<白石BD>
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
‘誕生日おめでとう’
昼過ぎにきたメッセージはあまりにも素っ気なく感じる。
付き合ってすぐの頃は日付が変わった瞬間に電話なんてしていたのに、時が過ぎるのは残酷だと29歳になった今日恋人からのメッセージに少し落ち込む。
素直にありがとうと返せば今度いつ会える?とすぐに返ってる。
ドラマの撮影も落ち着いて暫くは余裕が出来そうだったからなまえに合わせるよと伝えればまた連絡するとあっさり切られてしまう。
誕生日だからといって浮かれていても仕方ない、今は目の前にある仕事をやるしかないのだと気合を入れ直す。
仕事が終わったのが20時過ぎ。
マネージャーさんに家まで送ってもらう。
今から連絡すれば一緒にご飯くらい食べてくれるだろうか。
それとも今日も残業かな。
携帯を握りしめて祈るように唸っていると画面が明るくなる。
‘お疲れ様!今仕事終わったんだけど、ご飯だけでも一緒にどうかな?’
メッセージを開いて返信を打ち込むなんてことより先に通話ボタンを触る。
「も、もしもし!?」
『あ、まいちゃん誕生日おめでとう~』
「ありがと!今どこ?!」
『会社出たばっかりだよ~』
「すぐ行くから!待ってて!」
すぐにマネージャーさんに行き先を変えてもらう。
去年も一昨年もここ数年忙しくさせてもらっていたから会うことすら出来なかった。
なまえの誕生日も他のイベントもお互いに忙しくて滅多に会えなかった。
20分程で着いてマネージャーさんに御礼を言い降りてなまえを探す。
『まいちゃん』と私を呼ぶ聞き覚えある声に振り向くと手をヒラヒラさせるなまえがいた。
『誕生日おめでとう、今日もお疲れ様、とりあえずコレ』
「ぁ、ありがとう、可愛い花…嬉しい…!」
『まいちゃん…?!どうしたの、え、泣かないで』
「だってぇ、こんなの、泣いちゃうよ〜」
『早い早いまだ何もしてないから!あ、ケーキ屋さんまだやってるかな…もう閉まっちゃってるかなぁ…』
「…なまえ、会いたかった」
『ん?ふふ、いちにんしょうも、今日泊まる?』
「いいの…?」
『元々久々に会えて更に可愛くなった彼女を帰そうとは思ってないよ』
ドヤ顔で私の手を握ってタクシーをとめる。
車内でもずっと手を握ってくれる。
そして、どことなくソワソワしている。
『あ、ご飯どうする?家何もないかも』
「スーパーで何か買って帰る?私何か作ろうか」
『流石にまいちゃんに作らせるのは…あー、でも久々にまいちゃんの手料理食べたい…』
「作る…!作りたい!」
『いいの〜?すっごい楽しみ、あ、すみませんそこのスーパーで停めてください』
スーパーで買い出しをして家に着いてなまえがお風呂に入ってる間に私が料理を作る。
ある程度作り終えた頃交代で私がお風呂を借りる。
ご飯を食べる時には22時がまわっていて『遅くなっちゃったね』なんて笑っていた。
遅くなったとしても仮に日付が変わってもきっとこんなに幸せな時はこないだろう。
好きな人が隣にいる誕生日が何よりも幸せ過ぎている。
2人でいただきますをして、美味しいと笑いながら食べるなまえが愛おしくて仕方ない。
お腹がぺこぺこだったからかあっという間にほぼ完食に近づいていた。
『ぁー、おなかいっぱい幸せだあ』
「ふふ、沢山食べてくれて嬉しい」
『だって美味しすぎるんだもん』
よっこいしょ、と立ち上がったなまえが棚の引き出しから箱のような物を取り出して私の目の前に置く。
1つは正方形に近いもの、もう1つは携帯くらいの少し平べったい箱。
『はい、どうぞ』
「これって」
『誕生日プレゼント、気に入ってもらえるか分かりませんが。』
「2個もいいの…?」
『2個でも足りないくらいだよ』
「どっちから開ければいい?」
『お好きな方から』
「じゃあ、こっち」
正方形ぽい物から手を伸ばして開けていく。
アクセサリーで、多分だけど指輪なんだと思う。
そこにはシンプルながらも私好みの普段もつけやすいデザインの指輪。
『サイズ、多分大丈夫だと思うんだけど、はめてみてもいい?』
と私の手をとりゆっくりと指輪を通す。
手を開いたり閉じたり天井に向けてみたり。
「ピッタリ…ありがとう、嬉しい…」
『よかった、可愛い似合ってる』
「私の好み…普段からも付けやすい」
『うん、まいちゃんのこと考えて選んだから、いつも付けてくれると悪い虫も寄ってこないかなって』
「私はなまえだけだよ」
『知ってる、いちにんしょうだけのまいちゃんっていうのを見せつけたいだけ、だからもう1つも開けてみて』
「指輪だけでも幸せなのに、もう1つあるとか幸せ過ぎるね」
もう片方はラッピングなどはされてなくてそのまま箱を開ける。
「キーケース…?」
『そう、まいちゃんぽいかなって、触ってみてよ』
「可愛い色…」
手に取ると金属音がして、既に鍵がついている。
それは私の家の鍵ではなくてたまに預かる程度のなまえの家の鍵のように見える。
「え、これ」
『まいちゃんが良ければ持っててほしい』
「いいの?!」
『ここ数年ちゃんとお祝いできてなかったし…イベントとかも仕事だったから少し寂しい思いとかもさせてたのかなって』
「そんな、なまえが頑張ってるの知ってるし」
『…というより、いちにんしょうがまいちゃんにもっと会いたかったっていう、だからいつでも使ってほしい』
「毎日会いに来るかもよ」
『それが狙いだったりして』
手を引かれてなまえの膝の上に乗せられ抱き締められる。
『これからは、一緒に2人の事考えていきたいんだけどダメかな』
「ダメじゃない、嬉しい、ありがとう」
『まいちゃん、好きだよ』
「私も大好き」
どちらともなくキスをする。
1/1ページ