君がため<飛鳥>
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冬休みが明けて変わり映えのないクラスでつまらない日常を過ごしていた。
変わった、と言える所は隣の齋藤さんがやたらと絡んでくるところだ。
「ねぇ、消しゴム貸して」
『…今日は消しゴム?』
「早く」
『昨日は赤ペンで、明日は何?』
新学期になってから齋藤さんの忘れ物が増えた。
いやいや言いながらも教科書見せてもらってたしと思って消しゴムを渡す。
「消しゴムに好きな子の名前書くと成就するってやつ、やってる?」
『なにそれ』
「占い」
『そういうの信じる人?』
「気になったから」
『実際見てみれば?』
少し挑発的に言うとムッとして「興味無いしそんな子供だまし」と間違った場所を消していちにんしょうに消しゴムを投げる。
そんな物の貸し借りをした毎日もあっという間に過ぎて、中学3年になった時担任に呼び出された。
「みょうじ、進路の事なんだけど」
『はい』
白紙で置かれた進路希望用紙に担任は心配そうに尋ねる。
「やりたい事とかないの?」
『…ないです』
「成績を見てもそこそこの所狙えると思うし…この辺だと櫻坂とかどうなんだ?」
『いや……はい』
「両親はなんて言ってるんだ?」
『特に』
うーん、と唸ると1枚の紙を出して「ここから興味あるところ探してみなさい」と白紙と一緒に手渡される。
教室から出て下駄箱に向かうと齋藤さんと会う。
「進路?」
『まあ、そう』
「どこ行くの?」
『決まってない、から呼び出しされたんだよ』
「乃木高は?」
『…なんで』
「私が乃木高だから」
『じゃあ、そうしようかな』
どこでもよかった、ただ、誘われたから。
齋藤さんは目を開いた。
「え、本当?!」
『うん、どこでもいいし』
「…嘘でも私と一緒がいいとか言えよ」
『齋藤さんと一緒がいいから』
「おそい!」
笑った。
なんか、おかしくて久々に笑えた気がした。
「笑うんだね」
『はぁ?』
「いつもつまらなそうだったから」
『齋藤さんが構ってくれるからつまらなくはなかったよ』
「ぇ」
『え?』
予鈴がなった。
齋藤さんは急いで靴を履き替えて「じゃあね!」と走り去る。
進路希望用紙はすぐに乃木高と書いて提出した。
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