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その日の風林館高校では転校生がやって来ると話題だった。
おまけにそれが女生徒だとわかると男子は盛り上がる。
乱馬は今朝の夢を引きずりながら身の入らない朝のホームルームを過ごしていると、担任が転校生だと教室に引き入れてきた人物に一気に体が凍った。
「転校生の苗字名前くんだ、彼女は以前お父さんのお仕事で中国にいたそうだ」
「よろしくお願いします」
間違いない、彼女だ。
子供の頃はショートカットのハツラツとした子だったのが、髪の毛を伸ばしリボンなんてつけて、すっかり年頃の女の子になって。
「…乱馬、あんた何してんの?」
居候先の末娘であるあかねに、「名前を呼ぶな」とジェスチャーする。
ここ最近、この乱馬絡みでとくに女性関係においてはトラブル続きの様子に、彼女もそれなり察しがついたのだろう、怒りがふつふつ湧き上がるのも抑えて言う通りにしてやることにした。
そう、この場にいる誰かが自分の存在を表沙汰にさえしてくれなければいいはずだ、なんせ随分と昔の子供の頃の話を今更覚えているはずもない。
もうあの頃とは背丈も顔つきも声もまるで全く違うのだから。
「中国と言えば早乙女も同じだな、共通点があるもの同士仲良くできるんじゃないか〜?」
「…さおとめ?」
そんな彼女の反応に、教室内はしんと静まり返った。
もはやこのクラスだけに限らず風林館高校のトラブルメーカーと化した自分が憎い、視線が一直線に集まるのと同時に、まるで草の根を掻き分けるみたいに目の前が開けて、懐かしい様なあんまり見覚えのないような名前の顔と一瞬見つめ合う。
「…乱馬?」
彼女が確かにはっきりと名前を呼ぶと、また教室がどよめいた。
「…し、知り合いか?」
なぜか担任教師が気まずそうに名前へ尋ねる。
乱馬の背中にしっかりと汗が垂れる、そして隣の席に座る許嫁のあかねはますます不機嫌を顔に示して、思いっきり握り拳を作っていて構えている。
「はい、1年間だけ同じ小学校でした!」
名前はニッコリ笑って答える、ただ単純な答えなのに、教室はまた静まり返った。
「…それだけ?」なんて担任教師がもう一度念押しすると、今度は名前が首を傾げて「え?」と聞き返す。
「なによ乱馬ったら、もったいぶることないじゃない」
あかねは握っていた拳を解いて、少しご機嫌のような安堵したような様子でそう言った。
そりゃあ良かった、馬鹿力で殴られることもないし、どこからともなくママチャリで現れた中華娘に責められることもないし、関西弁の自称押しかけ女房にお好み焼きのヘラで頭を叩かれることもない。
でも何か納得がいかない、もしや名前は子供の頃のことなんだからと無かったことにしているんだろか、それともまさか覚えていないんじゃないのか。
朝のホームルームが終わり、今朝からずっと空いていた席に名前が座ると、真っ先に彼女に近づいたのは誰でもない『関西弁の自称押しかけ女房』の右京だった。
ずかずかと迫り来る右京の姿は女子生徒というよりは男子生徒だけど、鞄の中身を机の中へ仕舞い込もうしている名前の机をバンと叩き、何を言い出すかと思えば…。
「アンタ、乱ちゃんのなんなん?」
「へ…?」
突拍子もない質問に、当然名前に答えが思いつくはずもない、それでも右京にはどうしても確かめたい事がある、そう考えているのは多分彼女だけではないだろうが。
当然、今朝方担任教師に言った風に「1年間だけ同じ小学校でした」なんて話だけで済むはずがないとこのクラスメートたちは思っているのだ、とくにこの早乙女乱馬という男の女性関係に関しては。
「なにって…」名前がうわ言のように呟いて、斜め上に視線を流しながら考え始めた、乱馬はまずいと思って彼女の手をグッと引いた。
「きゃあ!」
「あ、あああ、案内してやるよ、ガッコウ!ほら、俺たち共通点があるもの同士だし!な!?」
無理やりに連れ出した先は人目が絶対につかない体育倉庫だった。
真っ暗で密室のそこに女子生徒を閉じ込めるなんて…とも思ったが、人払いをするならこれくらいしなければ風林館高校の生徒たちを振り切れない。
せっかく久しぶりに会えたのだから、喜び合いたいところだが、乱馬にはそんな余裕ぶった態度を取れるはずもなかった。
今日のためにおろしたばかりの制服姿の彼女は子供の頃に会った時よりもずっと大人びていて、ハツラツとした女子小学生の面影はあんまりない。
自分好みの切りっぱなしだった髪の毛はいつのまにか背中にかかるくらいの長さまで伸びているし、笑い方だって簡単に歯を見せてくれなくなった。
「早乙女乱馬くん…?」
そもそも、そんな他人行儀な呼び方はしなかった。
やっぱり俺の懸命なプロポーズなんて無かったに等しいんだろうか。