《齊藤》
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誰もいない給湯室にいちにんしょうの声が軽く響く。
『ちょっ!っと、待ってください、いきなり無理ですよ、いちにんしょうですよ?!考え直してください!』
「まあまあ、何事も経験だって、この企画考えたのみょうじでしょ、自信もって」
『そんな事言われても…』
「それに、面子的に心配する要素ないから」
『え、あ!白石さん入ってくれるんですか?!』
「私は別のがあるから、ほら、この間の会議にもいた、あの、ほら!ラーメン好きとか言ってた!」
「おはようございます、齊藤京子です」
「あ、そう!齊藤さん!おはよう」
『……お、はようございます…』
「声、廊下まで聞こえてますよ?」
苦笑いで会釈してすぐに戻って行った齊藤さん。
先日いちにんしょうが提出した企画案が通り、そのままプロジェクトリーダーとして任されてしまった。
本来なら上司の白石さんがやるはずだったものを経験といいいちにんしょうに一任したのだ。
そして、同じこのプロジェクトに関わる後輩、齊藤…。
正直何考えてるかわかんないし仕事の仕方もいちにんしょうとは違う、なのに何故ここまで自信を持って勧めてくるのか分からない。
不安しかないこの先、とりあえず今日は残業確定だ…。
ただ1人、黙々と就業時間を過ぎても作業をする。
任されてしまったからにはきちんとやり遂げなければならない。
必死にパソコンに向かって居るとかつ、かつ、と足音が聞こえる。
皆帰ったはずなのにおかしい…普通に怖い、強盗?!いや、心霊的な何か…!?
振り向く勇気なんかあるわけない、気にしないように気にしないようにと、パソコンに目を向け続ける。
足音が少しずつ近くに来てる気がする…ふっと顔のの横を手が通り過ぎてコツ…と置かれたのは缶コーヒー。
ビクッと肩を大きく揺らして振り向くとそこに齊藤さんがいた。
「あははっ、ビクって!大丈夫ですか?お疲れ様、ふふ、ははは」
『ぇ、えっ、なん、なんでいるの!』
「ふふ、ははは、ダメだ、ちょっと待っ、待ってください」
いちにんしょうがびっくりしたのがツボにハマったのかずっと爆笑している。
仮にも先輩に対して失礼じゃないか…?
「あー、面白かった」
『で、なんでこんな時間まで?帰ったんじゃ…』
「なまえさん残して帰るとかなくないですか?」
『…は?いやいや、だってこれいちにんしょうの仕事だし』
「そういう問題ですか?そんな私頼りないですか?」
『そうじゃないけど…』
「だったらもう少し頼ってください、てか、それ私がやった方が早いです、やりますよ、んで今日はもう帰りましょ」
『え、いや、あの』
「私がいるから、大丈夫です」
『その自信どっからくるの…』
「ふふ、それは内緒」
人差し指を口元にニッと笑う齊藤さんは少し可愛かった。
「プロジェクト、成功したらご飯行きましょ」
『え、それ、もしかして…』
「もちろん、奢りで!」
『容赦ないなぁ…』
「絶対成功させるんで、覚悟しててください」
『…だからなんなの、その自信』
数ヶ月に渡るプロジェクトで齊藤さんとの距離が大いに縮まり、京子と呼ぶようになり、プロジェクトは大成功し、京子からの好意を伝えられたのはまた別の話。