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夕方過ぎ、乱馬がどこか物思いに耽りながら居候先である天道家に帰るなり、あかねが慌てた様子で駆け寄ってくる。
「どこ行ってたのよ、こんなときに!」と少し怒りも含んだ様子で言ってくるので、「いや…ちょっと…」と乱馬は誤魔化した。
「名前ちゃん、イギリスに行っちゃうんだって!」
話は放課後まで遡る、あかねは今日1日ずっと抱いていた違和感にもやもやしながら帰りの支度をする、乱馬は名前を追いかけるようにしてすでに教室を出ていた。
すると右京があかねのところにやってきて、「なああかねちゃん、聞きたいことあるんやけど」と声かけた。
どうやら右京も名前の今日1日の様子をおかしいと感じていたらしい、機嫌が悪いというか、元気がない。
昨日の今朝でこうなのだから、右京は全くもって思い浮かぶ節がなかった、なぜなら昨日別れた時にはそんな風には微塵も見えなかったからだ。
そう言えば、とあかねは乱馬と職員室まで尾行して行った時のことを思い出す、父の仕事の都合、イギリス、明日…断片的に聞こえてきた言葉を挙げてみると、ひとつの答えが浮かんできた。
「もしかして、名前ちゃん、転校するのかな…」
「ええっ!?」
右京は思わず言った、「それ、良牙は知ってるん!?」あかねはどうしてそこで良牙の名前が出てくるのかと首を傾げる。
だけど理由を事細かに右京に聞いてから、あかねは急いで教室を飛び出した。
そして冒頭の天道家に戻る、こんなときに、と乱馬は拳を強く握る。
玄関に上がる事もなく、そのままくるりとあかねに背を向けて家を出ようとした、「どこいくの!」あかねが引き止める、乱馬は「優柔不断ブタ野郎に会いに行くんだっ」と息巻いた。
あかねにはそのブタ野郎といかいう男がどういうものかは知らないが、「良牙くんに会ったら、これ渡して」と丁寧に折り畳まれた質の良い紙を一枚差し出した。
乱馬はつい昨日に右京と名前とブタ1匹で向かった空き地に走った、空き地にはすでにテントはなかったが、その代わりにリュックサックに荷物を詰めている男の背中があった。
「この優柔不断変態ブタ男!」叫ぶと思った通りにそいつは振り向く、「だーれがブタ男だ!」その人物は紛れもなく良牙だった。
「こんにゃろ…純粋だった可愛いガキの頃の俺の恨み、一発食らいやがれっ!」
一発と言いながら二発、三発と拳を打ち込まれた良牙はそれはもうコテンパンにされた、当然身に覚えのないことで闇討ちを食らうのは許し難いので良牙も応戦した。
殴れば殴り返す、蹴れば蹴り返すの応酬は気づけばあたりが夕暮れを通り越して真っ暗になるまで続いた。
「はあ、はあ…」
空き地に2人の男が倒れこむ、一体どうしていきなり殴られなきゃいけないんだ、良牙は思う。
「…俺は今日を持って名前と婚約破棄した」
乱馬がぼそりと呟く、良牙は驚いてがばりと起き上がった。
そうかわかったぞ、顔じゅう傷だらけでにやりと頬を緩ませる、「さては貴様、名前さんに振られて腹いせにきたんだな」と言うのでカチンときた。
「いい加減にしろよな!」
静かな夜に乱馬の怒号が響く、良牙は驚いて肩を震わせた。
「キスされたって喜んだり、俺と婚約してるってわかりゃ落ち込んだり、名前が旅行に誘ってくれたと勘違いすりゃまたバカみたいに喜んだりしてよ!」
怒り任せに良牙に詰め寄る。
「なのに『俺のことは諦めてくれ』だぁ?」
「そ、それは…、今の俺じゃ名前さんにふさわしくないし…」
「なんでおめーはそーやって逃げるんだよ!」
良牙は額から汗をだらだら吹き出す、別に逃げているつもりなんかなかった、だけど彼女の方から面と向かって好意を示されると自分の言葉で答えを出せなかった。
だって自分はずっと乱馬を倒すことを目標にしてきたし、その挙句に水をかぶれば子ブタになる、おまけに方向音痴で時間の約束は守れない、不幸な話だったらごまんと話すことができるが誇れることなんて今の自分にはなにひとつない。
「そうやってずーっと考えてりゃいいよ、たまにあかねの部屋に忍び込んでブヒブヒ喜んでりゃいいだろーよ、おめーがそれで満足ならな」
「………」
「だけどな、名前は明日でここからいなくなるんだぞ」
「え?」
名前がいなくなる、一体どういうことなんだ。
「あいつ、また転校するんだよ、今度はイギリスだってよ」
イギリスと聞いて、良牙は頭の中に地図や地形すらも思い浮かぶことが出来なかった、だけど日本から遥か遠い国だということはわかっている。
良牙はずっと思い返す、自分は呪泉郷の呪いを受けてからずっと、名前にふさわしい男になるために彼女の目の前から姿を消した。
だけど今度は名前の方からいなくなる、それも自分になにも告げてくれないまま、胸の奥の方が締め付けられる思いがする。
「おれは、おれは…」震えながら唸った、「名前さんが好きだああああ!!」
1人の男の叫びは夜の町に響き渡り、そして溶け込んで、何事もなかったかのように静まり返った。
そんな思いの丈を永遠のライバルと称している乱馬だけは見届けてくれた、そして乱馬はあかねから言付かった例の物を静かに差し出す。
「これは…」
「俺とあかねからの餞別だ、どうするかはてめーで決めろ」
「じゃあな」と背を向ける乱馬、良牙はそれをしかと受け取った、しっかりと丁寧に折り畳まれた上質な紙、細かい文字とカラフルな色彩で構成されている。
これで俺の役目は終わった、乱馬は家にいるはずのあかねのことを思う、これを言付かった時、彼女は優しい目をしていた。
「成田の国際ターミナルは広いのよ」、そう言って渡してきたのは成田国際空港内のフロアマップだった。