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雨が降っている。しとしと、しとしと。濡れた土の匂い。隣にいるこの人は、雨の日が嫌いなのだという。だからといって、晴れが好きなのかというと、そうでもないらしい(恐らく、興味がないだけだろうけど)。今や太陽はすっかり覆い隠され、まだ昼過ぎだというのに薄暗い。
くせものさんの雨嫌いなのは、古傷が酷く疼くことが理由の一つらしい。ただ、頭巾と包帯の隙間から見える目にはおくびにも出さないのはいつものこと。いつの間にか、気づかれないように見ていたはずがばれていたようだ。彼はちらりと横目で私を見やった。
「くせものさん、包帯、緩んでますよ」
予め用意しておいた言い訳を口にしながら左腕を指差す。ああ、本当だ、と興味無さげに呟くのを聞きながら手当の用意をする。腕を出してくださいと告げると、素直に左腕が目の前に出された。
「痛くしないでね」
「タソガレドキの組頭が何言ってるんですか…」
ぼやきながらも慎重に、包帯を解いていく。するり、するりと解かれるうちに少し熱を持った爛れた皮膚が露わになった。丁寧に水洗いをし、水分を拭き取ってから軟膏を薄く塗り、新しい包帯を巻く。締めすぎないように、解けないように。
「ありがとう。でもそのタソガレドキの組頭を手当しちゃっていいの?」
「その組頭が忍術学園に入り浸っていいんですか?」
にやにやと目元で笑いながら問いかけるくせものさんに、呆れながら問い返す。いいの、雨だし。なんて適当な答えを聞きながら、道具を片付ける。くせものさんの隣に戻り、小さな格子戸から空を見上げた。いつも間にか雨は酷くなり、ざあざあと大きな音をたてている。ざあざあ、ざあざあ。少し、冷える。
「君は雨は好きかい?」
「はい」
そう、変わってるね。私はあまり好きではないな。ぽりぽりと包帯の巻かれた頬をかきながら呟く。雨の音、土の濡れた匂い。それだけに支配される雨の日は落ち着く。嫌なものを隠してくれる雨。隣の人が去っていかない、雨。
ふいに、何かが頭に触れた。驚いている内に髪を結っていた紐が解かれ、髪が背にさらりとおちた。くせものさんは何でもないような顔をしながら私の髪を何度も梳いていく。微かに触れられた部分が熱を帯びる。その度、胸が疼いて泣きそうになるのをぐっと堪えた。
「何ですか?」
我ながら、可愛くない反応だ。本当に嫌になる。それを見越したかの様に、くせものさんは雨が止むまで此処に居ようかな、と微かに笑った。
「…好きにしたらいいと思います」
そう俯きながら小さく告げると、頭の上でくつくつとまた笑う気配がした。右隣から衣擦れの音と微かな体温が伝わってくる。くせものさんは確かに此処にいるのだ。ざあざあ、ざあざあ。くせものさんが嫌いだという優しい雨は、まだ止まない。君がいるなら雨の日もいいかもしれないね、と隣で呟く声は私の胸を酷く震わせた。
くせものさんの雨嫌いなのは、古傷が酷く疼くことが理由の一つらしい。ただ、頭巾と包帯の隙間から見える目にはおくびにも出さないのはいつものこと。いつの間にか、気づかれないように見ていたはずがばれていたようだ。彼はちらりと横目で私を見やった。
「くせものさん、包帯、緩んでますよ」
予め用意しておいた言い訳を口にしながら左腕を指差す。ああ、本当だ、と興味無さげに呟くのを聞きながら手当の用意をする。腕を出してくださいと告げると、素直に左腕が目の前に出された。
「痛くしないでね」
「タソガレドキの組頭が何言ってるんですか…」
ぼやきながらも慎重に、包帯を解いていく。するり、するりと解かれるうちに少し熱を持った爛れた皮膚が露わになった。丁寧に水洗いをし、水分を拭き取ってから軟膏を薄く塗り、新しい包帯を巻く。締めすぎないように、解けないように。
「ありがとう。でもそのタソガレドキの組頭を手当しちゃっていいの?」
「その組頭が忍術学園に入り浸っていいんですか?」
にやにやと目元で笑いながら問いかけるくせものさんに、呆れながら問い返す。いいの、雨だし。なんて適当な答えを聞きながら、道具を片付ける。くせものさんの隣に戻り、小さな格子戸から空を見上げた。いつも間にか雨は酷くなり、ざあざあと大きな音をたてている。ざあざあ、ざあざあ。少し、冷える。
「君は雨は好きかい?」
「はい」
そう、変わってるね。私はあまり好きではないな。ぽりぽりと包帯の巻かれた頬をかきながら呟く。雨の音、土の濡れた匂い。それだけに支配される雨の日は落ち着く。嫌なものを隠してくれる雨。隣の人が去っていかない、雨。
ふいに、何かが頭に触れた。驚いている内に髪を結っていた紐が解かれ、髪が背にさらりとおちた。くせものさんは何でもないような顔をしながら私の髪を何度も梳いていく。微かに触れられた部分が熱を帯びる。その度、胸が疼いて泣きそうになるのをぐっと堪えた。
「何ですか?」
我ながら、可愛くない反応だ。本当に嫌になる。それを見越したかの様に、くせものさんは雨が止むまで此処に居ようかな、と微かに笑った。
「…好きにしたらいいと思います」
そう俯きながら小さく告げると、頭の上でくつくつとまた笑う気配がした。右隣から衣擦れの音と微かな体温が伝わってくる。くせものさんは確かに此処にいるのだ。ざあざあ、ざあざあ。くせものさんが嫌いだという優しい雨は、まだ止まない。君がいるなら雨の日もいいかもしれないね、と隣で呟く声は私の胸を酷く震わせた。
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