミロップを見ると大きな耳の隙間から人影が見えた。
咄嗟に声をかけようとした時には遅くミミロップとその人はぶつかってしまった。
人にぶつかったことに驚いてミミロップは飛び上がって僕にしがみついた。
慌てて僕はその人に謝る。



『す、すいません、大丈夫ですか?』



「ぁあ、大丈夫。君のミミロップの耳がすごく柔らかかったから」



ぶつかった男性は手を軽く振ってそう言った。
僕はそう言われてしがみついているミミロップの耳がふんわりとしていることに気付く。
いつもお手入れしているが手で感じる感触とは違うことにも気付いた。
ミミロップはちいさな声で鳴く。きっと謝っているのだろう。
相手の男性は顎に手を当ててうーんと唸った。ミミロップを舐めるように上から下へと、下から上へと見つめる。ミミロップはいたたまれないように僕の後ろへと隠れてぎゅうと腕にしがみつく。




「君のミミロップ、アイドルか何かを目指しているのかい?」


『え?あ、はい!アイドル学校へ通って将来はアイドルデビューをさせたいと思っています』



「なるほど…。」



そう言ってまたミミロップを食い入るように見た。
ミミロップは半泣きで震え始めている。コンテストでもここまで見つめられることはないから戸惑っているのだろう。だからといって見ないでくださいとも言えずにただ口を開くのを待った。



「…良ければ僕の事務所にこないかい?」




『…はい?』



「いやね、僕これでもアイドル事務所立ち上げてるんだけどなかなか見込みのある子がいなくて今は3人しかアイドルがいないんだよね。その3人もそれぞれ海外への活動が決まってもうすぐで旅だってしまうからそのあとのアイドルを探していてね」



『僕のミミロップ、見込みありますか?!』



「そうだなぁ……磨ききれてないだけだと思うよ、これから磨いてみてどう輝くかは、この子次第かな」




僕の顔は笑顔になる。
笑ってミミロップの手をぎゅっと掴んだ。ミミロップは涙目で驚いて僕を凝視している。
興奮冷めぬままそのままぶんぶんとミミロップの手を上下に揺らしてミミロップに言う。





『ミミロップ!やっぱり僕のミミロップはアイドルになれるよ!』




驚いてはいたけど徐々に笑顔になっていくミミロップ。僕に合わせて手をぶんぶんと降ってぴょんぴょん跳ねた。
小さい頃の喜ぶと跳ねる癖は抜けてなかったようだ。
僕達ふたりを見て男の人はうんうんと頷いていた。
そのあと僕は男の人から名刺と事務所の場所を書いた紙を貰ってその場は解散。
軽い足取りで家へと向かった。
ミミロップも珍しく鼻歌を歌いながらスキップをしている。
それをじっと見ていると本当にアイドルになれるかもしれないんだ、と心が弾む反面どこか痛くも感じた。
なぜかはまだわからない、けれど昔からそばにいたミミロップをポケモンとして戦わせるだけでなくみんなを癒やしたり笑顔にしたり何でもできるアイドルになれることを知った僕はミミロップが適役だ、と感じたのだ。
途中にあるショーウィンドウに映る自分を見て耳のもふもふを整えるミミロップは本当にポケモンなのかと疑うくらいに女の子だった。







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