touken
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「すっかり遅くなっちゃったね」
隣を歩く主が少しだけ疲れたような声を上げた。そうだな、と一つ返し、帰路を二人で急ぐ。普段と変わらないただの買い出しだったはずが、人数分の大量の花火を買い込んでいるうちにすっかり遅くなってしまった。恐らく皆主の事を心配しているだろう。
「花火は明日になりそう…」
「ああ…流石に夜も遅い」
急いでいた足を少し遅める。暫しの間、沈黙が落ちた。虫の鳴く音と足音だけがその場を支配する。嫌ではない、穏やかで、寧ろ好ましい時間だと思った。主は、どう思っているだろうか。ちらりと横目で盗み見てみると目がぱちりと合い、微笑まれた。何故か気恥ずかしくなり少しだけ目線を逸らした。
「…花火とはどんな物なんだ?」
なんとなく、話題を振ってみる。気を紛らわせたかったのかもしれない。主は嬉しそうに、とても綺麗なものだよ、と言った。
「きっと、骨喰も気に入ってくれると思うな」
そうだろうか、とぽつりと呟く。花火とは火を使う物だと聞いた。個人的に火は余り好ましいものではない。俺の記憶を焼き尽くしたあの光景を、炎を、やはり思い出してしまう。けれど、
「主がそう言うのなら、気にいるのかもしれないな」
きっとそうだよ。また好きなものが増えるといいね、と笑う主に頰が少し火照るのを感じた。少し、照れ臭い。
主は事あるごとに俺の気に入りそうなものを勧めてくれる。それは饅頭だったり、書物だったり、風景だったり。主の好きなあらゆる物を俺に教えてくれる。からっぽの俺を、炎の底から掬い上げてくれる。
「主の好きなものなら、好きになりたい、と、思う…」
「…そっか、ありがとう」
二人で照れくさくなって小さく笑った。こんな些細な事がとても幸せに感じる。主が与えてくれたものだ。
この体を得て手に入れたものは沢山ある。嬉しい気持ち、悲しい気持ち、様々な心を覚えた。酷く満たされた気持ちになった。同時に恐怖も覚えた。また、忘れてしまうんじゃないだろうか。この人を、悲しませてしまうんじゃないだろうか。その恐怖はいつまでも消えない。
けれど、それでもいいと、何度でも思い出させてくれると、言ってくれたから。
「…っ!?」
突如、大きな音が響き、空が光った。咄嗟に主を後ろに庇いつつ見上げてみるとそこには、大きな光の花が咲いていた。
「わー綺麗だねえ」
空に色とりどりの光が舞っている。破裂音がする度に空が明るく染まる。赤、黄色、緑、青。様々な色で光るそれはとても幻想的で。
「…きれいだ」
「うん、綺麗だ」
ぽつりと溢れた言葉に、主がにこりと笑った。胸が、苦しい。光に照らされた顔が、花火よりも、何よりも綺麗に見えて、ひどく戸惑ってしまう。
「ああ、とても、きれいで、すきだと、思った」
するりと、言葉が出てきた。そっか、良かった!と返す主はやっぱりとても綺麗で。今の俺の言葉は何に向けたものだろうか?気づかないようにもたげた考えに蓋をして。花火に向けたものだと自分に思い聞かせて、ありがとうと少しだけ笑った。
頰が熱いのも、心臓がどくどく煩いのも。全部、花火のせいだ、きっと。
隣を歩く主が少しだけ疲れたような声を上げた。そうだな、と一つ返し、帰路を二人で急ぐ。普段と変わらないただの買い出しだったはずが、人数分の大量の花火を買い込んでいるうちにすっかり遅くなってしまった。恐らく皆主の事を心配しているだろう。
「花火は明日になりそう…」
「ああ…流石に夜も遅い」
急いでいた足を少し遅める。暫しの間、沈黙が落ちた。虫の鳴く音と足音だけがその場を支配する。嫌ではない、穏やかで、寧ろ好ましい時間だと思った。主は、どう思っているだろうか。ちらりと横目で盗み見てみると目がぱちりと合い、微笑まれた。何故か気恥ずかしくなり少しだけ目線を逸らした。
「…花火とはどんな物なんだ?」
なんとなく、話題を振ってみる。気を紛らわせたかったのかもしれない。主は嬉しそうに、とても綺麗なものだよ、と言った。
「きっと、骨喰も気に入ってくれると思うな」
そうだろうか、とぽつりと呟く。花火とは火を使う物だと聞いた。個人的に火は余り好ましいものではない。俺の記憶を焼き尽くしたあの光景を、炎を、やはり思い出してしまう。けれど、
「主がそう言うのなら、気にいるのかもしれないな」
きっとそうだよ。また好きなものが増えるといいね、と笑う主に頰が少し火照るのを感じた。少し、照れ臭い。
主は事あるごとに俺の気に入りそうなものを勧めてくれる。それは饅頭だったり、書物だったり、風景だったり。主の好きなあらゆる物を俺に教えてくれる。からっぽの俺を、炎の底から掬い上げてくれる。
「主の好きなものなら、好きになりたい、と、思う…」
「…そっか、ありがとう」
二人で照れくさくなって小さく笑った。こんな些細な事がとても幸せに感じる。主が与えてくれたものだ。
この体を得て手に入れたものは沢山ある。嬉しい気持ち、悲しい気持ち、様々な心を覚えた。酷く満たされた気持ちになった。同時に恐怖も覚えた。また、忘れてしまうんじゃないだろうか。この人を、悲しませてしまうんじゃないだろうか。その恐怖はいつまでも消えない。
けれど、それでもいいと、何度でも思い出させてくれると、言ってくれたから。
「…っ!?」
突如、大きな音が響き、空が光った。咄嗟に主を後ろに庇いつつ見上げてみるとそこには、大きな光の花が咲いていた。
「わー綺麗だねえ」
空に色とりどりの光が舞っている。破裂音がする度に空が明るく染まる。赤、黄色、緑、青。様々な色で光るそれはとても幻想的で。
「…きれいだ」
「うん、綺麗だ」
ぽつりと溢れた言葉に、主がにこりと笑った。胸が、苦しい。光に照らされた顔が、花火よりも、何よりも綺麗に見えて、ひどく戸惑ってしまう。
「ああ、とても、きれいで、すきだと、思った」
するりと、言葉が出てきた。そっか、良かった!と返す主はやっぱりとても綺麗で。今の俺の言葉は何に向けたものだろうか?気づかないようにもたげた考えに蓋をして。花火に向けたものだと自分に思い聞かせて、ありがとうと少しだけ笑った。
頰が熱いのも、心臓がどくどく煩いのも。全部、花火のせいだ、きっと。
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