Turn Your Love Around
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名前は俯いたまま、名前も知らない男に手を引かれ、ビーチサイドをひたすら真っ直ぐ歩いていた。
もはや今、「彼氏がいますから」なんて言い訳は使えない、すぐ目の前で壮大な仲違いをしたのだから、どこの誰がどう見たってあれは「破局」に違いなかった。
海水浴場から少し離れたちょうど真裏の海岸は砂浜もなくごろごろとした岩場で歩きづらかったが、日陰で海風も通り涼しい。
この男…ロン毛のナンパ男はこの場所を知っていたのかそれとも適当に探り当てたのか、そんなことをおくびにも出さない様子で自分の隣に座るよう急いてきた。
「あの…わたし、まだ仕事が…」
そう逃げようとするとぎゅっと腕を掴まれて、岩肌に尻餅をついてしまった、薄い布地の水着では当たり前に痛い。
「ひどい男だったね」
「………」
「こんなに可愛い彼女がいるのに」
この男、弱みにつけ込んでこようとしている。
ぎゅっと手を握ったまま、ナンパ男は語り始める、実は最近サーフィンを始めたこと、今日はせっかく海にきたのに波があまりよくなくて乗れないこと、あと最近彼女と別れたばかりだということ。
どれも名前には関係のないことだ、でも男は語る。
「こうしてここで会えたのも、なんかの運命だったのかなあって」
「はあ……」
つまり要約するに、「お互いフラれたもの同士、傷を舐め合いませんか」というところだろうか。
そんな言い方でコロリと落ちるもんか…そう悪態つきながらも、少しだけこのナンパ男に思うことがある、自分が少しでもこんな風にストレートに好意を向けることが出来るならこんなに嫌な思いもしないのに、と。
この男だけじゃない、良牙に言い寄るあのギャルたちだってそう、身近に言えば右京だって自分の思いを言い繕うことなく乱馬にいつも伝えている。
そう言えばわたし、一度も自分の気持ちを伝えたことない。
物思いに耽っていると、ナンパ男は自分の肩に名前の肩をぴとりとひっつけた、お互い晒された素肌は潮風に当てられていたせいか接着剤のようになってしっとりと吸い付き合う。
名前は鳥肌が立つ思いがした、どうして半裸の男とくっつき合わなければならないのか。
同じことを2度も思うなんて、こんな時あかねやらんまが羨ましい、今すぐ自分の腕力を持ってして振り解く事が出来ればこんな奴…とナンパ男を睨み付けた、彼は視線に気がついてニッコリ笑った。
正真正銘の2人っきりだ、邪魔者はいない、来てくれることを祈るばかり。
この居た堪れない状況の中、握られていた手にもっと圧が掛かった、それから砂粒の擦れる音がして、ナンパ男の体重がぐっと名前の肩にかかる。
驚いて手のひらに少し力の抜けた隙を狙って、ねっとりと指同士を絡ませてきた、名前は胸元にじっとりと嫌な汗が伝うのをしかと感じた。
「こんの、ロン毛くそ野郎ーっ!!」
ゴン!と鈍い音がして、名前の目の前にはあのナンパ男ではなく、まるで新品ぴかぴかのサーフボードがある。
ふと視線を下に降ろすと頭にそのボードが打ち込まれたまま岩肌に突っ伏している男の姿、そしてボードの裏からはあの『ダサいバンダナ頭の男』…もとい、良牙が現れた。
良牙はきょとんとする名前の手を引っ掴むと、「早くこっちへ!」と海水浴場とは全く逆方向に走り出した。
ごつごつと岩肌のせいで上手く走れない名前は、良牙の足取りに追いつくのが精一杯で、そんなこと気に留める余裕もなかった。
結局、2人がようやく行き着いた場所はさっきよりももっと人影のない、薄暗い崖下の海辺だった。
とうとうスタミナ切れの名前は深い呼吸を繰り返すと、ぺたりと座り込む、言いたいことは山ほどあるが、今は言葉を繕えない。
ざぷんとさっきよりも少し荒い波が足元で音を立てている。
名前はようやく息が整うと、「なによ」と良牙を睨み付けた。
「名前さんっ」
「かわいい女の子たちと遊んでればいいじゃないの」
良牙は「違うんだ!」とおろおろした、名前は聞く耳持たず、訳があると言われても名前はそっぽを向く。
ぷちんと何かが切れる音がする、良牙は名前の手を無理に取ってそっぽを向いた顔を自身に寄せた、驚いた表情の名前とは反対に良牙は険しい顔をしていた。
「すこしはおれの話も聞いてくれよ!」
良牙は語った、どうして今のいままで名前との約束の日もすっぽかしてここにいるのか、そして女の子にちやほやされると言っても、それはただ自分がゴミ袋を持っているからであって、彼女らからしてみれば自分は『移動式ゴミ箱』としか思われてないだろう…おそらく、という話。
顔を真っ赤にして良牙を目の前に、名前は俯いて、少しだけ笑いそうになった。
「名前さぁん…っ」
良牙はへにゃりと眉を歪めて、今にも泣きそうなくらい真っ赤っかな顔だ、名前は握られていた手をもう片方の手で包みこむように握り返す。
いつもこの顔に誤魔化されている気がしてならない、水をかぶれば豚になるし、いつも乱馬に負けてメソメソするし、男らしさの欠片もない。
「助けてくれてありがとう、良牙くん」
一件落着、ともいかない、ふと気づけばたった2人きりで人気のない仄暗い崖下の海辺。
良牙はふと視線を落としてしまって、目の前に迫る名前の胸の谷間に気づいた、いくら修行の身と言ったって健全な16才、好きな女の子と2人きりでほとんど半裸の状態で肌が触れていれば、当然意識しないはずもなく。
「…なんで目合わせないの」
響良牙16才、またしても人生の岐路に立たされてしまったのである。