付き合い始めて数ヶ月肌寒くなってきて、この関係性にも大分慣れた。
史帆は人前でも甘えたがるし他の女子と話せばわかりやすく嫉妬をする。
2人きりでいる時もくっついてくる、が、いちにんしょうが触ろうとすると何故か拒む。
キスもそれ以上もなんとなく拒否される。
これが倦怠期というやつなのか…。
頭を抱えて悩んでいると嫌な気配。

「なんや、暗い背中してんな」
『やっぱり、なおだった』
「なに、待っててくれたん？でもごめんやけど、まなもがおんねん」
『ぇ？』

サラッと流したけどなおとまなもが？付き合ったの？いつ？！えぇ！？

「この間2人で帰った時告白したんよ」
『そ、そうなんだ、初耳』
「まなもから聞いてると思ってた 」
『いや、なにも、その事の方が衝撃なんだけど』
「一目惚れって言うたやん、まあええけど、何かあったん？」
『史帆に…避けられてる気がする』

少し考え下を向いて肩を小さく震わせる。
「ふふっ…くっ…」と笑い声が聞こえたと思ったらお腹を抱えて笑い出すなお。

「こんな学内でイチャついてて避けられてるはないわ！」
『本当なんだって！そりゃ外ではこんなだけど…家だとなんかおかしいんだよ！』
「おかしいって、なにが」
『いちにんしょうが近づくと変に距離とられるし、触ろうとしたら逃げるし…キスとかも…できないし…』
「欲求不満なん…？」
『違う！そういうことじゃなくて…』

そりゃ、キスできないとか抱きしめられないとか多少の不満はある。
そういう気持ちにならないこともない、けど好きな人の嫌な事はしたくない。
もしかして気づかないうちに嫌われるようなことをしてしまったのか…？とも思ってしまう。

「としさんに聞いたらええんちゃう？」
『聞けたらこんな悩まないだろ…』
「確かに、じゃあ強行突破してみるとか？」
『嫌がることはしたくない』
「わがままやんなぁ〜、そもそもレスになったくらいで悩み過ぎや」
『…レス以前にしたことないが？』
「え、ほんまに？」
『ほんま』

真顔でため息をつかれ、呆れたように見られる。
そして一言「飽きられたんちゃう？」


───

「おかえり〜」
『ぁ、ただいま…』

今日金曜日か。
曜日感覚なんてなくなってた。
週末はたまに泊まりにくる史帆がご飯を作って待っててくれる。
コンビニに来て公園で待ち合わせなんてこともずいぶ前になくなった。

「あれ、元気ない？疲れてる？」
『ぇ、いや、なんでもないよ』
「そう？お腹すいてる？先お風呂の方がいいよね？」

いちにんしょうの方に寄ってきて脱いだ上着を奪い取ると嬉しそうに匂いを嗅いで「ふふ、なまえの匂いがする」と目を細める。
それと同時になおから言われた「飽きられたんちゃう？」という言葉が脳裏に浮かんだ。
両手で上着に顔をつける史帆をそのまま抱きしめる。
一瞬反応したけどすぐ大人しくなる。

「…なまえ？」
『飽きちゃった？』
「ん？なにが？」
『いちにんしょうに触られたりするの嫌になるくらい嫌いになった？もう好きじゃなくなった？』
「ちょっと、まって、なんの話？」
『最近、2人でいる時避けるじゃん』
「そう、かな…」

その曖昧な返事にやっぱり飽きられたのかとゆっくり腕を緩めて後ろに下がる。そのまま風呂場に向かおうと背を向ける。

『ごめん…お風呂はいる』
「ちょ、と！まったぁ！！」
『無理はしてほしくない、』
「無理してない、ちゃんと話聞いて」

後ろからゆっくり抱きしめられる。
史帆の手に合わせて両手を重ねれば少し震えていた。