親の心、親知らず
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「あたし、大江戸卍會・特攻隊長の苗字名前。14歳。夜露死苦」
大広間の座敷の真ん中で胡座を掻いて、反省の色も無しに自分の肩書きを述べる少女。
大人3人、それも当局のトップ3に囲まれても、彼女は今自分の置かれた状況が分かっていないようだった。
「ああん?特攻隊長ぅ?テメーゆうべまで単なる族のクソガキのツレだったじゃねーか」
「だからあたしが捕まった仲間の分まで走ってやってんだよ、弔いだよ弔い」
「なるほど、じゃあ1日特攻隊長って訳だな」
「そゆこと」
1日特攻隊長ってなんだよ、人気アイドル起用したPRキャンペーンかよ、大体仲間死んでないし。
「おい近藤さん、あんまり甘やかすんじゃねーよ。コイツは慣例通りに拘置所に送るぜ」
「そんなに厳しく当たるなよ、トシぃ。ちょっとヤンチャしただけだ、若気の至りってヤツだよ」
な?と宥める近藤に、沖田が口を挟んだ。
「ただ相当な騒ぎを起こしたのは事実ですぜ。お上に話が行くのも時間の問題でさぁ、コッチとしてもこれ以上恥かく真似は出来ねぇ」
「うーん…」
「前科前歴上等だよ!さっさとワッパかけろやオラァ!」
尚もギャンギャン吠える、肝が据わっていると言えば良いのか、それともただのバカなのか。
コーラのまだ沁みた目を押さえて考えあぐねていると、少女・名前の上着のポケットからメロディーが聞こえてきた。
ポケットから取り出したのはあの「リュウジ」との仲睦まじいプリクラがぺたりと貼られたスマートフォン。
名前はさも普通に、当然のように通話ボタンを押した。
「あ、ママー?どしたー?うん、うん。えっ、いいよーあたし遅くなるから。今?あのねー、しんせんぐみのとこー」
えっ、普通に言っちゃうの?
成人男性3人が呆気に取られている最中、名前は急にスマホを近藤に「ハイ、ママが代われって」と渡してきた。
怖いものでふいに渡されると、まるで自然な流れのように受け取って耳を傾けるのだった。
「あっ、どうも夜分遅くに失礼いたしますぅー、真選組局長の近藤と申しますぅー」
お世話になっておりますぅー、と口走ってしまうのは日本人の悪癖なのか。
近藤はそのまま彼女のスマートフォンを肩で挟みながらゆっくり静かに襖を閉めて廊下を出て行ってしまった。
取り残された男2人はお互いに見つめ合った、名前は我関せずと毛先の枝毛を弄る。
「…おい、テメー寺子屋にはちゃんと行ってんだろうな」
「あ?なんで答えなきゃいけねーんだよ」
ペッと唾を吐き捨てる、どうやら土方の話は聞いてすらくれないらしい。
「ところでお嬢ちゃん、その髪色いい感じじゃねーかぃ、美容室でも行ったんでさぁ?」
「あ、これ結構いいっしょ?あのね、寺子屋の医務室にあったオキシドールでダチとやり合ったんだよね、上手くない?」
「………」
しかし沖田の話には上手く乗せられる、話が上手いという事なのか、感性が違うのか、単純に嫌われてるのか。
給食が旨いとか、夜に遊ぶので授業中は常に寝ているとか…とりあえずは寺子屋に通っている節はあるようだ。
そんな話に花咲かせている間に近藤が部屋に戻ってくる、さっきまで顔にピッタリくっ付いていたスマートフォンを名前に返すと、その袖口でしっかり拭かれたので思わず「あっ、ごめんね…」と傷ついた様子で謝った。
「名前ちゃん、ちょっとお母さんと色々相談して、処分について結論が出た」
名前はその真剣な様子に「何だよ」と強気な姿勢を貫いているが、やはりどことなく身構えた様子で視線が泳ぐ。
やっぱり何だかんだと言ってもガキはガキか、と土方は少しだけ情けを覚えた。
「暴走族の集会に入り浸って、寺子屋では授業中に居眠りしたりサボッたりで成績も良くないらしいな。こういうご時世だから、このままだと就職もままならないんじゃないかって、お母さんも心配していたよ。さらにこうやってお縄にかけられた訳だろ?」
「うう……」
いつの間にか足を正しく組んで座り直している名前は大人しく近藤の話に耳を傾ける。
「このままじゃお母さんも安心できないし、名前ちゃんだって自立した大人になれない。そこで…」
「………」
「ウチで預かって面倒見ることにした!」
はあ?
「お、おいおいおい、ちょっと待ってくれよ近藤さん。うちは駆け込み寺じゃねーんだぞ、わかってんのかよ」
「まあまあ落ち着けよトシ、いいだろ?若手の隊士養成だと思えばさ、ホラ最近は女性の社会進出ってのが積極的になってきたワケだし、ウチもそろそろそういう次世代的な組織に変えていけなきゃいけないからな」
「まー、そのへんの男連中よりは肝座ってまさぁ。単身でママチャリ乗って本丸にぶっこんで来るくらいには」
肝がすわってんじゃねーよ、ただのバカなんだよコイツは!
土方は大声でツッコミを入れたくなったが、当の話の中心である名前はいやに大人しく、どうしたかと思えば緩くダボついたドカンをぎゅっと握りしめて下唇を噛みながら俯いている。
一体どうしたとギョッとしていると、彼女は「く…くやしい!」と思いを吐露した。
「よりによってあたしたちの仲間のカタキであるポリ公の下僕になるなんて…!」
「えっ、いや別にその気持ち分からなくもないけど…なんていうか…うーん」
そんな壮大なスケールの物語なのか、何回も言うけどお前の仲間別に死んでねーし。
お門違いな屈辱に苛まれている名前を尻目に、話はどんどん膨らんでいく、いつから此処に住居を移すのかとか、女性サイズの隊服はいつ頃発注するのかだとか。
近藤と沖田の両名が話を好き勝手に進めていると、「あ」と思い出したように近藤が土方の肩をポンと叩いて、さも当然のように言ってのけたのだった。
「トシ、名前ちゃんの教育係ね。夜露死苦ぅ~」
綺麗なユニゾンが響いた。
「はあ!?」