Turn Your Love Around
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「ばっかみたい!」
あかねと名前、口調も言葉も全部そっくりだった。
前者は言葉と同時に素手が出る、拳を突き合わせなければ会話もまともにできねーのかと悪態ついてやりたいくらいだ。
あっちこっちで結婚の約束ばかりしている男だと呆れてるんだろう。
一方後者は「ただ見知ったの男の名前を言うだけでトラブルから避けられるのに、なんで頑なに交渉に応じないんだ」という苛立ちがあった。
「嫌なら断んなさいよ!」
道場の真ん中で取っ組み合いをしながらストレスをぶつけてくるのはあかねの方だ、それも上手い事全部避けるのが乱馬。
「だいたい、だらしないのよ!シャンプーといい、小太刀といい!」右ストレートが飛んでくる、「あんたがハッキリしないのが悪いんじゃない!」今度は下から蹴りが入る。
「それともなによ…あんた、ほんとはあの子の事好きなんじゃないでしょーね!」
「いってぇ!」
突き上げた拳が上手い事乱馬の下顎にクリティカルヒットした。
骨でも砕けたんじゃないだろうか、じんじんと腫れてうまく言葉が喋れない。
「ふあ、ふぁふぁへぇ…」
一発かましてやって気分良くなったのか、フンと鼻をひと鳴きすると、あかねはそのまま背中を向けてずかずかと歩き出し、道場を後にしてしまった。
乱馬は口を抑えながら、もごもごと言葉にならない声で叫んだ、誰が誰を好きだって言うんだ!
別に名前と今でも結婚したいなんて夢みたいなものも抱いていないし、余計な男女トラブルが増えるくらいなら勘弁願いたい。
でも認めたくはない…彼女が唇を許した相手が自分だけでなく、よりにもよって覚えのあるあの『子ブタくん』だったとしたら、そりゃなおさら!
しかしこういう時に限って、お得意の方向音痴も発揮してくれず、乱馬はしとしとと雨が降る日につまらない授業の最中にふと窓の外を見て、やたら目立った番傘の男を見つけてしまうのだった。
「やい、子ブタくん」
番傘とやたら嵩張ったリュックサックを背負う後ろ姿はよく目立つ、放浪の旅と称した壮大な迷子の挙句全国津々浦々渡り歩いた先で買った土産物でいっぱいなのだろう。
子ブタくん、と乱馬のお調子な声で呼びかけられた青年はビクリと肩を震わせ、わななき、振り返って叫んだ。
「乱馬、きさまぁ!」
しかし、しとしとと雨が降る中ではお得意の番傘攻撃もない、なるべく体を濡らすまいと露出の少ない足をちょんと傘から出して蹴りを入れようとしてくるくらいだ。
理由は知っている、雨に濡れると互いに困るからだ。
「会うなり人をおちょくりおって!」
「なんだよ、久しぶりの再会だってのにちょっかい出してきたのはおめーの方だろ」
飛んだり跳ねたり、傘を持っていたってその度に水しぶきが跳ね上がる。
乱馬はわざと大きな水たまりを狙って着地をした、それを『子ブタくん』は上手い具合に避ける。
「お前の考えはわかっとる!」わっはっはバカめ、と子ブタくんが大きな水たまりを大股に回避した。
「バカはおめーだ」
残念ながら、すぐ横を通った車が水たまりを跳ね上げて、思い切り水を被ってしまったのだった。
「ぶきぶき!」
乱馬はうるさく鳴く黒い子ブタをつまみ上げた、これこそまさに『子ブタくん』の正体。
よほど悔しいのか、雑につまみ上げられた子ブタは体を激しくねじって、乱馬の腕にがぶりと噛り付いた。
豚にしてはやけに鋭い歯が腕の一番柔らかいところに食い込む、「いってぇ!」と喚いて、思わず自分の傘まで手放してしまったのだった。
「……あれ?」
さっきまで小雨だったのに、今ではすっかり視界が曇るくらいの土砂降り模様だ。
鬱陶しさを覚えながら帰路についていた名前は、道端に転げた真っ黒い落し物を見つけた。
子ブタだ、それもたんこぶまみれで気絶している。
ふと中国で見た青年を思い浮かべて、慌てて抱きかかえた。
でも…と思い直して、濡れた子ブタの体をそっと撫でる。
「乱馬くんね…」
そんな簡単に奇跡なんて訪れるわけもない、今は雨も激しくなっているし、何かの拍子に傘を手放してずぶ濡れになってしまったのだろう。
それもこんな視界が悪い日に、小さい体で歩いていては通行人に蹴られてしまっても仕方がない。
はあ、とため息を吐いて、家まで連れて帰る事にした。
お湯をかければカップラーメンみたいに戻る、父親に気付かれれば何て言われるかわからないが、帰ってくる前に家から追い出してしまえば問題ない。