キミのコトだから<飛鳥>
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ずっと静まり返った空間でペン走らせる音ノートをめくる音、パソコンのキーボード音が軽く響く。
そして急になったお腹の音。
『ん、お腹すいた、飛鳥ちゃん休憩』
「早くない?」
『もう17時!おやつ!』
「今食べたらご飯入らなくなっちゃうよ」
『あ、そか、ご飯おそめにしよっか』
「帰るの遅くなると心配するよ」
『20時までに連れてこいって、間に合うかな?』
「時間的に無理でしょ」
笑いながらお菓子を物色する。
特に食べたいものもはない、ってなると我慢しかない。
「今から適当に私が作るからそれご飯にしよ」
『え、飛鳥ちゃん作れるの大丈夫?』
「馬鹿にしすぎ、一応家で手伝ってるし」
『あ、UVERしよ!あれ便利なんだ〜』
「私の手料理じゃ不満なの?」
『飛鳥ちゃんの勉強の妨げになるかと思って…』
「殆ど終わってるし明日も来るし…今日くらい平気」
『じゃ、お願いしようかな、手とか気をつけてね』
冷蔵庫を、あけるも何もない、ビックリするくらいなにもはいってない。
これで何を作れと…?…残飯?
「なまえ、買い物行ってくる」
『え?なんで』
「冷蔵庫!なにもないじゃん!馬鹿なの?!」
『そ、そんな怒らなくても、そっかなかったか、ごめんごめん』
「…本当だらしないんだから」
『ああああ、ちょちょちょ』
「なに?」
さっきから引き止めてきて手を触られる。
え、なに、指輪?
『どうせだからご飯一緒にいこ、レストラン〜』
「はあ?なにこの指輪」
『ちょっと大人ぽく見えるかなぁって、うん、飛鳥ちゃんに似合ってて可愛いよ』
そんなに褒められても子供扱いには変わりなくてなんだがムカつく。
近所に美味しいお店があるというから素直になまえに着いていく。
確かにそこは美味しくてリーズナブルでまた来たいと思った、そしてなまえちゃんはここに彼女さんと来たのかななんて、要らぬことを考えてしまう。
『飛鳥ちゃん美味しい?』
「んっ、美味しい、珍しくいい店知ってるね」
『ふふふ、でしょ、飛鳥ちゃんの食べたそうな所調べたんだ〜』
「え、彼女さんと来たことないの」
『ないよ、今、今日が初めて』
「ふぅん…」
安心というか、私の為って言われるとやっぱり勘違いくらいしたくなる。
じゃあ、今後この店彼女と来るのかなとか、もうずっと、この、モヤモヤ感が消えない。
嫌になる。
『飛鳥ちゃん帰ろっか』
「ぁ、はい」
『なんで敬語?』
スっと出口に向かうなまえはあまりにスマートで「お会計は」と声をかければシーっと指先を立てられる。
「ちょっと、お会計した?」
『したよ、飛鳥ちゃんが気付かぬうちに!』
「どやってる場合じゃないから!払う!食べた分くらい!」
『いいよ、美味しかったでしょ』
「美味しかった、、」
『そう言って貰えたらいちにんしょうは満足だよ』
「ありがと、ご馳走様でした」
『もう20時になるから送るよ』
先を歩こうとするなまえに思わず抱きついていた。
この公園が過ぎればこのまま家に送られてなまえは彼女に会うんだ。
自分でも分からないがどっか行っちゃう気がして。
『飛鳥ちゃん大丈夫?おんぶする?』
「いや、しないわ、もう少し、このまま」
『仕方ないねえ、でもちょっと…』
腕を外してこちらを見て少ししゃがんで私を包み込んでくれる。
優しい温かさ、なまえの匂い。
全部好きだ。
ずっと、好きで私の方が先に好きになったのに、なんで彼女なんて作ったの、私が子供だから?好き過ぎて、思いが溢れそうだった。
だった、だとしたら良かったかもしれない、自然に静まり返っている暗闇に私の声が響いた。
「好き」と漏れてしまった声がなまえ届いたのか分からない。
なまえから聞こえる鼓動が早くなった気がする。
どうしよう、間違えて声に出してしまった。誤魔化す…?どうやって。
「ぁ、好きって、どんな感じ?」
『え、あぁ〜そういうこと?好きって言われたのかと思って焦った〜』
「あ、はは、」
好きだよ、今誤魔化してるんだよ、分かってよ、バレたくないのにバラしてしまいたい、私の中にあるこの感情が何よりも嫌いだ。
『好きはね、特別だよ』
「特別…」
『彼女も特別なんだけどね~、いちにんしょうにはもう1人いるからこれって浮気かな?!』
「彼女さんが可哀想」
『だよね、どっちからも好かれたいなんてずるいよね』
「別れてもう1人の方と付き合わないの」
『付き合いたいよ、でも振られたらこわいじゃん?だから一番近くにいれるように守れる場所にいるの』
ぱっと手を離して『帰ろ』と歩き出す。
大幅で隣を歩くとなまえは悲しそうな笑顔で『1人になっても飛鳥ちゃんは一緒にいてほしいな』なんて言った。
その言葉の意味がわかるのは先の事だった。
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