龍如
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俺は人に言わせれば、忠犬みたいなもんらしい。
確かに荒川のおやっさんの下にいた時は、沢城のカシラに鬱陶しがられるくらいには纏わりついていたし、若の面倒を任されていた時なんかは彼の一挙一動に気を配りながら、機嫌を窺っていたので「うぜぇ」と言われていた気がする。
俺はすぐに行動に示すような男で、頭を張れる人間じゃないから、ナンバや足立さんなんかの仲間は別にして、誰かに手綱を握ってもらう方が動きやすく感じるのはわかる。
犬で言うところの飼い主ってことか。
「うーん…」
「なに悩んでんの」
わざとらしく腕組みして唸り声を上げたら、スマホにばかりお熱だった名前ちゃんが反応した、相変わらず視線はスマホに向いているが。
「名前ちゃんは、ツンデレってやつだな」
「なんなの急に」
「昨日知ったんだ、ツンデレ。つんつんしてるけど、たまにデレデレ」
知ってる?って聞いたら、情報が古すぎるなんて捨てるように言われた。
名前ちゃんがスマホを眺めている時間は堪らなく暇だ、最近の若いもんは皆アプリゲームだユッターだ、やることが多い。
俺はろくにスマホも使いこなせないもんで、彼女の隣に寝転んで、スカートの裾をグイグイ引っ張る。
「やめてよ」と少し強めの口調で言われた、だったら俺を構ってくれよ。
畳の上で寝転ぶのも飽きた、名前ちゃんはさっきから飽きもせずよくもスマホだけ弄ってられるよな。
「どっか行こうぜ」って言っても、「行くとこないし」とこっちを見もせずに答える、いっぱいあるだろ、映画館とかバッティングセンターとか。
俺はくすんで雨漏り跡の見える天井を見上げて、考える事もないから、前に犬に似てるってどこぞのキャバ嬢に言われた事を思い出した。
舌出して尻尾振って喜んでるみたい、なんて、どうせ動物に例えられるなら虎とかライオンとかが良かった。
だけどこうやって未だこっちに興味を示してくれる見込みのない彼女を見て思う、俺は確かに犬だ、それもあんまり躾のなっていない方の。
「ワン!」
「…えっ、どうしたの、一番」
「へへ、ビックリしただろ」
突然犬の鳴き声を真似したら、名前ちゃんがようやくこっちを向いてくれた。
「なんで犬なの?」
「いや、昔キャバ嬢に犬に似てるって言われたなーって思って」
「…あっそ」
「お、ヤキモチ妬いた?」
ゴツンと固まった拳が頭の真上に沈んできた、ちょっと痛かったけど、その後名前ちゃんの手がわしゃわしゃと髪の毛を混ぜるみたいに撫でてくる。
「これってツンデレ?」と聞いたら、「アメとムチ」と言われた。
やっと名前ちゃんの手からスマホが離れて畳の上に、その両手で俺の自慢の髪の毛を全力で掻き乱してきた、強めの指圧が少し痛い。
「じゃあ首輪とリードつけて外歩かせればいいの?」
「名前ちゃんだったらいいぜ。ついでに『これは苗字名前の犬です』って書いときゃ、浮気防止になるかもなー」
「…アホか」
少しムッとした名前ちゃんが俺の頬を両手で抓る、そんなの嘘に決まってる、他の女に手を出される予定なんてあるはずない。
でも俺は名前ちゃんをいつもスマホに取られてるんだぜ、もしかしたらユッターでワケの分からん男とやり取りしてるのかもしれないと思う事だってある、そんなの不公平だろ。
名前ちゃんの唇が俺のささくれだらけの唇に強くぶつかった、俺は驚いて少し油断したけど、離れようとする彼女の頭を抑え込んで、唇に緩く噛み付いた。
犬だって大好きな飼い主を舐め回すだろ、舌で唇の膨らんだところをなぞって、吸い付いて、またべろんと舐めた。
「ほら、飼い主が構ってくれねーから、運動不足なんだってよ」
散歩に行こうって言われてももうおせーぞ、そう言いながら畳の上に組み敷いても、名前ちゃんは何にも言わなかった。
だから俺は首の後ろにかぶりついて、その後柔らかい耳たぶをペロリと舐めた。
猫みたいな甘えた声が彼女の口から洩れる、やっぱり飼い主の言う事なんか俺は聞かないから、忠犬なんかじゃなく、躾がなってない犬なのかもしれない。
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