龍如
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度重なる喧嘩で、常備していたタフネスライトがナンバさんが飲んだ分で切れてしまった。
仕方がないので、最寄りのドラッグストアで1ダース買って来いとお使いを頼まれた一番が、なぜかグレーのレジ袋片手に店から出てきた。
「…おい一番」
足立さんがその袋の中身に気が付いたのは、店を出てから歩き始めて1時間程経った頃だった。
あの後、また横浜流氓の残党やヤクザなどに絡まれて、いよいよ体力切れといったところで、丁度レジ袋を漁ったタイミングだ。
「こりゃあ…どういうことだ」
1ダース入りの箱には、『絶倫王』とエネルギッシュな筆文字で描かれている。
「へっ!?うわぁ…あそこのオヤジ、やりやがったな…」
どうやら、ドラッグストアの店主が誤ってレジに通したらしい。
どうりでニヤニヤしていたはずだあのオヤジ、と一番は顔を赤くしながら、憤っていた。
「まぁ、いいんじゃない?」
「そうは言ったって…、これじゃあ体力回復するどころか、アッチの方が元気になって戦闘どころじゃねぇな」
「ちょっと、気持ち悪い事言わないでよ!」
呑気に言う趙に、足立さんとサエちゃんが続ける。
お使いに失敗した一番は1人レジ袋を片手に、恥ずかしいのか悔しいのか、何とも言えない表情をしていた。
レシートがあるなら返品してくればいいじゃない、とサエちゃんが提案して、一番もその気になっている中、たった1人だけが「うーん」と自分の顎髭を擦って様子を窺っていた。
「春日くん、それ貸してよ」
はてなマークが各々浮かぶ中、一番が大人しく趙に従ってグレーのレジ袋を寄越した。
受け取ったレジ袋の中身を漁ると、厚紙の擦れる音がして、その場にいる誰もが面食らってしまう。
「あー!なんで開けちまうんだよ!」
これで返品交換の望みは絶えた、非難の声には耳も貸さず、趙は黒いマニキュアを塗った短い爪先で1本だけドリンクを引っ張り出す。
金色のキャップに焦げ茶色の瓶、いかにもなラベルをしげしげと見つめ、まさかと思った通りにパキンと音を立ててキャップを開栓してしまった。
「ち、ちょっと…趙…」
「え、えええ…」
私とサエちゃんの声は同時に重なった、誰の目もくれず、趙は喉仏を鳴らしてゴクゴクと一本飲み上げてしまったのだ。
「…んー、やっぱり回復はしないねぇ」
「そ、そりゃそうだろ…」
一番の呆れた台詞も、この元総帥様には効かない。
「みんなもいる?案外イケるよ」なんてオススメされたが、誰一人として手を挙げる者はいなかった。
とりあえずはサバイバーにこの怪しげで重たいだけの精力ドリンク剤を持って帰る事にして、目的のタフネスは後日一番が責任持って買って来る事に決めた。
帰って来るなり、一番が「これって経費に落ちる?」なんてえりちゃんに聞いて、「落ちません!」と顔を真っ赤にして断られるくらいには、笑い話になったと思う。
その後は2階の押し入れに置きっぱなしにした精力ドリンク剤の事なんてすっかり忘れて、みんなバーで盛り上がっていた。
そんな中で、私は自分のスマホを2階に忘れていた事を思い出して、みんなに断って上がったのに、なぜか趙まで「あー、俺も用事思い出しちゃったなー」といつもの調子で付いてきた。
そして2階の部屋に辿り着いた瞬間、なぜか畳の上に押し倒されてしまったのである。
「名前ちゃーん」
酔い潰れでもしたのかと思ったら、吐く息は全くアルコールの臭いを感じない。
「昼間、俺のことチラチラ見てたよねぇ」
ぎくり、井草に擦り付けられている私の背中にじんわり汗が滲むのを感じた。
「一体どこが気になってたのかなー?」
「え、ど、どど、どこって…」
素知らぬふりを続けるしかない、まさか「精力剤を飲んでから、ずっと股間が気になってました」とは言えるはずもない。
趙がサングラスを外して私の唇に自分のそれを押し付けてきた、べろりと唇を舐め回す舌はほんのりと苦みがあった。
畳の上に頭が押し付けられて、首をどう動かしても逃げられるはずもなく、段々と息苦しさよりも頭が痺れるような甘い刺激の方が勝っていく。
指輪のひんやりと硬い感触が私の腰のくびれをなぞるので、びくんと体が跳ねた。
ようやく唇が離れると、酸欠状態で意識がぼんやりする私の視界に、ニヤニヤと笑う趙の姿が映る、その片手には例のアレが。
「コレ?」
パキンとまた音を立てて、蓋を回した。
瓶の中身を一気に口に含むと、飲み下すと思いきや、また無理矢理キスしてきた。
「んーっ、ん!」
一気に入り込んでくるとろみのある液体に、私は慌てて喉を動かした。
変に甘くて、その後にじんわりと痺れるような苦みのあと、鼻に抜ける薬臭さ。
むせて咳き込む私をよそに、趙は自分の唇に僅かに残った雫をペロリと舐めて、「あらら、飲んじゃった?」と他人事のように聞いてきた。
「趙が飲ませたんでしょ!」
「そ、俺が飲ませちゃった」
何が「案外イケる」だ、とてもじゃないけど好んで飲める味じゃない。
唇に残るべとべととした不快感に眉を潜めていると、趙は耳にわざと顎髭を当てて擽り、低く甘い声で囁いた。
「コレね、ただの精力剤じゃないみたい」
「なっ、なにそれ」
「飲むと段々ムラムラしてきて、セックスしたくてたまんなくなるんだよ」
いやらしい物言いに、体がびくりと震えた。
「う、嘘だ、だって趙、何ともなかったじゃん」
「ほーんと。アレでも結構我慢してたんだよ、ホラぁ、触ってみてよ」
趙が私の手を引っ張って、ズボンの股上を無理矢理触らせて来る。
ほんのりと湿っぽく生温いそこは、確かに驚くほどに硬く膨張していた。
私の指先がズボンの布を引っ掻く度に、耳元で趙の息遣いが荒くなっていく。
「ね?名前ちゃんも段々熱くなって来ない?」
趙の黒いマニキュアを塗った爪が、私の臍辺りを服越しになぞって、そのままゆっくり下腹部辺りに降りてくる。
スカート越しから下着のラインを辿るので、ぼうっと頭が熱くなって、何だかいつも以上にピリッとした痺れが強い。
自分の息も上がっていく、大したボディタッチでもないのに、わざとらしく口から吐息が漏れてしまう。
確かに、趙が言う通りかもしれない。
刺激から逃げるように太ももを動かすと、下着の中からくちゅりと音がした。
「あっ、あん、ちょ、う…」
「んー、我慢できないの?悪い子だよねぇ、名前ちゃんは」
お互い様なのか、趙も私を組み敷いて、息を荒くしながら舌なめずりをする。
何でもいいから早く触って欲しい、早くセックスして、この熱を冷まして欲しい。
そう思えば思うほど、体が勝手にうねうね動いて、ますます趙の思う壺になるのだった。
ゴミ箱の中には使い終わって丸まったティッシュと、精力ドリンク剤の空き瓶が1本だけ入っている。
私たち2人はすっかり消耗しきった体力に為すすべなく、彼の腕を枕にして畳の上に寝転がっていた。
喉がカラカラで思うように声も出せそうにない、服すら着ていないけれど、いっその事このまますぐに寝てしまいたいとさえ思う。
それくらい心地が良くて、甘くスモーキーな匂いのする彼の腕に猫みたいに顔を擦り付けると、趙はお返しに額にキスをくれた。
「ねー、名前ちゃん。俺、大事なこと言い忘れちゃった」
なんて軽い口調で言う時は大した事なんてない、そう思って私は返事もろくに返さず、ウトウトと微睡んでいた。
「あのドリンク剤、ムラムラする効果があるって言ったけど、なんか俺の勘違いみたい」
「………は?」
眠気はとうにすっ飛んで、思わず起き上がった。
「だからぁ、あの精力剤にはそういう成分は入ってないんだよねぇ」
まあそもそも、あんなものただの栄養ドリンク程度で、効果なんてほとんど無いに等しいよね。
なんてニヤニヤとまるで悪戯が成功した悪ガキみたいな、腹の立つ顔をしてピースサインを見せてきた。
「だっ、だって趙もいつもより興奮してた…」
「俺の演技、完璧でしょ?」
「……いっ、いつから分かってたの!?」
「1本目飲む前からだけど」
こいつ、私を騙しやがった…いや、騙されやすい自分が悪いのか、思い込みが激しすぎるのか。
「プラシーボ効果ってヤツ?まぁ、気持ち良かったからいいじゃーん」
プラシーボだかなんだか知らないけど、私のミジンコほどのプライドはこの性悪男にずたぼろだ。
もう二度と口も聞いてやらない…背を向けると後ろから抱きしめようとしてくるので、渾身の肘鉄を食らわせてやった。
その日以降、趙はやたらと私に見せつけるようにスタミナンやらタフネスやらのドリンク剤を飲み干してくるようになった。
なので私は、意地でもドリンク剤は口にしないと一番にも言いつけて、ひたすらにコンビニのおにぎりを頬張っていた。
「口の中パサパサにならない?無理しないでタフネス飲みなさいよ」
「ひははひ(いらない)」
体力全回復する前に腹いっぱいになっちまうぞ、という一番の制止も聞くもんか、全部あいつもせいだ。
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