<齊藤>
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1stリクエスト《齊藤》の[02✲]続編となります。
あの残業以来、何かあればいちにんしょうの仕事をちょいちょい覗いてくるようになった齊藤さん。
そして、お昼にはしれっといちにんしょうのあとをついてきて一緒にご飯を食べる始末。
「なまえさん、ここの資料の数値間違ってるので手直ししておきました、あとこの図分かりにくいかなと思って別パターン作ったんで確認してもらっていいですか?」
『ごめん、ありがとう、確認しておく』
正直やりにくいとは思っていたものの齊藤さんはかなり優秀でプロジェクト自体もかなり順調に進んでいた。
この日もお昼休憩に隣でご飯を食べてる齊藤さん。
そろそろ戻るかって時に気まずそうに口を開く。
「あの、なまえさん、今日定時ですか?」
『その予定だけど…何か見落としでもあった?』
「特にないと思いますけど、ご飯、行きませんか」
『…それはプロジェクト終わったらじゃなかった?』
「……イヤならいいです、失礼します」
少し怒ったような口調で席を立つ彼女の手を掴む。
口を尖らせ頬を膨らませ明らかに拗ねた様子に透かさず言葉を吐く。
『イヤとかじゃない、行く、仕事定時で終わらせる』
「最初からそう言ってください」
『また、連絡するよ』
ホッとして、手を離すと齊藤さんは「先行きますね」と席を離れた。
髪の毛を耳にかけた時少し赤くなっていた事にいちにんしょうはまだ気付いていなかった。
定時まで残り2時間を切った時、この調子なら問題なく終わるなと画面に向き合っていると会社用の電話が鳴る。
『もしもし、みょうじです……ぇ、』
『いや、待ってください、話が違うじゃないですか……はぁ?!』
『だから、何回も確認してますよね!?』
『そういう事だからって…は、ちょっ……っ…!』
相手に一方的に切られてやり場のない怒りと悲しみにデスクで立ち尽くすしかなかった。
やばい、どうしよう、このままじゃ、嫌な感情が一気に押し寄せてきた時、後ろから名前を呼ばれる。
「なまえさん、どうかしたんですか」
『ぁ、齊藤…さん…』
「大丈夫、じゃないですよね、今の電話誰ですか」
『いや、その…齊藤さんには関係ないよ』
「っ、あります!なまえさんが関わってるのに、関係ないとかないですっ」
『本当、大丈夫だから、あとごめん、今日残業になった』
「なら、私も残業します、なまえさん、私言いましたよね」
「私がいるから大丈夫だって」
『齊藤でも、出来る事と出来ない事があるだろ!いきなり納品できないとか言われて、明後日の打ち合わせに必要なものなのに…』
「それって□□会社に頼んでたやつですか?」
『…そうだよ、さっき電話来て無理だ、の一点張り、ふざけんなよ…!』
「私が、なんとかします、信じてください、だから、定時までに今日の仕事終わらせてご飯連れて行ってください」
両手を強く握られて、真っ直ぐな視線で。齊藤さんならなんとか出来るんだろうなって思ってしまった。
それは態度にも表れていて自然と首を縦に振っていた。
「約束ですよ」
『わかった』
定時まで20分、仕事は片付いて齊藤さんに任せたとはいえ自分の責任をどうするか悩んでいると社内携帯に知らない番号から電話がかかってくる。
『はい、みょうじです』
『えぇ、はい、そうです…ぇ、本当ですか?!いえ、有難いです、ありがとうございます!』
『こちらこそ、無理を言ってしまってすみません、それでは、失礼致します』
電話を切って齊藤さんの方を見るとドヤ顔をした彼女と目が合った。
『ありがとう、助かったよ』
「なまえさんの為なので」
『今日は奢る』
「当たり前じゃないですか…って言いたいところなんですけど私が仕事終わらなかったので先帰ってください」
『…手伝うよ』
「いえ、自分で出来ます」
『たまには先輩面させてくれないかな、というか残業になったのもいちにんしょうのせいでしょ』
「……そうなんですけど」
『素直でよろしい』
下を向いて申し訳なさそうにする彼女の頭を撫でると作成する資料を渡される。
どれも時間がかかるものではなかったから2人でやれば1時間弱で終わる量だった。
『…っし、おわった〜、齊藤さんはもう終わる?』
「はい、これで終わりです」
『じゃあ、ご飯行こうか〜』
「…手伝ってもらったのにこんな事言うのもなんですけど、やっぱりプロジェクト終わったらにしませんか」
『不甲斐ない上司とご飯は嫌になった?』
「そうじゃないですっ、ただ、上手くいってたから調子乗ってご飯なんか誘うから…こんなんなって…」
『うーん、じゃあ齊藤さんからの誘いはなしということで。お腹すいたから齊藤さん、ご飯付き合ってよ』
「は…?」
『いちにんしょうから誘えば問題ないよね?他に何か問題は?…今日もありがとう、齊藤さんがいなかったらいちにんしょう自身どうなってたかわかんないから、そのお礼を終わった後のご飯1回だけなんて無理だよ、返しきれない』
「…そこまで言うなら行ってあげます」
よし、と軽く心の中でガッツポーズをする。
齊藤さんは店に着くまでもずっと大人しかった。
普段から大人しい彼女ではあったが、少し落ち込んでいるような気さえした。
『なんか、落ちこんでる…?』
「よかったのかなと思って、いい思いばっかりしてたら来週とかまたトラブル起きそう…」
『その時はまた助けてくれるんでしょ?いちにんしょうさ、初めは齊藤さんのこと分からなかったけど、今は理解してるつもりだよ』
「……好きな人にそう言われると心強いですね」
『…え?』
「なんでもないです、金曜ですし今日は飲みましょ!なまえさん何にしますか?」
慌てたようにドリンクのメニューを手にとりいちにんしょうに見せてくれる。
2人で適当にツマミを頼んでのんびりとのんでいると既に0時を回っていた。
『もうこんな時間か、齊藤さん終電大丈夫?』
「え、ヤバいです、今最後のいっちゃいました…」
『タクシー代出すよ、どこだっけ?』
「…なまえさんここから近いんですか?」
『いちにんしょうもタクシーで帰るから送るよ』
立ち上がり帰る準備と伝票を持って齊藤さんが立ち上がるのを待つ。
少し困った顔をして、酔っているのか顔がいつもより少し赤い気がする。
ゆっくり手を伸ばして軽くいちにんしょうの袖を掴み上目遣いで見つめられる。
「なまえさんの家行ってもいいですか…?」
『え、あー、どういう意味?』
「そのままの意味です、明日休みだし、お邪魔じゃなければ…」
正直いちにんしょうも酔っている、だからこそ、このまま部下をお持ち帰りなんてしていいのだろうか。
上目遣いでじっと見られ、よく見ると齊藤さんはめちゃくちゃ可愛い顔していて、酒のせいだと言い聞かせ声を絞り出す。
『そんな綺麗な部屋じゃないけど、齊藤が来たいなら…』
「本当ですか!?嬉しい!やった…!」
『でも!社内では口外しないように!贔屓してると思われそうだし』
「わかってますよ!いきましょ!」
齊藤さんは嬉しそうに立ち上がり急かしてくる。
会計を払おうとすると横から財布を出す齊藤さんにビックリしていいよいいよと外でタクシーを呼んでるからと齊藤さんを待たせる形で財布を仕舞わせた。
タクシーに乗り込むと楽しそうに隣でにこにことしている。
運転手に家の住所を告げ途中コンビニに寄ってもらい齊藤さんを車に置いて飲み物と明日の朝ごはんを適当に買って直ぐに戻る。
再度家の前に停めてもらってマンションに入る。
『…どうぞ、散らかってるけど』
「ぁ、お邪魔します…」
『お風呂どうする?必要なら沸かすけど』
「シャワーだけ借りれれば…あと着替えとかあれば…」
『コンビニで下着は買ってきた、あとはいちにんしょうのTシャツ貸すよ』
「ありがとうございます…あの、」
『うん?齊藤さん先に入ってきていいよ、バスタオルとか準備しておく、あ、着てるやつ洗濯して乾燥機かけようか』
「呼び方ってそのままですか?」
『…ぇ?』
「齊藤さんじゃなくて、下の名前で呼ばれたいって言ったら迷惑ですか…?」
『…なんか、らしくないね、酔ってるから?』
「たまに齊藤って呼ぶから、どうせなら京子って呼ばれたいです…」
『…』
「ダメですよね、すみません…シャワー借ります」
数時間前冗談ぽく不貞腐れた感じではなく、本当に悲しそうな顔をして脱衣所に入ろうとする彼女の腕を掴み自分の方に引き寄せ抱きしめていた。
自分でも咄嗟の判断とはいえ何をしてしまったんだと凄い自己嫌悪に陥る。
すぐに離れようとした時齊藤さんはいちにんしょうの腰に腕を回した。
『ぇ、ごめんっ、わざとじゃなくて、その…凄い悲しそうな顔してたから』
「…呼んで」
『え、?』
「京子って、呼んで」
『…え、っと…京子…』
「うん…」
どうしてこうなったのか自分でも理解出来なくて、全てお酒のせいにしてしまおうと思った。
暫く抱き合っていたがどちらともなく離れて齊藤は脱衣所に向かっていちにんしょうはタオルや着替えを準備する。
お風呂から上がった齊藤はいつも通りのトーンでありがとうございます、と言った。
『お風呂行ってくるから、ドライヤーとか好きにつかって』と言い脱衣所に行く。
なんとなく気になっていつもより急いでシャワーを浴びる。
酒にやられてるのか、こんなに気になるのは好きってことなのか、でも部下に手を出せるわけもないと流すように頭から少し熱めのシャワーをかける。
早々に済ませてリビングに行くと髪の毛がまだ濡れたままの齊藤がいて俯いた顔をのぞき込む。
小さく寝息を立てる齊藤はいつもよりかなり幼くて乾いたタオルを持ってきて髪の毛を丁寧に乾かす。
「ん…なまえさん…?」
『濡れたままだと風邪引くから、もう大分乾いたからそのままベッドで寝ていいよ』
「なまえさんは…?」
『いちにんしょうはソファで寝るから、齊藤使っていいよ』
少しムッとしていちにんしょうの手を力なく握るとまた上目遣い。
「またさいとうっていう…京子にして…」
『それはさぁ…ちょっと…』
「京子じゃないと今度から反応しないから…」
『えぇ、じゃあ……京子はベッド使っていいよ』
「なまえさんも一緒に」
『…え?』
「一緒に寝よ」
『え、ぁ、ウチのベッドそんな広くないから!』
「くっつけば大丈夫」
『いやいやいや、部下と寝るのは…流石に…』
大丈夫、大丈夫と今にも寝てしまいそうになりながら呟く。
とりあえずベッドに寝かせなければ、と立ち上がり齊藤を支えながら起こす。
なんとかベッドに寝かせて離れようとするとぎゅっと裾を掴まれ離してくれない。
『さい…京子、起きてるでしょう』
「ふふ、ばれた?」
『さっきと力加減違うじゃん』
「ね、ほらここ、あいてるよ」
『はぁ…京子にはかなわないな…ちょっと待ってて髪の毛乾かしてくる』
「はぁーい」
急いで髪の毛を乾かして寝室に戻るとスペースを半分あけて寝息を立てる京子がいた。
起こさないように横に寝転がるといちにんしょうの方に寝返りを打ちそのまま抱きつかれる。
「…なまえ、さん」
小さく呟いたいちにんしょうの名前にドキドキしながら京子の温かさに安心したのか気付けば深い眠りにおちていた。
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