protect<加藤>
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
幼馴染というだけで靴箱が他人宛の手紙でいっぱいになる経験をした事はあるだろうか。
「うわ、今日もモテモテなまえちゃんだね」
『これ、いちにんしょう宛じゃないから』
「えぇ?!じゃあなんでなまえの所に入ってるの!?ししなんか毎日空っぽなのに〜」
隣で人の靴箱を覗いてくるへらへらしてる奴は幼馴染で学年のマドンナと呼ばれている。
「読んだりしないの?」
『だからいちにんしょうのじゃないから』
「じゃあ、なまえ宛だったら返事する?付き合う?」
その不安そうな目がいちにんしょうは苦手だ。
絶対にいちにんしょうのものになんてならないのに、絶対に離してくれない。
『どうだろ、そういうの分かんない』
「だよね~ししもよくわかんない」
そしてお望み通りの答えが来ると安心したように笑う。
この笑顔は好き。
いちにんしょうの靴箱にあった手紙は全て史帆に宛てたもので
過去に史帆に出した手紙が本人の意思で全て破棄されて以来いちにんしょう経由で渡せと言わんばかりに投函される事になった。
いちにんしょうの所にきても同じなのに、防衛線か何かなんだろうか。
「なまえ〜今日甘いもの食べて帰ろ〜?」
『いいけど…お小遣い大丈夫?』
「んん〜確かにそうかも〜…じゃあじゃあ!コンビニでアイス半分こしない?」
『史帆の奢りで』
「えぇ〜そこはなまえの奢りでしょ〜」
『あ、そういえば明日委員会で遅くなると思うから先帰っててね』
「待ってようか?しし、なまえと帰りたいし」
『何時になるかわかんないし大丈夫だよ』
「ふーん…」
あからさまに寂しそうに俯くものだから仕方ないなぁとこの日のアイスは奢ってやった。
数百円のアイスでこんな笑顔が見られるなら安上がり過ぎる。
こんな日が毎日続けばいいのに。
次の日もまたいちにんしょうの靴箱は数枚のお手紙が入っていていつも通り無視をして。
放課後、委員会が終わり靴箱を開けると朝あったはずの手紙はなくその時はなかった可愛い便箋が丁寧に置かれていた。
“ なまえへ”
これは…手に取って差出人の確認をしてもどこにも書いていなかった。
封を開けると1枚の紙に“好きです。”とだけ書かれていた。
多分、普段なら無視するのかもしれない。
宛先のない手紙をカバンしまってこの差出人であろう彼女の家に向かう。
チャイムを押せばベランダから顔を出す。
「おかえり~」
なんて呑気な事を言って手を振る史帆の表情は少し強ばっていていちにんしょうと目を合わせようとしない。
『お邪魔します』といつもみたいに靴を脱ぎ史帆の部屋の前に立つ。
『今日、いまさっきいちにんしょう宛の手紙があったんだけど!』
「…!へぇ〜なまえちゃんモテモテじゃん」
『差出人…書いてなかったんだけど…!』
「シャイな子なのかもしれないね」
『他の手紙全部消えてたんだけど。』
「…」
史帆はちゃんといちにんしょうの靴箱に自分宛の手紙がきていることを知っていた。
私も知っていた、史帆が一度だけ返事を断りを言ったこと、相手から幼馴染のいちにんしょうがいるからなのかと詰め寄られたこと
そして、「なまえが認めた人としか付き合えない」と言ってしまったこと。
今考えればそんな断り文句あるかよと思うが、その日以降いちにんしょうの靴箱に手紙が溢れたのだ。
『いちにんしょう宛じゃない靴箱の手紙は本人に届くことはない』
『届けたら史帆がその人と付き合わなきゃならないから』
「…ごめんなさい」
『貰った手紙、いちにんしょう、この子と付き合ってみようと思うんだけど』
『そうしたら、明日から手紙来なくなるかな?』
ドア越しに震える声がする
「相手の子が誰かわかってるの?」
『美人で寂しがり屋で笑顔が可愛くて気にしいで、いつもいちにんしょうの隣にいてくれた子』
『何年幼馴染やってると思ってるの?そろそろちゃんと顔見たいんだけど』
「今酷い顔してるからやだ」
『どんな史帆も好きだよ』
ドアノブに手をかけて背中を向けてる彼女を思い切り抱き締めれば涙でぐしゃぐしゃになった彼女が「今ブスなのに」と顔を隠す。
向かい合って優しく手で涙を拭えば「好き」と更に涙を零され
『いちにんしょうも好きです、付き合ってくれますか?』
と言えばいちにんしょうの大好きな笑顔で「こちらこそよろしくお願いします」と返される。
これからは幼馴染ではなく恋人として君を守っていくと心に思いながら愛おしい君を抱きしめた。
1/1ページ