《遠藤》
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先輩は覚えてますか、初めて会った時の事。
誰もいない図書室で、勉強していた私に声をかけてくれたこと。
人見知りの私が吃驚して泣いてしまったこと。
あの時からずっと気にかけてくれたこと私は忘れません。
だから、今日この日にあなたに言いたいです。
────
クラスメイトとはあまり溶け込めず入学してからずっと図書室で1人勉強に励む他なし。
ここは静かで、誰も来ない。
シャーペンを走らせる音がカリカリと響く中ノートに影ができる。
『ね、なんの勉強?』
「ぇ…」
知らない人、気付かなかった、え、誰?!ネクタイの色的に先輩…!?
どうしよう!?勉強?これ、なんの勉強?!
『え、うわ、ごめん泣くと思わなかった、ごめんごめん』
「え、あっ」
先輩だと思われる人は自分のカーディガンの袖を伸ばし私の涙を優しく拭いてくれる。
『ごめん、ハンカチとかなくて…あと驚かせてごめん』
「こちらこそ…汚してしまって、あの…」
『あ、なんか、外から見えて、気になって来たら勉強してるぽいから』
「外…」
確かに図書室の窓からはグラウンドが見える。
夏場は窓を開けた時気持ちいい風が入ってくるのがお気に入りだった。
『いちにんしょうね、よくあの辺散歩してるの、暇つぶしに』
「そうなんですか…」
『こう、ボーッと歩いてたら、ここに、可愛い子がいたので来てみました』
「え゛…」
にこにこと笑う余裕そうな先輩に顔が熱くなるのを感じる。
「冗談やめてください!」
『ごめんごめん、ねえ、いちにんしょう、みょうじ なまえっていうんだけど、また遊びに来てもいい?』
「…勉強の邪魔しないなら」
『もちろん、たまに話し相手になって、えっと、遠藤さん…?』
「…遠藤、さくらです」
それからなまえさんは私がいる時になほぼ図書室に顔を出した。
たまには勉強を教えてもらったりもした。
普通の世間話が楽しくて、気付いたら好きになっていたのだと思う。
そんな1年もあっという間に過ぎていく。
『もう明日が卒業だ〜』
「…嫌なんですか?」
『嫌っていうか、寂しいよ』
「なまえさん、クラスの人とも仲良いですもんね」
『ん?クラスメイトは別に。さくらと会えなくなるのが、だよ』
「え?」
『楽しかったのになぁ〜』
期待させるような言葉。
これも冗談、真に受けちゃダメだ。
そう思っても顔は少し暑くなる。
なまえさんが私に手を伸ばす。
『ん?大丈夫?』
「大丈夫です…!!」
『ぁ、そう』
やば、冷たい態度とっちゃったかも…
「あの、明日って、放課後予定ありますよね」
『あー、まあ、一応』
「ですよね、なまえさん意外にモテてますから告白の行列出来ちゃったりして」
『あはは、なにそれ、さくらは明日ここに来ないの』
「…いるかもしれないです」
『そっか』と何故か満足そうに笑うなまえさんに私はまた言えなかった。
明日が、ラストチャンスだ。
放課後卒業式も終わって静かな図書室に来る。
なまえさん、誰かと会ってるのかな、私も会いたいって言えばよかったかな。
図書室の扉が開く音がする。
『あ、やっぱりいた』
「ぇ、どうして放課後予定、あれ」
『うん、放課後はここに来る予定、さくらと最後に会いたくて』
「…あ、あの」
少し汗をかいたなまえさんの手を両手でつかみ息切れして肩を揺らすなまえさんの目を見る。
「先輩が、好きです、」
「声掛けてくれて嬉しくて、毎日のように私と話してくれて」
「でも、なまえさん優しいから気使ってくれてるんだろうなとか」
「でも、もう今日しか言えないから」
「…大好きです……!」
言えた。
私の目頭は熱くなってきっと次に息を吸う時には涙が出ちゃうだろうな。
『ぁ』
なまえさんがそう呟くと私の目から涙がこぼれ落ちる。
「ごめんなさい、泣くつもりじゃ」
『これじゃあ初めて会った時と同じだあ』
「え…」
『あ、でも今日はハンカチあるよほら』
持っていたハンカチで優しく拭いてくれる。
『いちにんしょうも好きです』
『好きになってもらえるように、毎日のように図書室きてみちゃったりして』
『卒業はするけど、会いに来たい』
『大好きだから、付き合いたいです』
信じられなくてまた、私の目から涙がぼろぼろと落ちる。
先輩があわあわと抑えてくれる。
ハンカチで拭いてくれてると思いきや先輩の顔が近くになる。
そして一瞬唇に触れる。
『あ、泣き止んだ』
「……!!ずるいです!」
『さくら』
「…なんですか」
『ありがとう、好きって言ってくれて』
「え…?」
『脈ないのかなあって思ってたからさくらから言ってくれて嬉しかった、ありがとう』
優しく抱きしめられる。
私はこれからもこの人が
「大好きです」