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「私との婚約を正式に解消したいなら、かならず今日1人で体育倉庫に来なさい」
そう言うもんだから、しつこいほどつきまとう生徒らや自らの許嫁たちを懸命に払い、命からがら体育倉庫に来てやったのに、当の呼びつけた本人は平然と「そんな簡単に解消するわけないでしょ」と言ってきたのだ。
「あのなぁ!俺がここまで来るのにいくら命を落としかけたか!」
「自分で蒔いた種じゃないの、どこでも誰でも女とみりゃ結婚申し込んじゃって」
「そもそもそれは俺のせいじゃねぇ!」
「それにここまでわざわざ人がいないところで話してやってるのも、全部乱馬くんのためなんだから、感謝しなさいよ」
「はあ〜?」
名前は意地悪そうな顔をして、腕を組みながらそう言う。
「ガールフレンドたちにバレたら困るでしょ?」
「なにがだよ」
人差し指の腹を見せてきて、そのまま乱馬の鼻にあてる。
それからそれにぐっと力を入れてきて、そのまま引っ張り上げた。
「ブヒブヒ」
「………ふぁ?」
ふっふっふ、あの子供の頃に嘘をついて騙してきた時と同じ笑い方をする。
「呪泉郷に落ちたんでしょ。だから水に濡れると子ブタになっちゃうわけだ」
「………」
呪泉郷に落ちたから子ブタになる?
名前はまるで乱馬を組み敷いてやったかのように意地悪い笑顔でいる、まさかコイツは呪泉郷の呪いが『泉に落ちた者は皆子ブタになる』と思ってるのか?
それに気付くと今度は反対に乱馬がくつくつと笑い始めて、しまいには腹まで抱えた。
まるで今までのうのうと騙されていた子供の頃の事をぜんぶ仕返しでもしてやった気分だ。
でも…とふと思い返して笑いが止んだ、どうして名前はそんな勘違いをしているんだろう。
「そもそも、なんでおめぇ、子ブタになるって知ってるんだ?」
名前は素直に答えた、父親の会社の辞令で中国の呪泉郷へ行った時、ガイドに言われた話を。
あの泉はしばらくは誰も訪れなかった、ところがつい最近になって修行と称して2人の日本人親子が訪ねてきたという。
それが乱馬たち早乙女親子というなら、あの子ブタくんは彼らの見知った顔に違いない、なぜならあのガイドは子ブタくんが訪れる前に言ったのだ、「前にやって来た親子2人がここで修行した聞いて、また日本人客がやってきた」と。
その彼自身が自分たち家族の目の前で子ブタになったのだから、当然泉に落ちた早乙女親子だって子ブタになるはずだ。
そして名前は家族ともども、その『子ブタくん』の行方を探している。
事の経緯はよーくわかった、そしてその『子ブタくん』とやらに心当たりがない訳じゃない、だけどまた新しい疑問が浮かんだ。
「なんでオメーはその『子ブタくん』とやらを探してんだ?」
「なんでって…その、お礼がしたいからよ」
「お礼ねぇ…」
あんまり納得も行かなかった、その辺の川で溺れていたのを助けてくれたって言うんならまだ合点がいく。
なのに名前が言う礼とは「日本に帰るきっかけを与えてくれた」というものだけだ、そもそも掘り下げて尋ねればすでに彼女ら家族は子ブタくんに対して感謝の印だとコテージに招いてもてなしているじゃないか。
すると名前は観念したみたいにため息を吐いて、「謝りたいの」ぶっきらぼうに言った。
「私、あの子に悪い事しちゃった」
「なんだよ、まーた適当な嘘ついて騙したんだろ」
名前はムッとする。
「そうよ、アンタと合わせて、これで2人目!」
まさかあんな子供だましのイタズラに、年頃の男が引っかかるなんて思ってもみなかったわ…なんて言葉を言えばもっと自分が悪者になる気がして、ごくんと飲み込んだ。
一方の乱馬はそう言われてますます困惑した、一体俺と『子ブタくん』にした悪い事ってなんなんだ、心当たりがあり過ぎてさっぱり見当もつかない。
だけどもしも…それが子供だましの嘘やハッタリなんかではなく、俺がこの年になるまでずっと思い出として心の中にしまっておいたあの出来事…つまり去り際に『キス』をしてくれた事を言うのであれば、それって…。
「……やなこった」
「はあ?」
「その子ブタくん、心当たりはよーくあるけど、ぜぇったい教えてやんねー!」
かくして乱馬は、たった1人の思い当たる人物の名前をさっさと言ってしまえば避けられるべきトラブルに、自ら巻き込まれにいくことを選んだのである。
結局また先日と同じように体育倉庫のドアがこじ開けられようと、そこからいくら殴られようとも、お好み焼きのヘラでベシベシ叩かれようとも、ついでにチャイナ娘の乗るママチャリに轢かれようとも、これだけは心に誓った。
俺は絶対に名前なんて教えない!