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名前が家に帰ると、父親と母親が真剣な顔をしてダイニングで向き合っていた。
帰ってくるといの1番にスーツのジャケットを脱いでネクタイを緩める父がこの日に限ってはきっちり着たまま椅子に座っている。
娘が帰ってきたと分かると父は「名前、ここに座りなさい」と空いた席を指さして言った。
この重苦しい空気を名前はよく知っている、だけど今はもうどうでもいいや、おとなしく言われたとおりに椅子に腰掛けた。
「次の出向先が決まったんだ」
そう、転校が決まって乱馬と別れを告げたあの日もこんな気持ちだった。
次の日の朝、教室中は昨日のテニス大会の話題で持ちきりだった。
教室に入るなり注目を浴び、試合がどうだったとか、言い合いがどうだったとか、人の気持ちも知らないで囃し立ててくる。
名前の姿を見つけたあかねは彼女に近寄ると、まずは自分の代わりに参加してくれたことに礼を言って、それから本来自分がペアを組むはずだった乱馬の粗相を謝った。
「別に気にしてないよ」
「そーそー、良牙に会えて喜んでんだよ、なっ」
「え、良牙くん?」
「………」
まるで無神経な乱馬の言い方に名前はいらっとした、今はその名前聞きたくもなかったのに。
しかし乱馬がそう言うと、周りの人間もまるで口火を切るみたいにペラペラと昨日の試合の様子を囃し立てるのである、主に試合の中身なんかより、『良牙』という男と名前の関係性について。
女子生徒は噂する、「あの2人付き合ってるんでしょ?」「でも早乙女くんの婚約者だから…」、耳に触れるたびにうんざりしてきた。
「そーね、もう伝えることも伝えられたから、もういいかな」
ぶっきらぼうにそう言った、乱馬は少し怪訝な顔をした。
「お望みどおり、婚約破棄してあげる」
バンと机を叩いて、そう言い放った。
予想だにしていない発言に、乱馬自身はおろか、この教室にいる誰しもが驚いて静まり返った。
「ち、ちょっと待ってよ…どういうこと?」
あかねは狼狽える、いや自分の許嫁に関する悩みの種がひとつ解消されるのであれば嬉しい話であることには間違いないのに。
当の名前はまるでやけくそのように「婚約破棄」だの言ってくる、もちろんそれを望んでいたはずの乱馬だって焦りながら「そ、そうだぜ、不意打ちはよくねーよ!」なんて見当違いの言葉で責めた。
そんな様子にお構いなしで、名前は鞄の中からお目当の契約書を引っ張り出す、そして両手でそれを持ち上げると、それぞれ逆方向に手を動かして…。
「ち、ちょっと待った!!」
名前の手がすんでの所でピタリと止まった、大声で待ったをかけたのは乱馬だった。
「なによ、婚約解消して欲しいって言ったのは乱馬くんじゃない」
「あのなぁっ、俺はそんなこと一言も…」
はっ、乱馬は隣にいる現許嫁の顔色を伺った、しかし彼女はヤキモチを妬くわけでもなく、なにか思いつめたような顔で名前を見つめていた。
そうこうしていると始業のチャイムが鳴る、どうやら婚約解消は免れたようだ。
授業中、教師に気付かれないよう、あかねは隣の席の乱馬に小声で話した。
「やっぱり、おかしいわ」なにがと聞く前に「名前ちゃんのことよ」と付け加える。
「乱馬、あんた昨日何かしたんじゃない?」
「…う〜ん」
乱馬には思い当たる節が…たくさんある、テニスの試合中は勿論その前にだって彼女騙すような形で無理に連れて行ったのだから、それは怒られたって仕方がないと思うけど。
だけど、名前は別れ際、子ブタのまま気絶してしまった良牙をテントまで送り届けた時まではどこか幸せそうに見えたはずなのに。
授業が終わると名前は教科書をさっさと自分の机にしまいこんで、教室を後にした。
乱馬とあかねは彼女の背中をこっそりと追いかける、着いた先は職員室、そして自分たちの担任教師のデスクに行って何やら話し込んでいる様子だ。
2人は必死に耳をそば立てる、雑踏の中からわずかに声が聞こえてきた…「はい、父の仕事の都合で」名前が教師に言う、「そうか、しかし次はイギリスなんてなぁ」「なので、急ですが明日に…」と会話が続いた。
乱馬は目をまん丸くした、父親の仕事の都合、イギリス、明日、出てくる言葉の数々に子供の頃に苦い思い出が蘇ってくる気がした。