《加藤》
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アイドルに興味はなかった、ただ幼馴染に誘われて行った握手会にイヤに綺麗な子がいて、一目惚れ的な感じだったのだと思う。
次のシングルから自分から握手会に応募してみた。
その為にバイトも増やした。
加藤史帆以外のメンバーはあまり知らない、ただ彼女の事だけは誰よりも知ってる自信はあった。
初めての握手会を今でも覚えている。
「初めまして〜」
『あ、こんにちは、その』
「名前はなんていうの?」
『なまえです!』
(お時間でーす)
「なまえちゃん!覚えたからまた来てね」
『またっ、必ずっ!』
あっという間だった。
それ以来行くと必ず覚えてくれていてすごいプロ意識だとも思って益々好きになった。
この日はバイトが早く終わって14時頃帰り道、たまたま新宿を歩いていた時だった。
ただ、目的もなくルミネなんかをぼーっとしていて、この服史帆が好きそうだなとかそんな事を考えていた時に不意に後ろから声を掛けられた。
「なまえちゃん…?」
『えっ』
独特な喋り方でで毎日のように聞いてる声がいちにんしょうの名前を呼ぶ。
勘違いだ、きっと妄想がそうさせている、と振り向けば紛うことなき推しがそこにいた。
「やっぱり!なまえちゃん!」
『え、えっ、なんで』
この場合って逃げた方がいいのだろうか、あくまでファンとアイドルだし。
お金も払わず会話なんて、しかもこんな公衆な面前で。
「買い物してるの?ここの店が好きなの?」
『いや、違くてっ、かとしはなんでっ』
「今日オフだったからなんとなーく新宿来たらなまえちゃんに会えた!これから暇だよね?」
『は、へぇ、そうなんだ、暇っていうか、まあ』
「遊びに行こ!」
『え!?』
握手会以外では触れることはなかった手を彼女から握られ引っ張られる。
連れてこられたなんだかお洒落なカフェ。
普段もここに来ているのだろうか、誰と?メンバー?それとも…
考えちゃダメだと下を向くとメニューを渡される。
「何にする?なんかここ、可愛いから入ったけど初めて来たから緊張する」
『え、行きつけとかじゃないの』
「そんなのないよ〜、あ、緊張してるのはなまえちゃんとだからかな…」
『……こんな所で釣ってこないでよ』
へへっといつもの見た事ある顔で笑う、うん、可愛い。
「このおすすめにしようかな」
『じゃあいちにんしょうも同じので』
「違う味にして半分こしよ!なまえちゃんはこっちの味ね!」
『あ、はい、それで』
無事に注文を終えて改めて大変な事をしてる気がして手汗をかく。
おしぼりで手を拭きながら視線を下げて声を出す。
『大丈夫なの、こういうの、マネージャーさんとかに怒られたりしない?』
「…怒られるようなことしてないよ?」
『いや、してるよ!ファンとっ、遊ぶとか…』
「じゃあ今から友達になってくれる?」
『ぇ…』
「それなら問題ない?それともなまえちゃんはししと友達にはなりたくない?アイドルのししが好き?」
『どんな史帆も好きだよ…でも』
「大丈夫、何かあってもししが守るから、だから、これ」
そう言って携帯を取り出して連絡先のQRコードを渡される。
慌てて自分の携帯を取り出して読み取る。
「ししの好きな所送って」
『…スタンプじゃダメ?』
「だめ〜」
『いっぱいありすぎて、今送りきれない…かも』
少しビックリした表情をして「そういう所だよ」とポツリとこぼす。
「仕方ないからスタンプでいいよ」と顔を赤くしていちにんしょうに言った。
適当にスタンプを送ると頼んでいたものが届いて2人でシェアをしながら食べた。
会計の時財布を出せば「ししが無理矢理誘ったから!」と出させてもらえなかった。
『次どっか行く時は、出させてよ』
「次も会ってくれるの…?」
『今は友達だから…たまには…』
そう、友達だから。
それも今はまだ。
「今は、ね…」
『じゃあ、駅まで送るよ』
「ししがなまえちゃんに気付いたの、偶然とかじゃないよ」
『どういう意味…?』
「なまえちゃんの事考えてたって意味」
『…友達釣らないでくれる?』
いちにんしょうたちは今日友達になった。
ファンとアイドルを越えて、いつか互いが本当の気持ちに気付くのはまだ先の事だった。