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【あの日の約束】《ミシェル×キュラン@Xenogearsパラレル》
2026/01/26 16:27【お題】他CP
「キュラン、明日休みだよねっ?」
「えっ? ええ、そうだけど……」
「今日、午前零時、旧兵舎南館に来て!」
「ええ? ちょ、ミシェルっ?」
言うだけ言って、ばたばたと会議資料(と思しき書類)を抱えて走り去ったミシェルに、行く、とも行かない、とも返事ができずに、いまに至っている。
時刻は23時55分。
場所は旧兵舎南館前。
……寒いわ。
あたしは、アヴェの夜に備えて思いっきり厚着をしているにもかかわらず、芯から冷えるような夜の闇にぶるり、と身を震わせた。
……冷やすといけないんじゃなかったっけ?
ふと、そんなことを考えて、無意識に下腹部に手をあてる。
ごめんね、赤ちゃん。あと五分待ってもあんたのパパが来なかったら、速攻部屋に帰って、明日の朝パパをぶっ飛ばしてあげるからね。
そんなことを考えながら、腕時計に再度目をやった時。
「キュウっ! あーもうなに考えてるんだよそんな薄着でっ」
「へ?」
突然そんな声がしたと思ったら、がばり、と上から何かが被せられた。もこもこと温かなそれはおそらく防寒用のポンチョかなにかで、さらに帽子、ストールと温石を握らされる。
……いっくらなんでもあんたこれは。真冬じゃないんだから……あったかいけど。
着膨れたままあたしが呆れると、ミシェルは弾んだ息のままぐい、とあたしの腕を引き、施錠されている南館の扉へと向かう。
「ちょっと、鍵かかってるんじゃないの?」
「うん。大丈夫、借りてきた」
ちゃり、と鍵の輪を見せて、ミシェルがにっこりと笑う。なんでそんなに楽しそうなのかわからないまま、あたしは少しさび付いた音を立てる扉を開けて、暗い建物の中に入っていくミシェルについて、歩き出した。
懐中電灯を片手に、あたしの手を引いて歩くミシェルは、階段をどんどん上がっていく。
どこまで上がるのよってあたしが文句を言う前に、屋上に続く扉をがちゃりと開いて外に出た。
きん、と冷えた空気が肺を満たす。でも、さっきより断然温かい防寒具のあたしは、満天の星が瞬く夜空を見上げて、思わず声を上げた。
「わあ……!」
さっきは気づかなかったけど、いつの間にか星達は、まるでシャワーのように長く尾を引いて、次々に流れていた。これって……
「流星群だよ。今夜、零時がピークなんだ」
「すごい! 知らなかった……これを見せたかったのね?」
どこまでも透明なアヴェの夜。宝石箱をひっくり返したような満天の星たちが、放物線を描いて流れていく光景は、言葉に出来ないほど美しくて。
夢中で空を見上げているあたしの傍らで、ミシェルが少し緊張したような声音で言った。
「昔の約束……果たそうと思って、今日」
「え?」
きょとんとしてあたしが振り返ると、ミシェルは真っ直ぐあたしを見つめて、白い息を吐く。
「大人になったらきっと、キュウのために一等きれいな星、捕まえてあげる……って、約束したでしょ?」
「ああ……あの話? どうしたのよ、急に」
昔の話をすると、嫌がるミシェルなのに。突然そんな話を持ち出されて、あたしは思わず小首を傾げた。
あたしの視線の先で、ミシェルは壮大な流星群を見上げて、おおきな声を上げる。
「見てて!」
その声と、突然両手を天に突き上げたミシェルに驚いて、あたしは釣られて空を見上げた。星たちはどんどん流れていって、もしかしてひとつくらい、ここに落ちてきちゃうかも……なんて。
一瞬だけそんなバカなことを考えた瞬間、空を見上げるあたしのすぐ脇で、天に向かって差し出したミシェルの両手が、強烈な光を捕まえたのが目の端に映り、ぎょっとした。
「えっ?! な、なに??」
「キュウ! 手、手を出して!」
「やっ、なに、ちょっ……」
「早く!」
強烈な光が目を射して、まともにミシェルが見れなかった。急き立てられるまま、反射的に両手を差し出すと、ミシェルがそれをがしっと掴んだのがわかった。
「……え??」
その感触に、思わず目を開けて、眩い光にまた瞑る。赤く染まった瞼が、次の瞬間、ふっと暗闇を取り戻した。
「……もう、いいよ」
そっと。ミシェルが囁いて、あたしは恐る恐る目を開けた。
まだ、暗闇に慣れない目がちかちかするけど……あたしは、ゆっくりと左手を目の高さまで上げて、まじまじとそれを見る。
そこには。
左手の薬指には。
まるで、空から落ちてきた星のように輝く、綺麗な宝石がはめられていた。
「……」
あたしは、言葉もなくじっとそれを見つめる。星の石は、まるで最初からここにあるのが当たり前のように、しっくりと指に馴染んでいた。
「……キュウの星だよ」
ミシェルが、はにかんだように微笑んで言う。
それが。
なんか。
すごく……
「…………ぷっ」
気障で。
「ぷぷ……っふ、あ、あはははははははははははははははっ!!」
笑えた。
「……そこで爆笑しますか……?」
拗ねたような口調で、ミシェルが呟く傍らで、あたしは涙さえ流して笑い続けた。
ごめん、ミシェル。
でも、でも。
笑いが止まらないくらい、嬉しいよ……!
まだちょっと素直になれないあたしは、照れ隠しも含んだ笑いの発作をようやく治めた後、すっかり拗ねてしまった愛しい幼馴染兼婚約者に、心からの感謝を込めたキスを贈った。
《お題14 『天体』》
◎365 Themes Ver.1~創造者への365題~様よりお題拝借
