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SCANDAL-EXTRA③ Chapter7同時刻ホプユウ

2025/12/29 14:49
【お題】ダンデ×ソニア



 ホップとユウリが仲良く家にやってきた時、ちょうどお茶の時間だった。
「あら、来てくれたのね」
 ホットベリータルトの入ったバスケットを片手に、ホップの母親が作業場へ行こうとするところに出くわした二人は、手分けして荷物を請け負った。裏の丘からはぐめめぐめめとウールーの鳴き声が聞こえてくる。
「あと半分くらいで終わりなのよ。今日は天気もいいし、外で食べようと思ったんだけど、寒いかしらねえ」
「だいじょうぶだぞ。風はちょっと冷たいけど、ウールーに囲まれてたら暖かいから」
 母親に答えるホップの傍らで、ユウリがきょろきょろとあたりを見回した。
「あのう、ソニアさんは?」
「ああ、ソニアちゃんなら、小屋の方に行ってもらってるの。あ、そうだ、ふたりを呼んできてくれる? どうせなら、こっちでみんなで食べた方がいいわ。スコーンもあるし」
「ふたり?」
 きょとんとするホップとユウリに、母親は茶目っ気たっぷりにウインクする。
 そのままたどり着いた丘の上で、作業にひと段落したホップの祖父母やユウリの母親、ご近所の顔なじみたちが賑やかにお茶の準備をするのを横目に、ホップとユウリは丘を下って小屋へと向かった。
「ソニアさんと……あともうひとりってさ」
 ユウリがぽつりと呟く。隣を歩いていたホップは、う~ん、と頭を搔いた。
「かーちゃんのあの様子だと……多分、アニキだな」
「だよね。ソニアさんのフォローしに帰ってきたのかな……」
「ああ……でも、数日前に喧嘩して、それっきりだったと思うから、再燃してないといいけど」
「え、小屋で喧嘩の続きしてるかもってこと?」
「う~ん……急ごう、ユウリ」
 急に不安に駆られたように、ホップがユウリの手を掴んで走り出した。緩やかな傾斜の先にある小屋をめがけて、ふたりは軽やかに駆けていく。
 やがてたどり着いた小屋の扉に、ホップが両手をかけた。そのままひと息にそれを開くと、中からぐめぇとウールーの声がする。
「アニキ、ソニア、いるか?」
 中に入りながら声をかけると、ウールーがひしめく小屋の中央で、なにやら慌てたような気配が伝わる。日頃世話をしてくれるホップの登場に、ウールーたちはソニアの時よりも従順に、素早く道を開けてくれた。
「ほ、ホップ?」
 ウールーたちに囲まれる中、ダンデが急いで身を起こした。その傍らで、ソニアもなんだか落ち着かなそうにしている。
 ふたりに近づいたホップとユウリは、ちょっと驚いたように目を丸くした。
「どうしたんだ、ふたりとも」
 こころなしかソニアを庇うように立ち上がったダンデが、にっこりと満面の笑みを浮かべる。そんな兄を見上げて、ホップは軽く眉を上げて言った。
「……かーちゃんが、アニキたちも丘でお茶しないかって。呼んでこいって言われたんだぞ」
「ああ、そうか。わかった、すぐに行くぜ。な、ソニア」
「う、うん、いこいこ」
 不自然に笑いながら立ち上がるソニアに手を貸すダンデ。ホップとユウリは黙って顔を見合わせると、代表してホップが言った。
「……あのさ、すぐには行かない方がいいんだぞ」
「え?」
「ふたりとも、ウールーの毛と寝藁だらけだ」
 はっとしてダンデとソニアが自分たちの身体を検める。髪や服についた量は、ちょっと休憩していましたというには大分苦しい。顔を赤くしながらも、ソニアは明るい笑い声をあげた。
「あ、あははっ、ちょ~っと童心に返りすぎたね、ダンデくんっ!」
「そうだな、はしゃぎすぎたぜ!」
「子供の頃、ウールーの手入れの時はこうやって、もこもこにダイブして遊んだんだよねっ」
「懐かしいな、いや、いまでもいい肌触りだ!」
 そうやってあからさまに笑う大人ふたりに、ホップはため息をつき、ユウリは桃色の頬をてかてかと輝かせて笑った。
「あのぅ、おふたりとも、童心に返ったにしては無理がありますよぉ」
「えっ?」
 ユウリの言葉に、ダンデとソニアが目をまるくする。ユウリは過去最高にいい笑顔で爆弾を投下した。
「ダンデさん、ソニアさんの口紅が全部移っちゃって大変なことになってるし、ソニアさんも、真っ赤になった顔がとろんとしてて色っぽすぎるし……」
「っ!?」
「それなんとかしていかないと、ママたちにめっちゃネホリハホリされちゃいますよぉ」
 くすくすっと嬉しそうに笑うユウリの背中をグイと引き寄せて、ホップはさっさと踵を返す。
「適当に言っておくから、早めに来てくれよな、ふたりとも!」
「お、おう、頼むぜホップ!」
 珍しく気恥ずかしそうな兄の声と、ソニアの「ぬわ~っ」という雄たけびを背に、ホップとユウリは小屋を後にした。ホップはわずかにげんなりと、ユウリははしゃぐように歩く。
「どしたの、ホップ? なんかやなの?」
「いやっていうか……身内のああいうの、見たくなかったぞ!」
「しょうがないよぉ、あのふたりだもん。くっついちゃったら、あんなの日常茶飯事だと思うよ?」
「あぁ~……」
 がっくりと項垂れる傍らで、ユウリは少女めいた笑みを浮かべた。
「それにしても、ウールー小屋でいちゃいちゃするなんて、いかにもハロンタウンのカップルって感じだねえ」
「……ハロンのティーンエージャーの通過儀礼だぞ」
「え、そなの? じゃあ、わたしたちもチャレンジしなきゃだねっ」
「!?」
 あっけらかんとしたユウリの言葉に、ホップは出す足を間違えて盛大につんのめった。



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