Ma Petite Menteuse
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日曜日の午後1時。ちょうどランチタイムのピークを迎えている喫茶ポアロのカウンターキッチンでは、安室が完璧な手際で何度目の注文かもわからないナポリタンを炒めていた。
フライパンの上でケチャップの香ばしい匂いが漂ってくるが、彼の頭の中では、およそ喫茶店の一店員とは思えないほどに冷静で緊迫した思考を張り巡らせていた。
(…午後1時、か。確か、あの映画の上映開始時間は午前の部で10時20分から。情報では上映時間は128分とあったが、そのうちスタッフロールが6分から8分と仮定すれば、12時10分には既に映画館から出ているはずだ)
安室はフライパンをリズミカルに煽りながらも、目は鋭く、壁に掛けられた時計をちらりと気にした。
(あの『塾生』を装った連絡員と、暗闇に紛れて情報の受け渡しを行っているはずだ。ミステリー映画を選んだのも、劇中の爆発音や悲鳴を利用して、会話や物音を掻き消すためかもしれない…。
普通の高校生のデートなら、この後は昼食を共にし、ショッピングや他の場所へ向かうのが普通だろう。しかし、もし二人が『接触を終えた直後の工作員』だとしたら…?)
もはや、今の彼の脳内では、二人が青春を謳歌する高校生であるという事実すら安室の頭からは消え去っている。完璧に出来上がったナポリタンを真っ白な皿の上に盛りつけながらも、彼は着々と核心に迫りつつある。器用にトングで飾るように、具材がはみ出す事もないまま。
(周囲の目を欺くため、接触は最小限に留める。情報を受け取った後は、尾行を警戒して即座に単独行動に移るはずだ。…もしこの後、彼女が真っ直ぐ帰宅したとしたら、僕の推論は確信に変わる…!)
「すみません、梓さん。ケチャップがなくなってしまいました。買い出しに行ってきます」
「はっ?このタイミングでですか!?」
◇
名前はとにかく、自宅に早く帰りたかった。幽霊の身を良い事に映画の鑑賞料も払わず、空いている隣の席に堂々と腰掛け、そして上映終了後も映画館を出て、名前に憑いて歩いてくる。
挙句の果てに、ひたすら延々と先程観たミステリー映画の感想を語り尽くした後には、作品へのダメ出しまで交えてくる始末だ。
《ただ視覚的な演出だけを派手にしただけで、ミステリーとしては三流》だの、《しかし、こじ付けや粗の見える作品でしたな。やはりあれだけの派手な演出からの、子供だまし程度のトリックでは、私ほどのマニアには少々物足りないところが…》と、あの捲し立てるような話し方に、とうとう女子高生は我慢の限界だった。
「…もう!おじさん、うるさいよ!!」
帰り道の往来で、名前は人目も気にせずに背後に付き纏う中年男性に怒鳴った。
「一体、どんな作品なら納得しておすすめできるわけ!?」
《…名前ちゃん、そういう話は…》
火に油だぞ、と諸伏が言い切る頃には遅かった。彼女の不用意な一言は、『オタク特有の早口スイッチ』を見事に押し切ってしまい、待ってましたとばかりに、ミステリーマニアの幽霊は目を輝かせた。
《よくぞ聞いてくれました! ミステリーの真髄とは、視覚的なショックではなく、論理の美しさにこそあるのです! 例えば1957年の名作『情婦』! あるいはヒッチコックの『裏窓』! 最近のCG頼りの映画とは比べ物にならない緻密な伏線が…おおっと、これを語るならまずはアガサ・クリスティの映像化作品群から紐解く必要がありますな!》
水を得た魚のように、いや、成仏の機会を自らドブに捨てるような勢いで、映画のタイトルと蘊蓄を怒涛の如く語り始める。
先ほどの映画館での独り言など序の口だった。
◇
「へぇ~。おじさん、小さな映画館をするのが夢だったんだ?」
自宅マンション近くの米花商店街前。平日はそれなりに人通りの多い通りが、個人商店は軒並み店休日でシャッターが閉まっていた。
ミステリーマニアは映画の話も散々語り尽くしたのか、グレース・ケリーが初恋だったという告白から、なぜか身の上話に話題が流れていく。
もともとは米花商店街で、父親の代から継いだ小さな電気屋を営んでいたという。しかし郊外に出来た家電量販店の存在から段々と仕事も薄くなっていき、五十歳を跨いだ時に一念発起、自らの夢を叶えるために事業を畳んで店内を改装した。
ミステリーマニアのかねてからの夢…それは“ミステリー映画だけを上映し続ける小さな映画館”。
その昔、近所にある古い映画館が閉店した時に引き取り、自身の腕で修復した古い映写機と、趣味で集めていたミステリー映画のフィルム。それを日夜上映しながら同じ趣味を持つ者同士で語らいたかったのだ。
しかしながら、その夢を叶える途中で脳梗塞で倒れ、映画館が開かれることは一度もなかったという。
「ミステリー映画だけ、か…。みんなで犯人を予想しながら観たりするのも、すごく楽しそう」
《フフン、そうでしょう?本来映画館と言うのは私語はご法度ですが、ミステリーというものは他人と共有してこそ味わい深くなるものなのです》
そう鼻を鳴らし、名前と諸伏の前を先導するように閑散とした商店街内を歩いていく幽霊。そうして彼はあるシャッターが閉まった店舗の前でピタリと歩みを止めた。
看板は庇の内側から漏れ出た雨水が悪さをしたのか、錆の回りがひどい。それでもそこがかつては電気店として営まれていたことだけはわかった。シャッターには番号式の南京錠がチェーンに繋がれてかけられている。
「もしかして…この中に、おじさんの集めたフィルムと映写機があるの?」
《その通り! 中には私の宝物……極上のミステリー映画のフィルムと、手入れの行き届いた最高級の映写機が眠っています!》
幽霊は誇らしげに胸を張り、深く、そして力強く頷いた。
《番号式の南京錠の暗証番号は『0915』。…そう! お分かりのとおり、ミステリーの女王、アガサ・クリスティの誕生日にちなんだ数字!さあっ、遠慮せず私のコレクションをご覧くだされ!》
《…いやいやいや! 待つんだ名前ちゃん! いくら店主本人の許可があっても、立派な不法侵入になっちゃうから!》
「え…でも…」
《まあまあ、お堅い事をおっしゃらず!さあ早く遠慮せずに!今見てくれなかったら今後一生お嬢さんに付き纏い、ミステリー映画という映画の結末すべてをネタバラシしてやりますからね!!》
「わ、わかったってば…見るだけね…」
現代の法律でも裁けるか裁けないか、ずいぶん怪しい脅しを仕掛けてくる幽霊の勢いに名前は南京錠のダイヤルを回し、言われるがまま、『0915』に合わせた。
その光景を、人知れず建物の影から鋭い眼差しで捉えていた男がいた。
◇
再び閉め切られたシャッターの中は埃っぽく、電気店の名残なのか鼻を刺激するようなオゾンの匂いが立ち込めていた。
スマホの頼りない光が薄暗い店内を照らし出すと、そこには埃を被ったレトロな映写機と、スチール缶に大切に保管された無数の映画フィルムが所狭しと積み上げられている。
「…す、すごい、映写機なんて初めて見た。このフィルムぜんぶミステリー映画なの?」
スマホの眩い光がスチール缶の縁に反射し、キラリと鋭い光に変わる。名前は一歩、二歩と足の取り方を慎重にして、余計な配線やコレクションに躓いてしまわないように奥へと進んだ。
《ええ、そうですとも!これこそが私が生前心血を注いだ、『秘密の映画館』の舞台!…もっとも、それも青写真でお終いとなりましたが…》
まるで自分の子供を自慢するかのように胸を反らし、フィルムの缶を愛おしそうに指先で映写機の横っ面を撫でた。
そんな事はよそに、彼らの背後では国家の安全を守るべき存在だったはずの諸伏が、《ああ…やっちまった…完全に不法侵入だ。俺は女子高生の空き巣行為を止められなかった…。せめて指紋は残さないで…》と、自身の不甲斐なさに頭を抱えて嘆いていた。
《…いつかここで、同志たちと夜通しミステリーを語り明かすのが夢だったんですがね…》
「……おじさん…」
そんなしんみりした空気に水を差す様に、背後のシャッターがガチャンと微かな金属音を立てた。
「!」
名前が振り返るよりも早く、スッと無音でわずかに持ち上げられたシャッターの隙間から、しなやかな黒豹のような影が店内に滑り込んできた。それからすぐ、強烈なスマホの光が真っ直ぐに彼女の身体を照り付ける。
「……そこまでだ。大人しく両手を上げろ」
名前と幽霊であるミステリーマニア、そして諸伏までもが恐る恐るとゆっくり両手を上げる。地を這って足を凍てつかせるほどの重たく、底が冷える声。
「『デッド・ドロップ』のポイントか、あるいは何かしらの機密情報の隠し場所か…。休日の昼間の商店街という、あえて人目のつく場所を隠れ蓑にするとは、恐ろしく大胆で計算された手口だな」
「………」
冷徹で鋭い視線を差し向け、照らされた電気屋の跡地を読み取るように這わせる。喫茶ポアロの店員であり、私立探偵の『安室透』というよりも、もっと別の、国家の安全を守るために危険対象を追い詰めた『降谷零』の顔が名前の前に晒された。
…が、数秒ほど店内を見渡し、映画フィルムの入ったスチール缶が所狭しと乱雑に埋め尽くされているのを見て、しばらく固まった。
(な…なんだこれ…?)
アタッシュケースに入った札束でもなく、最新鋭のサーバーでもなく、違法な銃器でもない。極めつけは、中央に鎮座するレトロな映写機。
「あ、あああ、安室さん…!?」
《ぜっ、ぜぜぜ、ゼロ…!?》
かたや、ただ幽霊に急かされただけの女子高生は、探偵としての師匠であり、バイト先の意中の先輩である存在の突然の登場に、顔を真っ青にしていた。
年頃の女の子らしく、『お父さんとお母さんには言わないでください』や、『学校には通報しないでください』とか、将来への不安と親からの失望が目まぐるしく最悪の形で頭の中に巡っていく。
だが彼女は選んだ言葉は、フィルム缶に触れようとする安室の指先が見えた瞬間、咄嗟に出たシンプルなものだった。
「そのフィルムに触っちゃダメ!!」
フィルムの缶へ伸ばしかけていた手が、ピタリと空中で静止した。
「…そ、それは、ミステリーマニアのおじさんが大切にしたものなんだから…、そんなふうに乱暴に触らないでっ」
暗闇の中、スマホのライトに照らされた名前の顔には、工作員が任務を妨害された時の冷酷さなど微塵もない。
ただ純粋に『他人の大切なものを乱暴に扱われたくない』という、年相応の必死さと焦りが浮かんでいるだけだった。
(……ミステリーマニアの、おじさん?)
安室はスマホのライトを下げ、警戒に満ちた鋭い視線をゆっくりと手元のフィルム缶へ落とす。
スチール製の古びたケース。印字されたタイトルは、名作と名の知れたものから、カルト映画だと揶揄されたような作品まで、クラシックなミステリー映画ばかりがずらりと並ぶ。何か細工がされている跡もなく、どこからどう見ても、ただの年代物の映画フィルムだ。
「…フィルムを観たいなら、観てもいいけど…。どうやって観たらいいのかわからないし…」
挙句の果てには間の抜けた提案をしておいて、映写機の使い方すらわからないという女子高生。その背後では、幽霊たちが《映写機の使い方でしたら、この私が…》《ゼロっ、頼むから余計な勘違いはしないでくれ…!》と騒いでいることなんて、当然知らない。
安室の目の前には、堂々と不法侵入しておきながら悪びれもしないで、埃っぽい空き店舗で古びたフィルムとともに誰かを思いやるように立ちはだかる名前という少女の姿だ。
「……はぁ」
空き店舗の中に、今日一番の、そして心の底からの特大の溜息が響き渡る。頭痛を堪えるように片手でこめかみを強く押さえた手をゆっくりおろし、安室はゆっくりとスマホのライトを下げる。
その表情には、捜査官としての冷徹な仮面は残されていなかった。
「……いいですか。いくら今は使われていない空き店舗とはいえ、勝手に鍵を開けて入るのは立派な不法侵入です。警察に見つかったら、ただじゃ済みませんよ」
「う…すみません…」
淡々と説教の言葉を連ねる声の調子は、新人アルバイト店員を叱るほどに甘く優しいものではなかったが、目の前の非行寸前の少女を突き放すような冷たい温度でもない。
ただそれだけを言い終えた後、安室の視線は部屋の中央に鎮座するレトロな映写機へと向けられた。また溜息をひとつ落として、ライトをつけっぱなしにしたスマホを床に置き、ゆっくりと映写機の前まで歩み寄る。
「昔、映写技師の方にお会いした際、少しだけ触ったことがあります。……これがその、ミステリーマニアのおじさんとやらの大切なものなら、壊すわけにはいきませんからね」
そう言いながら、安室は古びた映写機を指で撫でて積もる埃を払った。
彼自身、どうしてこんな女子高生の気まぐれに乗る気になってしまったのか、見当もつかない。しかし、今彼の胸中には、ついさっきまでの警戒心はどこにも残っていない。
「…観たいのは、どのフィルムですか?」
安室は少し慣れない手つきで、思い出す様に映写機のリールを回す。
そのしなやかな動きを見ながら、名前は彼の問いかけに一拍分遅れて、頭の中にふと思い浮かんだタイトルを口にした。
「……『裏窓』……」
◇
古い映写機がフィルムを巻き取る小気味良い駆動音だけが、空き店舗の埃っぽい空間に響いている。 暗闇の中、一直線に伸びた白い光の帯が、スクリーン代わりの白い壁に淡い色彩の映像を映し出していた。
中身の入ったフィルム缶の位置に気を取られながら、名前は自分の足跡の残る床にゆっくりと腰掛ける。
「どんなお話なんですか?」
膝を抱えて小さく丸くなる背中に、安室はふと目を背けるようにして、映写機の光源が反射する先の壁に視線を送る。
「…主人公のカメラマンは足を骨折していて、部屋から一歩も動けない。だから、暇潰しに窓から向かいのアパートの住人たちを観察し始めるんですが…ある夜、向かいの部屋で奇妙な出来事を目撃してしまうんです」
《ただの覗き見趣味が、やがて恐るべき殺人事件の疑念へと変わっていく!『部屋から動けない』という絶対的な制約と覗き見の背徳感こそが、最大のサスペンスを生む装置なんですよ! 》
「ここから先、カメラは主人公の部屋から一切外に出ません。観客も主人公と同じ視点、同じ情報量しか与えられない」
《だからこそ、向かいの部屋で起きている不可解な出来事が、とてつもなく恐ろしく感じられるのです!》
「そ、そうなんだ…」
生きている探偵と、死んでいるミステリーマニア。 見えている世界が違うはずの二人の解説がクラシックな映画を通じて見事なまでにシンクロし、ひとつの会話のように成り立っていく。
スクリーンから目を離さずに、低く穏やかな声で名前の耳に落とし込むように話を続けた。映写機が規則的な音のまま、数分経ったあたりで彼もリールから手を離し、ゆっくりと名前の隣に腰掛けた。
「安室さんも、この映画、好き…?」
膝を抱えたままの名前が、ふと彼の横顔を窺いながら、独り言を呟くように尋ねる。安室は少し考えて、白い壁に投影されるグレース・ケリーの横顔をなぞるように視線を這わせながら、フッと笑った。
「ええ。好きですよ」
そう言ってから、隣の少女に視線を移す。
「限られた状況の中から、論理だけで真実を手繰り寄せていく。探偵としては、非常に興味深い作品ですからね…それに…」
「それに?」
「……いいえ、何でもありません。ほら、スクリーンの方を見ていないと。君は『探偵見習い』なんだから」
揶揄うようにくすりと柔らかく微笑む彼の表情に、名前の目がほんの少しだけ映写機の光に充てられたみたいに潤む。
今の彼女は、さっき同い年の男の子と観に行ったミステリー映画と同じほどに、目の前のスクリーンに心惹かれることはなかった。けれど、犯人を勝手に話してくれても、トリックを種明かししてくれても、別に構わないから、ずっと隣で話していて欲しいと思っていた。
(ずっと、このまま映画が終わらなきゃいいのに…)
ただ膝を抱え、スクリーンと隣に座る男の横顔を交互に見つめながら、純粋に映画の世界に惹き込まれている様子の女子高生。その視線に気づいて、安室はふと首を傾げる。
「…僕の顔に、何か?」
少しだけ戸惑い、静かに問いかけた。 彼女はフルフルと小さく首を横に振り、きゅっと膝を抱え直してスクリーンに目を移す。
安室はもう、これ以上スパイ映画のシナリオを頭の中で組み立てるのをやめた。 コホン、と誤魔化すように小さく咳払いを一つすると、ほんの少しだけ口角を緩め、再びスクリーンへと視線を戻す。
《こんなに話の分かる若者と語り合える日が来るなんて…! もう思い残す事はありませんっ!》
《…ハハ、良かったね…》
日曜日の午後の、埃っぽい空き店舗の中。 幽霊二人に背後を見守られながら、誰にも邪魔されない秘密の映画鑑賞会が続いていた。
◇
「…で、どうでしたか?」
再び閉め切られたシャッターの外。すっかり人気も薄れた商店街の汚れた通路の舗装には、西日が照り返って小さな光の粒が反射する。シャッターの縁から手を離し、ゆっくりと立ち上がって振り返る安室の影が忍び寄るようにスッと名前の足元に伸びた。
「えっ?」
「名探偵修行でしょう?」
「…ええっと、『ミステリーの真髄とは論理の美しさだ』と思いましたっ!」
誰かの受け売りのような言葉をつらつらと言い重ねる名前に少し目を丸くして、安室はそのまま立ち尽くしてから「もう遅くなるから、気を付けて帰りなさい」と彼女の背中を見送った。
(…論理の美しさ、ね。どこでそんな小難しい言い回しを覚えてきたんだか)
先ほど彼女が少しだけ背伸びをするように放った言葉を、口の中で反芻する。どう考えても、あの突飛な女子高生の口から自然に出てくる語彙ではない。
おまけに、手元の南京錠に目をやれば、暗証番号は解錠された数字のまま1ミリも動かされておらず、誰でも開けられる状態のままで放置されている。
「……こんな隙だらけの工作員がいてたまるか…」
ドジな探偵の弟子の後始末を肩代わりしながら、安室は今日何度目か分からない溜息をついた。わざわざ腰を下ろして屈みながら、4桁のダイヤルを適当に回し、そっとチェーンに絡ませた。たった二人だけの大切な秘密を守るように。