arise<加藤>
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仕事終わり、いつも同じ時刻、4車両目、2つ目の扉
ほぼ同じような仕事帰りの人がパラパラといる中でいつもいる顔しか知らない彼女の前に立つ。
いちにんしょうより先に乗っていていつもこの席に座っている。
降りる駅は同じで、でも出る改札は反対。
あまりにも綺麗な顔立ちで、仕事終わり疲れた時の密かな癒しである。
この日何かが違ったといえばいちにんしょうが風邪を引いて頭痛と吐き気のオンパレードだったということだ。
昼休憩の時に頭痛薬も切れてしまい、最寄りで買って帰るという試練もある中で立っているのがやっとだった。
「…あの、大丈夫ですか?」
「ここ、座ってください」
そう声をかけてくれたのはいつも勝手に癒しにしている彼女で
『大丈夫ですよ、すぐ降りるので…』と断ってはみたものの「顔色悪いですし、まだ20分はあります」と押し切られてしまった。
この人もちゃんと同じ駅で降りること認知してたんだなとガンガン響く頭の中で考えていた。
「風邪、ですか?」
『えぇ、会社でうつされたみたいで…』
「これ、よかったら、未開封なので」
スポーツドリンクを手渡される。
『そんな、悪いです席まで譲ってもらったのに』
「気にしないでください、困った時はお互い様です」
『…じゃあ、お言葉に甘えて、ありがとうございます』
ドリンクを受け取ると「どういたしまして」と目を細めて微笑んだ。
20分弱心配そうに見守られながら2人の最寄り駅に着く。
『あの、本当にありがとうございました』と改札をぬけて頭を下げる。
「大したことはしてないです、ゆっくり休んで下さい」
『名前、みょうじって言います』
「加藤です、ではまた」
軽く会釈をした加藤さんはいちにんしょうとは反対に歩いていく。
市販の風邪薬を飲んで安静にした結果次の日にはびっくりするほど良くなっていて、冷蔵庫に何も無いことに気付き近所のスーパーまで買い出しにでた。
「みょうじさん…?」
後ろから声をかけられ振り抜くと加藤さんがいて『先日はどうも!』と慌てて頭を下げる。
「体調大丈夫ですか?」
『おかげさまで、すっかり良くなりました!』
「よかったです、家まで送った方がいいのかなとか心配してたので。」
『加藤さんのおかげです、本当にありがとう』
「そんな…じゃあお礼代わりに今度一緒にご飯行きませんか?」
『是非、でもそれだといちにんしょうが得しちゃいません?』
「どうしてですか…?」
『こんなに美人に食事誘ってもらうなんて勘違いしちゃいますよ』
顔を赤くした加藤さんが「勘違いしてもいいですよ」なんて言うから自分の中で何かがはじまった音がした。
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