君がため<飛鳥>
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出会ったのは、中学2年、14歳の秋。
親の都合に振り回されて転校を繰り返していたいちにんしょうの自己紹介は『はじめまして、みょうじなまえです、転校ばかりですが仲良くなれたら嬉しいです』で固定になった。
転校に慣れても、少し時期外れの転校に対する好奇の視線には慣れることはなかった。
「じゃあ、あの席座って、教科書は隣の齋藤さんに見せてもらって」
『はい、わかりました』
指定された窓際、一番後ろの席。
机に鞄を下ろして隣の齋藤さんに小声で挨拶をする。
『ぁ、よろしくおねがいします』
「どうも…」
視線をこちらに向けようともせず、少し俯き気味に返される。
うわ、感じ悪。
「ホームルーム終わります、次の準備しておくように」
授業・・・教室を見渡して時間割りを探すも、掲示物は見当たらない。
次の授業って、なんだっけってキョロキョロしているとふと、机に一枚の紙を渡される。
手の主を見ると齋藤さんがこちらを見て口を開く。
「今週の時間割り」
『ぇ、あ、ありがとう・・・!』
「5時間目、移動教室だから、誰かに聞いて」
少し、やる気がなさそうな目が合うとすぐにそらされる。
感じ悪いという第一印象はすぐに撤回された。
意外に優しい…のか…?
一週間も経てば、教科書も届いて齋藤さんから見せてもらうこともなくなった。
「教科書届いたんだ」
『あ、うん、そうですね、ずっと見せてくれてありがとう』
「どういたしまして」
それがほぼ最後の会話で、次にちゃんと話したのは冬休み前だった。
「じゃあ、休み前に席替えします」
この時期に席替えとはよく分からないクラスだとは思ったが長期休み前に席替えをするというのが担任のルールらしいとクラスメイトに聞いた。
その担任の一言によって用意されたクジを順番に引く。
どうせすぐに転校だろうし、何処の席で誰の隣でもいいと思った。
26、そう書かれた番号を黒板の席表に当てはめる。
廊下側の一番後ろ。
全員が引き終わって各々机を移動させる。
「ぁ」
左隣から聞こえた声に振り向くと前回は右隣だった齋藤さんがいた。
『あ、どうも』
「また隣」
少し微笑む彼女に一瞬ドキッとした。
『齋藤さん、笑うんだ』
「失礼な人、別に笑ってないし」
『あ、そう』
「…友達できた?」
『どっちが失礼だよ、別にいらないし』
「…そう」
少し寂しそうな顔をした齋藤さんとはその後も話すことも無くすぐに冬休みに入った。
友達なんていないいちにんしょうはほぼ家でダラダラと過ごして気づけば休みは終わっていた。
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