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【愉快誘拐犯】《セリス&ユリウス&ユリア@FEユグドラ学園》
2026/01/12 14:51【お題】他CP
目が覚めた時、覚えがある感覚だ、と思った。
わずかに疼痛を訴える頭。
ぼんやりとにじむ視界。
不自然に途切れた記憶。
…………またやられた。
「――殺してやる」
ぼそり、と呟く。
それにしても、気分が悪い。薬を盛られた直後の、このどうしようもない胸のむかつきはどうにかならないものか。
しかし仮に、気分爽快に起きれるからといって、一服盛られる不快感が消えてなくなるわけではないので、それは根本から矛盾した願いだが。
とにかく、いつまでもこんなところでぐずぐずしてはいられない。
経験則からいえば、もうそろそろ、あの悪魔がやって来るころだ。
いつもいつでも、ひとが目覚めたと見るやどこから沸いて出るんだというタイミングで顔を出してくる。過去、室内に監視カメラの存在を疑ったのは一度や二度ではない。だけどいままで、物的証拠は見つけられなかった。
――それではあいつは正真正銘、千里眼の悪魔なのだ。
気分の悪さが一層募って、がばりとシーツを蹴り上げた。
と、そのタイミングに。
「グッモーニン! 目覚めはサイコーかな?!」
ありえないテンションで突然部屋の扉が開かれると同時に、そこから飛び込んできたのは、いまこの手に殺傷能力の高い武器が握られていたら迷うことなく振り下ろしてやる憎々しげな悪魔の顔。
相変わらず腸の煮えくり返るほど陽気に、踊るような足取りで近づいてくる。
「どう、驚いたかい? 目覚めてびっくり! 高級リゾートに着いちゃった☆作戦だよ」
「死ね」
「うんうん、僕も会いたかったよ。新学期が始まってからこっち、ずっと忙しくて中々時間をとってあげられなかったからねえ」
「消えろ」
「でも、安心しておくれ! この大型連休は、たっぷりびっちり付き合ってあげるからね! 高校入って初めての連休だもの、いい思い出をたくさん作らないとね~」
もはや、反論する気力もない。
脱力した僕に構わず、悪魔は無駄にカツゼツの良い声で叫んだ。
「おーーーい、ユリアっ! ユリウス、目が覚めたよー!」
その声に、遠くでパタパタと足音がする。やがて、戸口に現れたのは、ほほを上気させて嬉しそうに笑う妹。
「ユリウス兄様、おはようございます」
「……」
「だいじょうぶですか? 何度起こしても起きなかったから……」
「ああ、心配ないよユリア。若い時はみんな眠いものさ」
強制的にひとを薬で眠らせたとは思えない言い草だ。
しかし、悪魔はけろりとした顔で、さらに言い募る。
「さ、ユリウスが起きたから、早速散策に行こう。この辺は、湖畔が美しくて有名なんだよ。サイクリングコースも整っているんだ」
「わあ、素敵」
心底嬉しそうに笑う妹を見ると、このまま不貞寝をしてしまおうと思っていたこころが揺れる。
認めたくはないが、この悪魔の(迷惑極まりない)行いで、妹の笑顔が増えることは、僕にとっても忍従するにやぶさかではない。
最近、特に高校に入学してからは、格段に表情の明るくなった妹だが、やはりこの悪魔が傍にいると、より一層その笑顔が輝く気がする。
――非常に良くない傾向だが。
「ユリウス、支度をしたらすぐにおいで」
吐き気がするほど爽やかに言って、悪魔が来た時同様颯爽と部屋を出ていった。残された妹は、おそらく悪魔が手を回したのだろう見覚えのある僕のスポーツバッグをドレスルームから持ち出してくる。
「兄様、着替えはどれにします?」
「……」
「兄様?」
「……ここ、どこ?」
「セリス兄様のおうちの別荘です。後ほど、伯父様たちもいらっしゃるんですって」
「……最悪」
「もう、兄様ったら」
くすくすとはにかんだように笑って、ユリアが僕のバッグから適当な衣類を出して寄越す。僕ははあ、と溜息をついて、大分マシになった頭痛を振り切るように頭を振った。
「ユリウス兄様。もしかして……セリス兄様のこと、苦手なの?」
おずおずとしたユリアの問いかけに、僕は言葉を失う。
……『苦手』とか、そんなやわらかい表現で収まるものだと思うのか。
はっきり言って、生まれる前から大嫌いだ。
……しかし。
「……別に」
「よかった」
僕のついた嘘に、心底ほっとしたように笑うユリアを前に、僕は今日もまた、山のようなストレスとわけのわからない充足感を抱える日々を迎える覚悟を決めるのである。
《お題10 『生まれる前』》
◎365 Themes Ver.1~創造者への365題~様よりお題拝借
コメント
🍵 (非ログイン)2026/01/25 09:27すみません、大好きです
あの、好きすぎてでっかい声が出ました……つい最近はじめて聖戦をクリアした者です。他の作品も拝読しましたが、わたしの読みたかったものすぎて感動しています。大好きです。衝動的にメッセージを送ってしまいすみません🙏応援しております🫶[ 返信する ]
