touken
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「おい、アンタ何見てんだ?」
和泉守は審神者の手元を後ろから覗き込んだ。彼女は少し驚いたようにぴくりと肩を跳ねさせたが、すぐに口元を緩めながら写真です、と言った。
「…」
「わ、な、何ですか?」
無言でぺたぺたと何かを確かめるかの様に審神者を触る。唐突な動きに驚きはしたが、表情は真剣で手つきは酷く柔らかい。理解は出来ないものの、何か理由が有るのだろうととりあえずされるがままになってみる。衣服や腕、顔に触れる手はくすぐったくて、少し恥ずかしい。
「和泉守さん?」
「…大丈夫、なのか?」
「何がです?」
…魂、とぽつりと呟く。魂、抜かれてねえよな?と真剣な顔で尋ねた。審神者は一瞬きょとんとした顔をしてすぐに理解したようで笑った。
「大丈夫ですよ、和泉守さん。写真は魂なんか抜きません」
「いやっ、だが前の主の時は…」
「ああ、あの時代は写真を撮るのに時間がかかって疲れましたから。それが魂が抜かれるなんて噂になったんです。前の主さんも大丈夫だったでしょう?」
確かに…と呟いた和泉守に、心配してくださってありがとうございます、と微笑んだ。照れたようにそっぽを向く。耳が少し赤い。審神者がにこにこと笑ったままでいると、照れを隠す為か乱暴に写真を見せろと取り上げられた。
「これは、アンタと…誰だ?」
「ああ、これは私の家族です。で、こっちが友達」
久しぶりに見たら懐かしくなっちゃって。見入ってました、と述べる審神者を和泉守が見つめた。これを見ながら彼女が何を考えていたかなんて直ぐに検討がついた。
「…帰りたいか?」
審神者に問いかける。問いかけた所で返事など知っているつもりだった。その写真を見つめる視線がとても切なげで、泣き出す直前の幼子のようだったから。
「アンタの願いを叶えるのがオレ達の役目だからな」
彼女が口を開く前に和泉守はおどけた調子で笑った。帰りたい、なんて言葉を聞くのがひどく怖かった。共に居られるのは任務の間だけ。暗黙の了解であるはずのそれを、認めたくはなかった。けれど、どうしようもないそれを当たり前のことなんだと、割り切ってしまいたかった。
「…そうですね」
そう小さく呟かれた言葉に心がじくりと反応した。そりゃそうだ。帰りたいに決まってる。分かってたことだ。今更俺は、何故こんなにも、戸惑っているんだ。
「和泉守さんはどうです?私がもし現世に帰っちゃったら寂しいですか?」
今度は審神者がおどけた調子で質問をする。満面の笑みが酷く寂しげで、今にも泣き出しそうで。
「っ」
え、と戸惑った声が肩口から聞こえた。抱きしめた体は自分と比べ物にならない位に細くて小さい。
「…嫌だ」
「え…」
「嫌だっつってんだ。聞こえねーのかよ」
ほんと、ですか。ぽつりと審神者の口から言葉が溢れた。私と一緒にいたいと、思って、くれてますか。震える声が、言葉が、その全てが酷く愛しいと思った。
「…アンタを、帰すのがやだよ。本当を言うと帰らないでほしいとも思う。このままずっと居てくれりゃいいのにって」
「…ずるいです、そんなこと言われたら、帰りにくいですよ」
ふふ、と小さな笑い声が聞こえる。更に力を加えてぎゅうと抱きしめる。真っ赤になった情けない顔を見られないように。
「だからよ、アンタが帰ったとしても、俺が迎えに行ってやる。俺が思い出させてやる」
オレは我が儘だからな、と取って付けたように告げた。
「…ほんとに、子供ですねえ、和泉守さんは」
「うるせえ」
からかう様な言葉は涙声。それに返す言葉も震えている。お互いに心細くて、泣きそうなのにお互いに気づかないふりをして。ありがとうございますと述べる小さな声も聞こえないふりをした。
和泉守は審神者の手元を後ろから覗き込んだ。彼女は少し驚いたようにぴくりと肩を跳ねさせたが、すぐに口元を緩めながら写真です、と言った。
「…」
「わ、な、何ですか?」
無言でぺたぺたと何かを確かめるかの様に審神者を触る。唐突な動きに驚きはしたが、表情は真剣で手つきは酷く柔らかい。理解は出来ないものの、何か理由が有るのだろうととりあえずされるがままになってみる。衣服や腕、顔に触れる手はくすぐったくて、少し恥ずかしい。
「和泉守さん?」
「…大丈夫、なのか?」
「何がです?」
…魂、とぽつりと呟く。魂、抜かれてねえよな?と真剣な顔で尋ねた。審神者は一瞬きょとんとした顔をしてすぐに理解したようで笑った。
「大丈夫ですよ、和泉守さん。写真は魂なんか抜きません」
「いやっ、だが前の主の時は…」
「ああ、あの時代は写真を撮るのに時間がかかって疲れましたから。それが魂が抜かれるなんて噂になったんです。前の主さんも大丈夫だったでしょう?」
確かに…と呟いた和泉守に、心配してくださってありがとうございます、と微笑んだ。照れたようにそっぽを向く。耳が少し赤い。審神者がにこにこと笑ったままでいると、照れを隠す為か乱暴に写真を見せろと取り上げられた。
「これは、アンタと…誰だ?」
「ああ、これは私の家族です。で、こっちが友達」
久しぶりに見たら懐かしくなっちゃって。見入ってました、と述べる審神者を和泉守が見つめた。これを見ながら彼女が何を考えていたかなんて直ぐに検討がついた。
「…帰りたいか?」
審神者に問いかける。問いかけた所で返事など知っているつもりだった。その写真を見つめる視線がとても切なげで、泣き出す直前の幼子のようだったから。
「アンタの願いを叶えるのがオレ達の役目だからな」
彼女が口を開く前に和泉守はおどけた調子で笑った。帰りたい、なんて言葉を聞くのがひどく怖かった。共に居られるのは任務の間だけ。暗黙の了解であるはずのそれを、認めたくはなかった。けれど、どうしようもないそれを当たり前のことなんだと、割り切ってしまいたかった。
「…そうですね」
そう小さく呟かれた言葉に心がじくりと反応した。そりゃそうだ。帰りたいに決まってる。分かってたことだ。今更俺は、何故こんなにも、戸惑っているんだ。
「和泉守さんはどうです?私がもし現世に帰っちゃったら寂しいですか?」
今度は審神者がおどけた調子で質問をする。満面の笑みが酷く寂しげで、今にも泣き出しそうで。
「っ」
え、と戸惑った声が肩口から聞こえた。抱きしめた体は自分と比べ物にならない位に細くて小さい。
「…嫌だ」
「え…」
「嫌だっつってんだ。聞こえねーのかよ」
ほんと、ですか。ぽつりと審神者の口から言葉が溢れた。私と一緒にいたいと、思って、くれてますか。震える声が、言葉が、その全てが酷く愛しいと思った。
「…アンタを、帰すのがやだよ。本当を言うと帰らないでほしいとも思う。このままずっと居てくれりゃいいのにって」
「…ずるいです、そんなこと言われたら、帰りにくいですよ」
ふふ、と小さな笑い声が聞こえる。更に力を加えてぎゅうと抱きしめる。真っ赤になった情けない顔を見られないように。
「だからよ、アンタが帰ったとしても、俺が迎えに行ってやる。俺が思い出させてやる」
オレは我が儘だからな、と取って付けたように告げた。
「…ほんとに、子供ですねえ、和泉守さんは」
「うるせえ」
からかう様な言葉は涙声。それに返す言葉も震えている。お互いに心細くて、泣きそうなのにお互いに気づかないふりをして。ありがとうございますと述べる小さな声も聞こえないふりをした。
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