Turn Your Love Around
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
子ブタくん、と呼ばれた子ブタはだらだらと冷や汗を流している。
ようやく部屋の暗さに目が慣れてきた名前はむくりと起き上がり、荒らされた自分の勉強机を見て一気に目が覚めた。
「なっ、なにこれぇ!?」
よく見ると机じゅうに蹄の跡がある、名前は当然怒りに震えた…子ブタは恐怖に震えている。
犯人はよーくわかっている、「子ブタくん…あんたねぇ…」と言ったところでハッとした、「あんた乱馬くんでしょ!」と子ブタを指差して言い放った。
子ブタくんは思わぬ言われように一瞬ぴくりと固まった、果たしてどうして自分が乱馬だと言われているのかさっぱりだったが、その反応が上手い具合に良い方向にいったのである。
「さては婚約証明書を盗みにきたわね!」
ぎくり、これは本当だ。
「男らしくないったら…正々堂々としたらどう!?」
「ぶっ、ぶきぃ!」
なんだと!と子ブタくんは精一杯『早乙女乱馬』らしいふりをした、もちろん子ブタなので言葉は通じない。
「なによ、子ブタのふりすれば言い逃れられると思って!」
「ぶきぶき!」
「今すぐお湯湧かしてくるから待ってなさいよ!」
「ぶっ…!?」
これはまずいと子ブタは固まった、それだけは勘弁してくれと鳴き叫ぶが、名前は構わずキッチンまで行って湯を沸かしに行ってしまった。
このままでは婚約証明書を盗むどころではなく、名前に自分の正体がばれてしまう、夜中に女性の部屋に忍び込んで荒らすという変態的かつ最低な行為をする男だということを。
そうなればいよいよ彼女からは嫌われてしまう、それどころかどういう訳か知らないが自分は乱馬を騙って忍び込んでいる事になっているし、これではますます最低な男に成り下がる…。
子ブタは渾身の力を込めて、カーテンの閉じられたままの窓に体当たりをした。
がしゃんと派手に割れた窓ガラスから小さい体を放り出し、2階から思い切り飛び降りる。
着地した先は手入れの行き届いた芝だった、くるりと体を捻ってうまく蹄を土に食い込ませた、そのまま走って逃げてやろうと思ったのに、なぜかできなかった。
「酢豚の具になる準備はできたあるか?」
「ぶっぶきぃ!」
シャンプーは引っ捕まえた子ブタの体をくまなく調べた、当然お目当のものはどこにもなかった。
今すぐにでも丸焼きにしてやろうか…と考えたが、ガラスの割れた窓からカーテンがそよぐのを見て、「使えない男ね!」と言うと、どこからともなくバケツを取り出して今度は自分の頭に水をかぶった。
名前はしゅんしゅんとケトルが鳴くのが聞こえてくると、すぐに火を止めた。
肌に触れれば火傷をするくらい熱くなったケトルを慎重に持って部屋まで戻ると、開けた覚えのない窓から風が入ってきて、カーテンが外に向かって流れている。
すでにそこには乱馬もとい子ブタの姿はなく、おまけによく見れば窓ガラスが割れていた。
「あ、あのやろ〜…!」
柄にもなく乱暴な言葉が口から出てきた、ぱたぱたと風に煽られるノートたちにますます怒りがこみ上げる。
このままにしていても仕方ないので、蹄のあとだらけの教科書やノートを積んで片付けていくと、視界の端っこで何かが動いたのを見つけた。
もしや乱馬かと思い、慌てて電気を点けて部屋の隅を見た。
「にゃー」
「…子猫?」
珍しい毛色の子猫がそこにいた、毛並みや色艶は良いので飼い猫なのだろう。
どうやら誰かさんのせいで開けっ放しだった窓から入ってしまったらしい。
名前は「おいで」と手を差し伸べると、子猫は威嚇した、でもしばらくしてから何か考えるような素振りをしてから、無害だとわかったのか「にゃあん」と近づいてきて差し伸べた手にすり寄った。
「あはは、かわいい」
積みっぱなしにしていた教科書を片付けるのも忘れて、ひたすら子猫とじゃれていた。
そうしているといつの間にか怒りも忘れて、はあとため息をつくと、子猫の喉を撫でながらぽつりと呟く。
「なんで乱馬くんは子ブタくんのことを教えてくれないんだろう」
子猫の耳がぴくりと動いた。
「教えてくれさえすれば、お望み通り婚約破棄してあげるっていうのに」
すぐ頭上で溜め息を吐く名前に、まるで子猫は「なんでそんなに子ブタの正体が知りたいの」とでも尋ねるように鳴いた。
「やっぱりあんなことするんじゃなかったなぁ」と子猫を抱きしめながらまた呟く、そうすれば今頃はちゃんと彼の名前も知れて、こんな気まずい思いもしないで、それから…。
「ちゃんと、色んな話が出来る関係になれたのかな」
それだけ大人しく聞くと、子猫は鳴きもせず、するりと名前の腕から抜け出してしまった。
驚く間もなく、機敏な動きでさっさと跳んでいくと、あっという間に割れた窓ガラスから姿を消した。
慌てて追いかけた頃には窓の外のどこにも姿は見つからず、部屋にたった一人置いてかれた気分になった。
あともう間もなくで夜更けが終わる頃、猫飯店では誰もいない店内に湯を沸かすやかんの鳴き声だけが響いている。
ちょうど湯上りだったシャンプーは濡れた髪をタオルで拭いながら沸騰したばかりの湯を床に横たわる子ブタに思いっきりかけた。
「あっつつつつ!茹で殺す気か!!」
シャンプーは座った目で全裸の男を見て、空っぽになったやかんを床に放り捨てる。
「やっぱりお前には豚の姿がお似合いね」
わかったらさっさと店から出て行け。
結局、今夜の2人の作戦は決して上手くいかなかった。
婚約証明書がどこにあるのかもわからなかったし、乱馬との婚約を解消することも叶わない。
だけどシャンプーにはわかったことがある、名前は別に乱馬と結婚する気なんて更々ないということ、それから多分、名前は『子ブタくん』のことが…。
そんなことまでこの男に教える必要もないか、とシャンプーはあくびをした。