《加藤》
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学校にはスクールカーストがある。
その中で最も目立ちいいランクとされるのが一軍でいちにんしょうが最も苦手する人達である。
「としちゃんまた告白されたって本当?」
「ぅえ!?なんで知ってんの?」
「本人が自ら喋ってたよ」
「何それ、最低〜」
いちにんしょうの席の前の佐々木久美と話すためにいちにんしょうの机に腰をかける加藤史帆、今最も苦手な人。
『邪魔くさ…』とつい漏れた独り言に反応する。
「ん…?あ、ごめん、邪魔だよね…」
「みょうじさんの声久しぶりに聞いたかも〜」
「え、確かに、もっかい何か言って〜」
『…』
午前の授業で音読してたわ、と無視をして下を向く。
「…ありゃ、黙っちゃった」と覗き込まれそうになりつつも丁度チャイムが鳴って助けられる。
学校が終われば夕方からコンビニのバイトにはいる。
暇だからこそ始めたバイトもまあまあ慣れた。
22時前、流石に外は暗くて近所には飲み屋も多く酔っ払いがフラフラと歩いているのが目に留まる。
お疲れ様です、と一言引き継ぎの人に声をかけ着替えて裏口から出たところで酔っ払いに女の子が絡まれていた。
女の子、というのは間違ってはいない、ただそれがいちにんしょうの知っている人物であったら…思わず凝視してしまう。
「離してください…!」
「いいじゃん、お姉さん可愛いし2軒目付き合ってよ」
「未成年なので…」
「大丈夫、大丈夫ジュース奢るから、ね?」
酔っ払いの掴んだ手はじりじりと飲み屋街の方に加藤さんを連れていこうとする。
道行く人は誰も助けようとはしない。そりゃ、そうか、だって面倒事には巻き込まれたくないもんな。
いちにんしょうもそう思いながら小さくため息をついて、次に深呼吸をした。
『あれ、ここでなにやってんすか?』
「は?誰だお前」
『え〜、こっちのセリフなんですけど、この子嫌がってるし、警察よんだんでもうすぐ来ると思うんですよね』
「な、何余計なことしてんだよ!」
『あれ、余計なことでした?それは警察に話してもらっていいですか?』
酔っ払いの手を掴み彼女の手から離れさせる。
彼女の手には代わりに自分の手を握らせる。
『いいから早くどっか行けよ』
「…ッチ!!クソが!」
なんともよくある捨て台詞を吐いて後ろ姿を晒す酔っ払い。
空いてる片手でさようならーと手を振っているともう片方の手に圧力がかかる。
「あの…ありがとうございますっ…!!」
『いえいえ、立ち去ってくれなかったら走って逃げるところでした、では』
「まっ、て!…みょうじさん、だよね?」
『やっぱり気づかれちゃいました?では、いちにんしょうはこれで』
駅に向かいたいのに向かえないのは彼女が握った手を離してくれないからである。
『手、離してもらっても…?』
「単純って思うかもだけど、好きになったの…」
『…は?』
「だって!気になってた人が今日こうやって助けてくれて…好きにならないわけなくない?!」
『いや、え、困りますとりあえず手離して…』
「じゃあ、明日学校で話しかけていい?」
『じゃあって…助けたのは偶然だから…』
「こんなにドキドキするなんて、今までなかったもん…ねえ、ししじゃだめ?」
確かに顔はいい、だけど、あくまでクラスメイト。
なんなら苦手な一軍キラキラ女子。
そんな子をいちにんしょうが相手にできるわけがない。
『他を当たってください…』
「諦めないから…!明日も学校で話しかけるから!」
『…好きにしてくれ』
この一言でその場は帰してもらえたものの次の日には学校での加藤さんから猛アタックが来ることをいちにんしょうはまだ知る由もなかった。
そしてこの時に戻れるなら、もっときちんと断るべきだと後悔するのだ。