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あなたのハートを盗ませて





巷で噂の怪盗バード。
その怪盗は貧富関係なく価値が高いものから低いものまで主に宝石類を狙って盗みに来る。
いつも犯行予告をわざわざ宝石の近くへと置いて、その次の日の夜の24時に防犯システム、警備、何もかもを華麗にかいくぐっては声高らかに闇の中へ消えていく、というまるでどこかで見たような怪盗である。
その怪盗の正体は長年追いかけている警察官でも分からず、なにかボロを出さないかと事後の部屋や物品を穴が開くほど捜査するだけで誰にもわからない闇に包まれている人物なのだ。





『あーーーー、怪盗バードってかっこいいよねぇ……』



「だよねぇ……仮面を取ったらイケメンなのかなぁ……」



お昼下がりのぽかぽか陽気。
そこに高校の制服を着た女子が2人がベンチに横に並んで座ってお弁当を食べていた。
ひとりはこの物語の主人公のツバキ。女子高生2年目だ。ロングの髪をお下げに結んでもぐもぐとお弁当の中身を頬張っている。
もうひとりはその友達のユキである。高校1年生からの仲で今でも移動授業もご飯も一緒に食べているのだ。ショートの髪が見た目を活発に見せている。
ふたりの共通の話題のひとつに怪盗バードがあり、それをきっかけに仲良くもなった。
憧れでもある怪盗バードの妄想をしてはいつでもきゃーきゃーはしゃいでいる。



『ジグザグマも怪盗バードのこと好きだもんね』



ツバキがそう話しかけると近くでご飯を食べていたジグザグマがこちらへ向いて尻尾を振った。
それをユキはクスクスと小さく笑ってお弁当箱に残ったブロッコリーを口へ運んだ。もぐもぐと噛んでいると視界の端でキラッと何かが光った。
ユキがそちらへ目線を向けるとツバキの首元にキラリと光るものがぶら下がっていた。



「あれ、ツバキちゃんネックレスなんか付けてたっけ」



『ん?ぁあこれね!!おばあちゃんからおさがり貰ったんだけどこれも宝石だからもしかしたら怪盗バードが私ごと盗んでくれるんじゃないかなーって!』



「あはは!それで付けてるんだ、でもツバキちゃんが盗まれちゃったら私が寂しいよーー!!」



『じゃあそのときはユキも盗まれようね!!!』




などと抱き合う2人をジグザグマはきょとんと見つめているのであった。
















-----次のニュースです。またしても怪盗バードの予告状が届いた模様です。場所はーー



『ふぁあー…また怪盗バード…。』


お風呂へ入ってリビングでテレビを見ながらボーッとしているとジグザグマが隣へ座って腕に顔を押し当ててくる。甘えたいサインである。
適当に頭をわしゃわしゃと撫でながらも視線はテレビのままニュースを見ている。ジグザグマは尻尾をこれでもか、と振りながら目を細めて気持ちよさそうにしている。
怪盗バードはどうやらツバキと同じ市内にある高層ビルの最上階の社長室にあるという宝石を盗みにくるという。
場所はさほど離れてはいない。きっと明日の夜はヘリコプターの音や記者や警察が怪盗バードを捕らえに騒がしくなるだろう。
そんなことを思いながらあくびをひとつしてジクザグマの頭をぽんぽんと叩いた。




ピルルルルル…



その時ツバキの携帯がなった。机に手を伸ばして画面を確認する。着信はユキからだ。タップして通話に出る。
ユキは電話に出たツバキにだいぶ興奮したように話しかけてきた。



「ツバキちゃん!!テレビのニュース見た?!怪盗バードがとうとう私らの家の近くにくるんだって!!」



『うんうん、今見てるところ。駅の近くの高層ビルだよね!あそこいつも警備員いるけどすごいところ狙うよねー』


「あはは!でも実際また犯行予告置かれてるからそんなでもないんじゃない?」



『あ!たしかに!!あはは!』




怪盗バードが近くに来るということで芸能人感覚に喜ぶユキとツバキ。
しばらく笑いあっては一息ついてからユキはとある提案をツバキに上げた。



「ねえツバキちゃん!」



『んー?』



「明日の夜怪盗バードがくるビルのところに行こうよ!」



『ええ?!ほんとに言ってる?』


「当たり前だよーせっかく近くに来るんだからもしかしたら遠目にでも怪盗バードが見れるかもしれないんだよ?」



『まぁ、たしかに…』




ユキは至って真剣にツバキに諭す。
ツバキはその提案にうーんと悩みながらキッチンにいるであろう母親を横目に見る。深夜に家を出るとなると親は黙って行かせてはくれないだろう。だからといって付き添ってくれるわけもない。
だがやめようと言って納得してくれるとは思えないしこの機会を逃したくもない。
確かに怪盗バードがこんなに近くに来ることはなかった。次いつ来るかもその時に見にいけるかもわからない。
悩みに悩んで、行くことを決意した。
返事を返すとユキは嬉しそうに笑って明日の段取りを話しだした。どうやらもう計画済みだったようだ。
そのことに少し苦笑いをしながらも心の中では明日を楽しみにしている自分もいるのであった。







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