《美穂》
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社畜というのは大事に日に限って寝過ごしてしまう。
いちにんしょうも例外ではなくここ最近12日間の連勤の明け、久しぶりの恋人とのデートに今、遅刻している、それも1時間以上。
起きた瞬間の血の引けようったらなかった。
恋人からの連絡もなく慌てて通話をかける。
「…もしもし?」
『美穂っ!?ごめん、今、起きてそれで、すぐ、行くから!』
「いや、もういいからなまえも疲れてると思うし、分かってるから、家で待っててくれる?」
そう、こちらとは正反対に冷静に言われ通話を切られる。
確かに疲れてた、でも美穂も同じ社会人で疲れてないわけないし、それを言い訳に寝坊で遅刻なんてデートあったらダメだろ…と猛省する。
とりあえず、顔洗って歯磨きするかとベッドから立ち上がり、今まで散々放置したであろう社畜の汚部屋を見て見ぬ振りをする。
美穂とのデートもなくなってしまって、多分振られるんだろうななんて、考えているとチャイムが鳴る。
インターホンを見れば恋人の姿。
慌てて鍵をあけ招き入れる。
『え、待って、どういうこと?今日って、え…?』
「お家デートしよ、ご飯まだでしょ?お昼ご飯作ってあげる」
『え、それは、嬉しいけど、だって怒ってるんじゃ』
「ってか、きたな〜、仕事忙しくてもゴミくらい出しなよ〜またカップ麺生活したでしょ〜」
『ごめん、なさい…』
何がなんだかわからず美穂が家にいてキッチンでご飯を作っている。
その間いちにんしょうは部屋の掃除、というか山積みの本とかを各所に戻す。
「もうすぐ出来るけど、そっちどう?切りよさそう?テーブル拭ける?」
『あ、うん、ありがとう』
「どういたしまして〜、食べよ〜みほちー特製チャーハン!」
2人で並んでチャーハンを食べる。
めちゃくちゃ美味しい。
『うまっ…!!』
「へへ〜、嬉しい、おかわりあるから」
『ほんとに美味しい!いくらでも食べれる…!』
「褒めすぎだよ」
『っ…あの、さ、今日っ』
「ついてるよ」
そう言っていちにんしょうの口の端についたご飯粒をとってそのまま美穂の口にはいる。
普段絶対そんなことしてくれないくせに、妙な恥ずかしさがあった。
「食べたら掃除の続きしよ」
『え、それでいいの…?』
「?うん、掃除が終わったらー…あ、いちにんしょうが観たかった映画配信されてるって!」
『あー、こないだ言ってたやつ!観たい!』
「みよみよ〜」と食べ終わったお皿を片付けにキッチンに行く。
いちにんしょうは掃除機をかける。
2人でやると掃除は直ぐに終わった。
ソファは2人がけ、近くに人をダメにするクッションがある。
美穂はいつも1人でクッションを背にして映画を観るのに今日は何故か呼ばれてクッションに埋もれさせられる。
いちにんしょうの膝の間に座り満足そうな美穂。
人をダメにするクッションといちにんしょうをダメにする恋人にサンドされ映画どころではない。
ずっとくっつきながらの映画鑑賞もあっという間に終わり美穂が「お風呂借りるね」と風呂場に行く。
『あの、なんでそんな感じなの?』
「ん?私なんか変?」
『普通寝坊で遅刻で、こんな色々やってもらって…怒ってこないし…』
「なに〜怒られたかった?」
『そういう訳じゃないけど…その方が気持ち的には、楽というか』
「じゃあ、あとでひとつだけお願いきいてくれる?」
『お願い…?』
「うん、だめ?」
『いちにんしょうに出来ることならいいけど』
「ふふ、やった、じゃあお風呂行ってくる」
ニコニコと風呂場に送り出し交代でお風呂に入って髪の毛を乾かし合う。
同じベッドに横になってやはり一日では仕事の疲れがとれなかったのかすぐに眠気に襲われる。
いつものように腕を美穂に差し出すと「今日は違くて」と戻される。
「お願い、きいてくれる?」
『さっき言ってた?』
「うん、今日は私がなまえに腕枕したい」
『…え?』
「いつもしてもらってばかりだから」
『いや、腕痛くなると困るし、いいよ』
「おねがいきいてくれるんでしょ?」
『えぇ…うぅん…じゃあ』
「はい、どうぞ」
腕を伸ばされる。
少し遠慮がちに頭を乗せると反対の手で撫でられる。
『大丈夫?痛くない?』
「全然平気」
『…満足したなら代わるよ?』
「今日はこのまま寝まーす」
いつもと逆の寝方になんだか恥ずかしくなって軽く下に顔をさげる。
すると優しく包まれて美穂の匂いが胸いっぱいに入り込んでくる。
『落ち着く…』
「いつもお仕事お疲れ様、頑張ってるの知ってるよ、いつだって甘えていいんだよ」
『…美穂も甘えないじゃん』
「いっつも私の事甘やかしてくれるのなまえくらいだから、たまにはさ、甘えてよ」
「…彼女なんだし」
『…たまには、ね』
美穂の匂いと温かさに安心して瞼が重くなりそのまま眠りにつく。
いつもは美穂の寝顔を見る側だけど今日くらいは見せる側でもいいのかな、とたまには甘やかされるのも悪くないなと思った。