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青春真っ盛りであるはずの少女・苗字名前は親の仕事の都合で滞在している中国のある山奥で、水面に顔を映しながらため息をついていた。
この一帯は『呪泉郷』と言われ、なぜかある一定の層に人気の観光地で、湧き出る泉はには呪われた効能があるらしい。
そんなはずあるかとガイドの言う事も無視して水面に触れようとしたら、物凄い形相で制止してきたので本当のことなのだろう。
父親は勤めている商社からの出向で約1ヶ月、このちょうど長期休暇の時期に家族とともにこの観光地に滞在することになった。
この「呪い」が本当なら、とんでもないビジネスチャンスになるかもしれない、そんな露ほども信じられない噂だけを頼りにここまではるばるやって来たわけだが、今の今までその泉を訪れるものは来ない。
名前はつまらないと思いながら毎日を過ごしていた、誰でもいいからさっさと泉に落ちてくれれば日本に帰れるのに…なんて事まで考えたりもした。
そんなある日、なんとはるばる日本から呪泉郷に男が訪れてきた。
年は名前と変わらないくらいのバンダナを額に巻いた若い男、重苦しい空気と大荷物のリュックサックを担いだ彼はここが中国でも秘境の修行場だという噂を聞いてやって来たという。
修行場っていったって一体何しにやって来たんだ、同じ様なことを家族一同が思いながら彼の動向に釘付けだった、そして「頼むから泉に落ちてくれ、そうすれば日本に帰れる!」と祈った。
祈りは届いた、思惑通りに男はばしゃんと水しぶきをあげて落っこちた。
しばらく大きな泡が水面にぶくぶく立って、それが細かい泡に変わると、ちっとも音沙汰無くなってしまった。
呪泉郷のガイドが「あいやー」なんて暢気な声で嘆く、もしかして溺れ死んでしまったのだろうか、呪いってそういうものなのか。
そんな背筋が凍る様な思いをした直後、ざばりと水面が跳ね上がる音がして、さっきの青年よりもずっと小さな影が這い上がってきたのである。
「こ、子ブタ…?」
子ブタ、もとい青年はなんとお湯をかけるとカップラーメンのように元の姿に戻った。
彼は放浪の身だと言うので、名前の父は自分たちが滞在している古臭いコテージに招き、詳しく呪泉郷に落ちた瞬間の話を聞かせてもらうことにした。
食事の席で名の知れぬ彼は呪泉郷に訪れた時の様な殺伐とした雰囲気はなく、真面目でしっかりとした受け答えをしてみせる。
年齢も名前と同じだと聞くと母親は殊更感心をして、斜め前に座る名前の顔を覗き込みながら「こんな子が名前の彼氏だったらいいのに、ねえ?」なんて他人事のように言うと、当の本人があっけにとられるよりも先に、父親の方が大声をあげた。
「何言ってるんだ!俺はな、ぜぇったいに責任はあの男に取らせるって決めてるんだ!」
「まあ、あなたったら。子供のお遊びじゃないの」
「よりにもよって一人娘に…あんなことを…」
そんな夫婦の様子に、客人であるはずの青年は驚いて青い顔をした。
名前は大きく深いため息をついて、気まずさを覚えながら父親に言った。
「あのねー、何回も言ってるけど、あれは私からやったことなの」
そう言い繕っても、酔いが回っている父親には通用しないようで、いいや俺は絶対にあの男に責任を取らせてやるなんてもっと喚く。
もうらちが明かないと思った名前は客人である青年に気を使ってか、まだ皿の上に食事が残っているのも構わず、客人用の空き部屋を案内するのを口実に青年を連れ出した。
「あ、あの…大丈夫かい?」
ベッドしかないような簡素な部屋に着くなり、彼は心配そうにそう尋ねた。
「たまに思い出したようにああやって騒ぐの。あんまり気にしないで」
とは言っても、この青年は納得しなかった。
「気になる?」そう聞くと彼は思った通りにギクシャクする、そんな反応をされるとちょっぴりいたずら心がくすぐられるのだ。
「そりゃあ…親父さんがあそこまで怒るくらいだから…」
「ふぅ〜ん」
名前は履いていたズボンのポケットに片手をしまう、それから好奇心を隠しきれない目をする青年を上目で見つめて、「そうだ、いいものあげる」と藪から棒に言ってやった。
「いいもの?」
「そう、目つぶって」
青年は素直に、悪く言えばバカ正直に目をつぶり、思った通りに片手を差し出してきた。
名前は少しだけ背伸びをして、青年に顔を近づけ、ポケットに隠していた片手を出す。
そしてその片手で狐の形を作り、ご丁寧に閉じられた彼の唇に指先をチョンとくっつけた、そして目が開く前にさっと手を隠した。
「え…」
目の前の青年はゆっくり目を開けて、そして徐々に、ゆっくり、時間をかけて顔を茹だこみたいに真っ赤に染め上げていった。
名前はネタばらしをしてやるつもりで片手を狐の形にしたままでいたのに、そんな反応を見せられたらこっちまで予想外で言い出せなくなってしまったのだ。
「あ、ああああああの、名前、さん…」
これはまずい、名前は慌てて後ろ手にドアノブをひねり、捨て台詞みたいに「おやすみなさい!」と言ってから寝室から逃げた。