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【狼さんの食前妄想】《アーサー×フィー@FEユグドラ学園》

2026/02/03 18:14
【お題】アーサー×フィー


 とある良く晴れた休日の午後。
「わー、みてみてアーサー、ホントにタイムズで父さまの特集組んでるよ」
 俺が寝転んでいるベッドの傍らに背中を預け、フィーが持参してきたユグドラルタイムズを楽しそうに読みふけっている。
 なんてことない日常のひとこま。
 昔ながらのふたりの過ごし方。
 心地よい風が窓から吹き込み、時折フィーのやわらかい猫っ毛をくすぐっていく。
「すごいねー、よく書けてる! 父さまに取材したわけでもないのに。パティってホントにジャーナリズムの申し子だよね」
 肘をついて頭を支えながら、フィーの見ているタイムズを覗き込む俺の位置からは、斜め上の角度の横顔しか見えない。
「あ、みてみてアーサー、ユグカフェの人気メニューの特集だ」
 ぱらりとページを捲る白い手。細い指。ちいさな爪。
「うわーおいしそー。来週から発売だって。ねー絶対食べにいこうね?」
 少し角度が変わって、長い睫毛がゆらゆら揺れるのが見えた。ページを捲っていた方の指が、何気なくくちびるへと動く。
 そしてそのまま、ぷに、という擬音が聞こえてきそうなほどやわらかいくちびるを、悪戯につまみ始めた。
 変わってないな、そのクセ。
「うー、全部美味しそうに見えるぅ……でもアレだよねぇ、新メニューを片っ端から食べてったら、絶対絶対ぜーったい、太るよねぇ……」
 ふう、と溜息をつきながら、何気なくフィーが髪を耳にかけた。
 それがこちら側の耳だったから、猫っ毛に隠れていた白い耳たぶがあらわになって、そこから続く首筋の線に、思わず目が吸い付く。
 ……うまそう。
「――あ、いーこと考えた。アーサーと半分づつ食べればいいんだよね。そっかそっか」
 肌理細やかな肌は、襟ぐりのおおきく開いたシャツに吸い込まれていく。
 ……フィーって、こんなに肌が白かったっけ?
 子供の頃は、一緒になってあちこち駆け回っていたから、どっちかっていうと、こんがり日焼けしてたような気がするけど。
 いつの間にか、真っ白になって。身体つきもまるく、やわらかそうに変わって、どこもかしこも細くてちいさい。
 ――ああ、ほんとにうまそう。
「ねーそういえば、来月のサマーキャンプ、アーサーも参加するよね?」
 ページを捲った動作で、また少し顔がこちらに傾いた。赤いくちびるが、すぐそこで動いてる。
「自主参加だっていうけど、大体みんな行くみたいだし。全学年合同だから、楽しそうだよね」
 ……そういえば、最近ちゅう、してないなあ……
 ちゅうっていうのは、当たり前だけどキスのこと。でも、キスってよりは、ちゅう、なんだよな。
 その昔、まだお互い幼稚園に通っていたころ、俺とフィーはちゅうにハマった時期がありまして。
 確か、フィーが自分とこの両親のキスシーンをたまたま見たとかで、おままごとの延長みたいなノリで、俺にちゅうをせがんだのが始まり。
 その時は、俺もまだガキだったから、だからどうってこともなく、ただフィーのことは大好きだったし、ぷちゅっとやわらかいくちびるの感触もなんか嬉しくて、せがまれたりせがんだりしながら、毎日ちゅっちゅちゅっちゅやってたっけ。
 ――いま考えると、むちゃくちゃ幸せな日々だったな。
「キャンプでは、色々イベントがあるんでしょ? 学生会主催だから、すっごい凝ってるって聞いたよ」
 そのうち、セティに見つかって、フィーの親父さんにバレて、なにをどう言いくるめたんだか知らないけど、フィーがもうちゅうはしないって言い出して……
 あの時は、この世の終わりみたいに感じたな。
 あれから十年以上かあ……
 したいなあ……ちゅう。
「副会長がね、なんか企んでるって噂を聞いたんだけど……知らない? 多分、ナンナがらみのことだと思うけどね」
 いまだったら、ちゅう、なんてかーいらしーもんじゃなくなるだろうけど。
 でも、気持ち的にはあの時代よりも、ずっともっとこめてるわけで。
 そもそも、子供のころ許されていたもんが、いまはダメ、なんて、そんな道理はないはずで。
「ねー、聞いてるー?」
 フィーが、赤いくちびるを少し尖らせた。
 長い睫毛が、ぱしぱし揺れてる。
 あと少し、ほんのちょっとだけ。
 上向いて。
 こっち見て。
 ――そしたら

「アーサーってば!」

 キスしてあげるから。



《お題15 『上を向いて』》
◎365 Themes Ver.1~創造者への365題~様よりお題拝借


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