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「ねえ乱馬くん、聞きたいことがあるんだけど」
名前が後手を組んで乱馬に近寄った、子供の頃はこんなことなんとも思わなかったけど、なぜか風林館高校に入学して彼と再会してからというものの、少しでも彼に女子生徒が近づいただけで黄色い悲鳴やら冷ややかな視線やらを感じることに2日目にして気づいた。
一方で声をかけられた乱馬は嬉しいやら危険を感じるやら、とくに女子生徒の中でも約2名ほどの視線が食いつくほど痛い。
ところで聞きたいこととはなんだろうか、まさか…と背中に汗が伝う思いがする、頼むから公衆の面前で「あのこと」だけは言ってくれるな。
「な…なんだよ…」
「乱馬くん、呪泉郷に行ったって言ってたじゃない?」
「おう…修行で…それがなんだよ」
「ふうん…」
なるほどね、と名前は呟いた。
また何かホラでも吹くつもりだろうかと思ったが、その後名前は「落ちたの?」と聞く、意図の分からない尋問に胸のあたりががざわざわする。
質問には答えず「えーと」と濁した、すると名前は周りの生徒たちの目を気にして、乱馬に顔を近づけると小声でもう一度「落ちたんでしょ?」と聞いてきた。
隣の席からガタガタと椅子の脚が擦れる音がする、間違いなく誤解を抱いているあかねだ。
それもお構い無しに名前は立て続けにこう質問してくる。
「じゃあ、子ブタになっちゃうの?」
「…は?」
今度はバキ!と大きな音を立てて机が真っ二つになった、せっかく机の中にしまっていた教科書がばさばさと2人の足元に落ちていく。
「この…女の敵!」
最近は乱馬が学校内外問わず女性と関わりがあるたび、あかねや右京に対しては妙な誤解を招く始末だ。
名前はどうすればこの女子生徒2人を撒いて乱馬にあの『子ブタくん』について聞けるのかを考えていた。
4限目の体育の時間、体育館の壁にもたれかかりながら未だ勝負のつかないバレーの試合を眺めていると、同じクラスメートの女子生徒たちが近づいてきてちょっとニヤニヤと含み笑いをしながらこう言ってきたのだ。
「ね〜、苗字さんって早乙女くんの幼馴染なんでしょ?」
「やっぱり小さい頃からナンパな感じだったの?」
一体、何がどうなったらあの騙されやすい純朴な少年が「ナンパな男」だと評されるのか。
それを聞かずとも黄色い声でぺちゃくちゃと喋ってくる、やれ天道あかねは親同士が決めた許嫁だ、ついでに男子生徒と同じ格好をしている久遠寺右京は家業のお好み焼き屋の担保に嫁入りするだの、もっというと同じ町内には中国から追いかけてきた押しかけ女房までいて、高校の先輩の妹にまで手を出しているだの…。
そう言われてよーく納得した、つまりこの乱馬という青年は自分と離れてからというものの、すっかり騙されやすい純朴な男ではなくなってしまったということだ。
「なるほどねぇ…」
名前の頭の中にはある一つの妙案が思い浮かんだ。
次の日の朝、乱馬はまた名前に詰め寄られた。
しかしその手にはしっかりと、そして自分にもよ〜く覚えがあるやたら年季の入った『あるもの』があったのである。
「私、思い出したの」
何をと問いただすまでもない、それは彼女の手で晒された古くくしゃくしゃのノートの切れっ端が証明している。
それは幼い頃の自分が、自分の意思で父親に知恵を賜り、自分の意思で書き示したもの。
『こんやくしょうめいしょ
おれ さおとめらんま は、
苗字名前 ちゃんを、
およめさんにすることを ちかいます。』
そして最後にはご丁寧にも小さな拇印が押されているのであった。
「な、なななな…」
乱馬の背後に殺気が迫る、「そんなもの無効だ!」と言い返しても名前は引かなかった。
「それがそうもいかないのよねぇ」
切れっ端の一番最後の部分から指を離すと、なんとも達筆に「証人 早乙女玄馬」と記されているのである。
そりゃそうだ、なんせ親父と作ったんだもの、あの時の父は初恋に悩む息子かわいさに少し張り切りすぎたんだろう。
「ここに私が拇印を押せば、この書類は正式に婚約をした証明書になる。そしたら、一方的に乱馬くんの方からは婚約破棄することはできなくなるわね」
「あ、あのクソ親父ぃ〜!」
こうしてなぜか名前は自ら率先してこの早乙女乱馬争奪のバトルに参戦することになった。
でも勿論、彼女には本気で婚姻関係を迫るつもりなんてない。
ただ一つだけ、やってほしいことがあるだけだ。