Turn Your Love Around
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
お昼過ぎた午後2時、ようやく客の入りも収まったかという所で屋台のすぐ隣のパラソルの下で名前が涼んでいると、若い男が2人組で声を掛けてきた。
小麦色の肌で髪の毛もロングな男たちは、いかにもビーチでバケーションを楽しんでいるボーイズといった感じ、サーフボードを立てかけている場所を指さして「俺たちあそこで待ってるから、お好み焼き5つ持ってきてよ」と軟派な言い方で申しつけてくる。
あんまり気持ちの良い頼み方ではなかったが、これでもお客様なので注文通りお好み焼きを5パック、容器に入れて男たちの待つ場所まで配達に行ったのだが…。
「おねーさん可愛いって言われない?めっちゃ俺のタイプ」
「まだ仕事あるの?終わったらさ、一緒にあそぼうよ」
まんまとはめられた、やっぱりただのナンパじゃないか。
「ごめんなさい、まだ仕事が…」
「えーっ、じゃあ良いっていうまで離さないっ!」
「………」
しぶとく縋るように腕を握られる、こんなときにあかねや右京、ましてやらんまなら簡単に振りほどくんだろう。
人並み以下の腕力しかない自分を呪った、名前はどう言い繕うかと迷った。
「あの、彼氏と来てるんでっ」
「えー、それどんなやつ?」
イラつきながらも、名前は適当にごまかそうとした、なんだったら本当のことを言ってやってもいい、どうせ本人はいないのだから。
「髪が短くて、牙があって、体も鍛えてて…」
「うわあ、ワイルド」
「いつも頭にバンダナしてて…」
「今時だせーな」
「てか、バンダナって、黄色と黒のモザイク模様のやつ?」
「そうそう…って、ええっ?」
名前が驚いている間もなく、ナンパ男の片割れは指さして「きみの彼氏だったら、今ナンパされてるよ」とさらりと言った。
そして確かに間違いなく、その黄色と黒のモザイク模様のバンダナをした牙が生えた短髪の男は今まさにギャルたちに囲まれ、鼻の下を伸ばしている最中だったのである。
名前は目の前の人物が間違いなく良牙だとわかると、ふつふつと怒りが湧いてくる、いったいどういう了見で海水浴場に遊びに来て、ギャルに囲まれ、鼻の下を伸ばすはめになるんだ。
わたしとの約束もほったらかして!
良牙は今まさにこの世の春(今は夏)を謳歌していた、この人生でこんなに水着のギャルに囲まれたことなんてない。
子ブタの体の時は風林館高校の女子更衣室で人気者になったことはある、それはそれで美味しい話だが、男の体でこんなにちやほやされたことは初めてだった。
おれってこんなにモテるんだ…そうにやけていると、空き缶やら食べ終わったかき氷のカップやらを持って囲んでいたギャルたちが、急に蜘蛛の子散らすように良牙から離れた。
「ん?」その違和感は浮ついた彼でもよーくわかる、避けて行くギャルたちの間には、明らかに強烈な怒気を孕んだなにかが…。
「なっ、名前、さんっ…!」
良牙は冷や汗をたらりと流した、一番見られてしまってはいけない人物がいる、しかもかなり怒っている。
「なによ…鼻の下伸ばしきっちゃって…」
「いやっ、その、これにはわけが…」
「女の子に囲まれる理由ってなによ、嘘つき!」
ぱん、と小気味よい音が海水浴場に響いた、名前の平手打ちが良牙の左頬に決まった。
海水浴場は一瞬しんとしたが、そのうちウミネコとさざ波の音が聞こえてくるとあっという間に喧騒を取り戻す、ただナンパな男が彼女にフラれただけ、この辺りではよくあること。
名前は人ごみを掻き分けながらふつふつと湧いてくるばかりで収まりのきかない怒りにやきもきした。
この炎天下の中、どこか頭を冷やす場所でもあればとひたすらに歩いていく、やっと人ごみが途切れていったと思った時、名前の手を誰かがさらりと取った。
「あれっ、右京、名前ちゃんは?」
すっかり体を濡らして帰ってきたあかねは尋ねた、右京はすでに閑古鳥が鳴き始めた屋台の鉄板をうまくヘラで擦りながら焦げ付いたそれを手入れしているところだった。
だけどすぐ側のパラソルにいるはずの名前がいない、右京は「そういえば…」と辺りをきょろきょろする。
「配達に行くって言ったきり、見てへんなぁ」
「配達?」
「そーそー、ほらあそこにあるサーフボードのおにーさんがた」
指差す方にはサーフボードしかなかった。
同じく体を濡らしてさっぱりした顔のらんまはタオルで髪の毛を拭いながら、「どうせ良牙のとこ行ったんじゃねーの」と投げやりに答える。
「良牙?」
「ゴミ拾いのバイトだとよ、若い女どもに囲まれてはしゃいでたぜ」
「のんきなやっちゃ…」
まあでも、と右京は『営業中』の旗を片付けながら、「良牙と一緒におるんやったら、ええわ」とニコニコ顔で言った、らんまとあかねがお互い目配せした。
「おい」
明らかに店仕舞いをしているのに、背後から誰かが声を掛ける。
3人が振り向くと、そこには黄色と黒のモザイク模様のバンダナと目立った牙、それから頬に真っ赤っかな手形をつけた響良牙の姿があった。
「名前さんはどこだ」
そういう彼の隣には、名前の姿は見当たらなかった。