Turn Your Love Around
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噛み砕けば良いものを、最後の一粒だと思うと、もったいなくてできない。
名前は口の中でじわじわと甘味は広がっていくのを感じると、血の気が引く思いがした。
「さー答えてもらおうか、なんで俺にこんなもん食わせたのか」
言うもんか、名前は最後の抵抗に口を両手で塞いだ。
「ふぉふぅふぁふぅんふぁ!」
しっかりと本音は喋っているつもりだが、当然伝わらない。
さすがに苛立った乱馬はその固く閉じた両手を力任せにこじ開けようと手首を掴んだ、「痛い!」と名前が叫ぶとその声はよく通ったのか、あかねが走って飛んできたのだ。
「乱馬!あんた何やってんのよ!」
「だって名前がぁ!」
「そうよ、邪魔しないでよ!」
「なっ…」
あかねはムッとした、名前は反対に慌てて口を塞いだ、このキャンディ、ちょっとでも口を開こうもんなら余計なことばっかり言わせて。
「何よ、せっかく助けてあげようと思ったのに!」とあかねが言うと、「むぐぐぐ!」口を塞いだまま応戦した、何かを言えば勝手に言葉が漏れ出る、このままでは最後の1つである飴玉が溶けてなくなってしまう。
もういいからさっさと口から吐き出してしまおうと、名前はさっと両手を離した。
「だいたいね、乱馬!あんたが婚約なんて無責任にするから!」
口論の種はなぜか全く違う矛先に向かった、次にあかねはここ最近のトラブルメーカーである乱馬に怒りをぶつけたのである。
「あのなぁっ、確かにそりゃ俺がチビの頃にしたけど、今はそんなつもりはねぇよ!」
「そうよ、私は乱馬くんなんかと結婚する気は1ミリもないんだから!」
「そうそ…えっ!?」
一瞬、3人の間には微妙な空気が流れた。
まずいと思って口を塞いだ頃にはもう遅い。
「けっ…結婚、する気ないの…?」
「むぐ!」
「ねぇっ、どうなの!?」
あかねや乱馬が詰め寄っても名前はかたーく唇を塞いだまま、しょうがないのであかねは最終手段に出た。
「名前ちゃん…コチョコチョ」
「ひゃははははは!」
脇をくすぐって笑わせると、脇が勝手に開いて、ついでに塞がっていた口も開いた。
「結婚なんてするわけないじゃない!」名前は無理やりに笑いながらそう答える、「だってただの子供同士の約束でしょ!?」それを聞くとあかねはホッとしたようにくすぐるのをやめた。
ただ安心しているのは彼女だけだ、ふと振り向くと、そこにはとてつもなくショックを受けている青年の姿があった。
「らっ、乱馬…」
「お…俺を弄びやがって…っ」
乱馬は静かに涙を流して拳を握っていた。
「なにも泣くことないじゃないの!」
「うるせー!ガキだった俺の純情を返せ!」
「いきなり結婚を申し込む子供のどこが純情だって言うのよ!」
「これでも俺はっ…俺はてめーのことを…!」
子供の頃のお遊びだと大人は言うかもしれないが、あの時の乱馬からすればとても真剣に悩んだことなのだ。
間違いなくあの時は名前の時を思っていたし、離れてしまった後だって彼女のことを考えては眠れなくなったことだって当然あった。
だからこそ、乱馬はものすごく悔しいのだ、ようやく再会出来て募る話もあっただろうに、自分のことはさておいて。
「俺は絶対、意地でも、良牙だけには譲らねーからな!」
「なによ、良牙って!」
「だから、こぶ…」
ハッと気づいて、今度は乱馬が口を塞ぐ番だった。
あかねは疑問符を頭に浮かべた、なぜ今このタイミングでその名前が乱馬の口から出てくるのか、そして反対に名前はぽかんと口を開けて、「りょうがっていうんだ」と呟く。
「ありがとう」
名前は笑顔で乱馬に言った、本当に心の底から嬉しそうな顔だった、きっと飴玉が今口の中に入っていれば間違いなく「かわいい」と言ってしまっていただろう。
それから彼女は口をモゴモゴして、奥歯で飴を噛み砕いて飲み込んでしまった。
乱馬はちょっぴり後悔したことがある、あの飴がまだ口にあるうちに、聞いておけばよかったと思う。
「あのさぁ、お前なんでそんなに良牙にこだわるの?」
思った通りに、「さぁ?」とはぐらかされてしまった。
名前は今日、初めて父親の務める商社に心から感謝を覚えた、浴槽の中でゆったりと体をくつろげながら、とても誠意があるとは言えないような状況で。
「りょうがくん」とまたポツリと呟く、今度会った時に名前を呼んだら驚いてくれるだろうか。