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ついに5対4、良牙と右京は次のゲームで取れなければこの試合は終わる、絶体絶命のピンチ。
だというのにこの響良牙という男、ペアの不安や焦りも露知らず、呑気に両手でのの字を書いてはぶつぶつと独り言を言っていた。
「名前さんが俺を旅行に誘ってくれた…」ずいぶんとお花畑な頭である、右京は散々その頭をどつき倒して「まだ勝負はついとらんわいどあほ!」と喚いた。
仲違いが起きそうなのは何も彼ら2人だけの話ではなかった。
一方でらんまと名前は女同士で言い合っている、「俺と旅行は嫌だってなんだ!」問題はそこじゃないだろうに、どうしても聞かずにはいられなかった。
「だって良牙くんの方がいいに決まってるじゃないの!」
「な…っ!おめーよぉ、俺はこれでも一応婚約者様なんだぞ!」
「それはらんまくんが勝手に言ってる話でしょ!」
「こ、こんにゃろぉ…っ」
「もうそろそろ試合再開していいかい?」と審判が2人にお伺いを立てる、コートチェンジをし、コイントスでサーブ権はらんまに移った。
もう絶対に優勝は渡すもんか、死ぬ気で勝ってやる、らんまの目には炎が見えた。
良牙も同じく目に炎を灯している、名前からの旅行のお誘いを無下にすることなんてできない、絶対に優勝してやる。
「くらえ、一球入魂!」
ボールとともに高く飛び上がり、思い切り叩きつけるように打った。
並大抵の人間ならそのボールの速さに追いつけるまい、一直線に相手のコートに打ち付けられ、そのままの勢いを残して跳ねた。
「おらぁ!」と良牙が気合を入れて打ち返す、打球はスピードを一向に緩めない、名前が慌ててラケットでボールを打ち返そうとするとその手首ごとと持っていかれそうなくらいの勢いでラケットが飛んで行った。
良牙と右京に1ポイント、だがその犠牲は重たかった、名前はじんわりと痛む手首を抑える。
「きたねーぞ良牙!」
「名前さん、すまない…だが君の気持ちに答えるには負けてもらうしかないんだ」
「寝ぼけたこと言うとらんと次行くで!」
らんまは焦りを感じていた、良牙は調子に乗っている。
そりゃあ根っからの不幸体質であるこいつは普段から自らの不幸をエネルギーにして力に変えている節はあるが、慣れていない幸福に触れると途端に調子があらぬ方向へ行き、エネルギーが暴走するのだ。
それがまさに今、名前はさっきの打球で手首を痛めてしまい相手のレシーブに耐えられるかわからない、しかも自分は女の体だ、このままでは力負けするのは目に見えている。
右京がボールを構えた、らんまの額には汗が滲む…と、ふとコートの外にあるものが見えた。
「おい、名前」
「なによ」
「ちょいちょい」
名前を手招きして呼びつける、何かと思って近寄ると、めいっぱい抱き締められた。
突然のことで驚いた、同じ女同士の体では柔らかくて吸い付くような感覚がする、そして観客席は再びどよめき、感嘆の声が響く。
ところが相手チームはそうは行かなかった、右京はラケットを強く握りしめ、それはもう怒髪天を貫いた。
「さっさと離れんかいこのどあほー!!」
怒り任せの打球は瞬く間にらんま達のコートに吸い込まれて行った、これを待っていた、らんまはにやりと笑った。
「ぅおらぁ、ホームラン!!」
らんまは名前から体を離すと、ラケットを力任せに振り回して、全力でボールを打ち返した。
ボールは相手のコートを超え、観客席を超え、とうとう見えなくなってしまったのである。
「…あ、アウト…良牙&右京チーム、サーティ…」
「誰が場外ホームラン打てって言った!」
名前は初めてらんまの頭をどついた、しかし当の本人は全く持って反省していなかった。
コートの向こうで良牙はほくそ笑む、「悪いが優勝は貰った」サーブ権はらんま達に移った、手首の痛みを感じながら名前はボールをコートに打ち付けた。
未だ0点の焦りなんて感じないほど、らんまは余裕綽々だった、後ろ手組んで口笛ふいている。
「なによ、そんなに私がらんまくんと行きたくないっていったのショックだったの?」
「べつにぃ〜」
なんて気分屋なのだろう、そう思いながら名前はボールを高く投げた…が、コートにとことこと見覚えのある人影が近づいてきて、審判に「ちょい待ってけれ」と声かけた。
「まーたボールさ飛んできて水道管当たっちまっただよ、工事さ進まねぇし、壊すしで迷惑してんだ」
「は、はあ…」
「まあまた破裂すっから、避難したほうがいいんでねーか思って来たけどよ、やっぱこりゃ遅かったべな」
良牙たちの背後には高く大きな水柱が轟音とともに立ち上がり、そしてあっという間に観客席を飲み込んで、コートの中までどっと流れ込んできた。
さっき水柱なんか比じゃない、きっと水道管にはボール2つ分の穴が開いてしまったんだろう、絶え間なく注がれる水流はあっという間に良牙と右京を飲み込んで、そのままプールみたいに大きな水たまりがコートいっぱいに出来上がった。
しばらくしてコートに溢れた水の勢いが止まる、名前は水たまりから勢い良く飛び出て、ようやく顔を水面から出した。
大きく息を吸い込んで体を浮かせると腹の辺りに何かがコツンとぶつかってくる、黒くて丸っこい塊、持ち上げて水面から引きずり出すと見知った黒い子ブタ。
「ふ、ふははは…」
ざばりと勢い良く水面から笑いながららんまが出てきた、続いて右京も水面から顔を出す、2人の目に入ったのは子ブタを抱えた名前の姿だった。
「勝ったぁ!」
今コート上に残ったのはらんまと名前の女女ペア、そして右京と子ブタのペア。
当然、豚の小さな蹄ではラケットは持てまい、つまり相手チームは『ダブルス』では試合続行できないのだ。
「ひ、卑怯や…」と右京は悔しそうに呟いた、そんな卑怯な男を愛してしまっているのだから仕方がない。
「おい!不戦勝だろ!俺たちの勝ちだよな!」
らんまは高いところからコートに溢れた水面を眺める審判に問うた。
審判は顔色ひとつ変えず、静かに言った。
「もうコート使えないので、両者失格です」